「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。
一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は、埼玉県久喜市で事業を展開されているフジタ財託グループの藤田田氏に「まちづくりと資産づくり」をテーマにお話を伺いました。

○■小規模不動産クラファンとは? 投資家が安心できる投資環境

――久喜に密着し、不動産事業を中心に教育事業、ウェルネス事業、介護事業など幅広く事業を展開されていますが、不動産クラウドファンディング「彩」も新事業として取り組まれていますよね。まずは、不動産クラウドファンディングについて、改めて教えてください。

藤田田氏(以下、藤田氏):一口に不動産クラウドファンディングといっても、「投資型(貸付、エクイティ、株式型)」と「不特法型」があります。当社が取り扱っているのは、「小規模不特法クラウドファンディング」ですので不特法型です。法律上は、「小規模不動産特定共同事業」と呼ばれ、国土交通省の許認可が必要なスキームです。匿名組合という形で、複数の投資家の方々が一つの物件に出資し、その収益を分配する仕組みになっています。法律上の建付けは国土交通省の許認可なのですが、金融庁のレビューも必要でした。当社では2023年に許認可を得て開始しています。

特徴は、「優先劣後構造」です。
投資家の皆様は「優先出資者」として先に収益を受け取り、損失が出た場合には「劣後出資者」である不動産会社側がリスクを負担します。これは、他の投資商品にはあまりない安心感だと思います。

不動産クラウドファンディングというと、多くの案件は半年や1年以内などの短期運用です。当社の不動産クラウドファンディングは1年毎に解約もできるのですが、当社で長く保有している物件を不動産クラウドファンディング化していますので、1年~5年の長期運用を前提としています。

――長期運用が前提でしたら、投資家としても安心感がありますね。

藤田氏:そういったお声もいただけています。他の投資商品と違い、日々の値動きがないことも安心感につながっていると思います。定期預金よりも利回りが良く、株式投資などよりもリスクが小さい投資方法です。

また、物件の修繕や入居者管理のような管理業務はすべて事業者が行いますので、投資家の皆様は分配金を待つだけで手間はかかりません。他にも、現物の不動産投資では最低でも数百万円以上の自己資金が必要ですが、当社の不動産クラウドファンディングでは、1口10万円で3口から投資ができます。年に一回は定期預金と同じように引き出しができますので、投資のハードルが低いのではないでしょうか。
○■不動産クラファンをきっかけにステップアップ

――これから不動産などの投資を検討する方には、入り口として不動産クラウドファンディングは良いかもしれませんね。
最初から数百万・数千万円の借入をするのは、心理的にもハードルが高いでしょうから。実際に、不動産クラウドファンディングから始めて投資をステップアップさせた投資家さんもいらっしゃるのでしょうか?

藤田氏:多くいらっしゃいます。中には、士業の先生もいらっしゃいますよ。まずは少額で不動産に関わってみて、仕組みやリスク感覚、リターン感覚を理解した上で、「クラファンではなく、自分でも物件を持ってみたい」と思われる方がいらっしゃいます。たとえば、不動産クラファンをきっかけに、ワンルームマンションや小型の戸建てを購入される方もいらっしゃいますし、不動産クラファンで当社を知り、ご自宅のリフォームを依頼されたケースもありました。
○■不動産をただの住まいではなく「資産」として捉える

――不動産は空き家問題や相続と切っても切れない関係にありますが、地域に密着した不動産企業としてどのようにお考えですか?

藤田氏:一般的には、「不動産=住むところ」という認識だと思います。もっと「資産性」や「資産運用」として不動産を捉える方が増えると良いなと思います。不動産を住んで消耗して終わりにしない、という意識が必要かもしれませんね。相続対策としても、現金で残しておくよりも事前にリフォームしておくことで、物件の資産価値を維持しながら相続税の節税にもつながります。

たとえば1000万円の現金を相続する場合と、同額をリフォームに使って不動産価値に転換する場合とでは、相続税額は変わってきます。リフォーム済みの物件は、売却するにしても賃貸で活用するにしてもスムーズに進む可能性が高いです。資産として不動産をどう守るか、どう活かすか。
ここをしっかりと考えておくことが、相続でもとても大切だと思います。単に節税対策というだけでなく、リフォームすることで老後のQOLを上げることにもつながります。

――相続する側としても、ボロボロの家を引き継いでも困ってしまったり、相続時に思い入れのある家の価値がないというのは寂しいことですもんね。
○■長期的な視点が資産を守ることに

――たくさんの大家さんと接点がおありだと思いますが、人口減少社会を前提としたとき、これからの不動産投資・賃貸経営には、どのような視点が必要だと感じますか?

藤田氏:不動産オーナーの方々は、投資・資産運用の前線にいる方々です。今後、少子高齢化で物件価値が毀損する可能性があり、家賃を下げる必要性が生じたり、地価が下がったりという可能性もあります。そのため、リスクヘッジとして海外、特にアメリカなどの人口が増えている国や地域に投資するということも必要ではないでしょうか。

物件の目利きという意味では、単純に利回りや価格だけで判断するのではなく、「将来にわたって借り手がつくか」を見極めることが重要です。人口減でも世帯数が増えているエリアはありますし、都内でも単身者向け物件が飽和してきています。

また、「自分が住みたい」と思える物件かどうかという視点も大切です。数字だけ見て安易にワンルームを買うよりも、1LDKなど快適性の高い部屋の方が長期的に空室リスクを減らせる場合があります。仮に“利回り20%”であっても、10年空室ならただの架空の利回りにすぎず意味がありません。住宅設備は再投資できますが、間取りや部屋の広さを変えるにはリノベーションの大きな費用がかかります。
だからこそ、「10年後も問題なく満室か?」という視点で考えてほしいですね。
○■不動産業界では“プロ意識”が重要

――若い世代で不動産投資をする人も増えていますし、就職や起業でも不動産業界に興味がある人も多いと思います。どんな人材が不動産業界は向いているのでしょうか?

藤田氏:やはり「プロになりたい」という覚悟を持った人ですね。業界全体が法改正や情報化で、より高い専門性を求められるようになっています。初歩的ですが、宅建資格はその第一歩。実際、宅建を取らなかった人ほど業界を去っていく傾向があります。資格を持っていると、生涯の仕事にしている人も多いです。資格がある人であれば、実務未経験でも会社としてはしっかり育てていきたいですね。

不動産業界はダイナミックで、やりがいも収入も大きい。一方で「投資会社=押し売り」という悪いイメージを持たれがちですが、販売や仲介だけでなく賃貸管理まで行う総合的な不動産会社も増えています。“不動産を通じて社会に価値を生み出す”という視点を持てる人には、ぜひ飛び込んでほしいですね。
○■資産づくりがまちづくりにつながる

――プロフェッショナルの認識と志のある人が業界に増えれば、不動産業界はもっと良くなり、資産価値も高まりますね。
開発や販売だけでなく賃貸管理まで一気通貫でやるということは、「販売だけ」のような単一の事業とは責任が全く違うと思います。藤田さんは、店舗誘致や工場誘致にも力を入れていらっしゃいますが、どのような意図があるのでしょうか?

藤田氏:地域を活性化するためには、「職場をつくること」がとても重要であると考えているからです。仕事があれば、その周辺の住居の需要も高まります。住まいの需要が高まるということは、不動産の価値も高まるということです。それが、地域の活性化や未来への投資になると考えています。

過去には、久喜市への寄付も行なったのですが、一事業者にはできないことがたくさんあります。まちづくりには、やはり人口を増やすことが重要になってきます。店舗誘致や工場誘致をすることで地域に職が増え、住まいが増え、人口が増え、まちが元気になる。そんな好循環ができれば、不動産屋としては次世代にも誇れるプロフェッショナルな仕事と言えますし、世代を超えた資産承継ができると思います。

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中島宏明 なかじまひろあき 1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。監修を担当した書籍『THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える』が発売中。 この著者の記事一覧はこちら
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