夏休みの自由研究や探求学習の一環で、企業に「取材」を申し込む中高生が増えている。社会の仕組みに触れるこの体験は、生徒にとっても企業にとっても“気づき”の多い時間になることがある。
今回、神奈川県の高校に通う相澤銀仁くんが、資産運用や投資について関心を持ち、SBI証券を訪問。その取材現場に筆者も同席した。
同社は以前のインタビューで「金融教育がまだまだ足りていない」「世の中にうまい話はない」と語っていたが、実際に今の高校生たちは、どんな視点で金融を見ているのか。そして、教育現場でどんなことが教えられているのか――。
高校一年生から、こつこつとお小遣いで投資をはじめたという相澤くんと、同社のカスタマーサービス企画部金融教育推進室の谷さん、田嶋さん、デジタル営業部の高橋さんに話を聞いた。
○金融教育の授業はあるけれど……
ーーまずは、相澤くんに伺います。なぜ今回、SBI証券に取材してみたいと思ったのかを教えてください。
相澤くん「今回、SBI証券に取材をしたのは、同級生も含めて、自分たちがお金について知らないんじゃないか、と思ったところから始まっています。学校では金融についての授業もあったのですが、家庭科の授業の中で少し触れられるくらいなんです。もちろん学校の先生も、専門家というわけではありませんし、一般的な内容に終始する感じです。
結局、そんな状態で”投資”と言われてもよく分からなくて……。でも僕たち若い世代は、今後、経済的に恵まれた状況にあるとはいえないと思いますので、投資についてはちゃんと知っておかないといけないと思っていました。
ーー貴社としては、なぜ、今回高校生の取材を受けようと思ったのでしょうか?
谷さん(金融教育推進室)「正直、最初に話を聞いたときは『高校生からの取材!?』とちょっと驚きました。でも、相澤さんが授業ではなく、自分の意思で投資やお金のことを勉強してきたと知って、“これは会ってみたいな”と思ったんです。
私たち自身、“ネット証券って、こういうのには答えてくれなそう”って思われているんじゃ……と勝手に身構えていましたが、そんな固定観念があるのはむしろ大人のほうかもしれませんね。
高校生が一人で企業を取材するなんて、なかなか勇気がいることだと思いますが、弊社もチャレンジが好きな社風ですから、社内でも“ぜひ受けてみよう”とすぐに話がまとまりました」
証券会社と高校生。普段はなかなか交わらないように見える組み合わせだけど、こうした出会いが、新しい視点や価値観をもたらしてくれるのかもしれません。
○高校生と投資のリアル
ーー相澤くんの周囲に投資をされている方はいますか?
相澤くん「実は父や母はまったくしていないんです。ただ私自身が、高校1年くらいからアルバイトのお給料やお小遣いで、できる範囲から始めました。それでお金が増えたりするんだなっていうのが体感としてあって、面白いなって。
あとは友人に投資をしている子が数人います。そのうちひとりは自分が投資をしているのを見て、去年あたりに口座を開いてやり始めたんですよ。でも、基本的に同世代の人たちは、投資について興味を持っている人は、あまりいないように思います。金融教育の授業もみんな熱心には聞いていないと思うし」
ーー貴社から見て、現在の若い方々の投資への向き合い方についてどんな印象がありますか?
田嶋さん(金融教育推進室)「相澤さんが言うように、まだまだ、若い世代の方は投資に興味をもつ人が少なく、海外に比べたら少し寂しい状況ではあると思います。
その活動の一環が、我々がこれまでに企業や自治体、学校をまわって、“金融の土台”を伝えるセミナーを1,200回以上開催してきた理由でもあります。
そんな中で、少しずつでも相澤さんやそのお友だちの皆さんのように学生の間に投資に触れる方が増えるのは非常に良いことだし、我々も嬉しく感じます。
若いうちから投資に触れると、世の中のあらゆることが全てお金に紐付いていることが分かります。そこから世界のニュースなども、これまでとはまったく違った視点で見られるようにもなりますし」
高橋さん(デジタル営業部)「私自身、現在新卒3年目なんですが、学生の時に投資をしていたら、どこに就職しようかなって考えたときに出てくる会社って全然違ったのかな、と思います。あ、もちろん、この会社に入ったことに関してはすごく満足はしていますけれども(笑)。
でも、若いうちから投資に触れるということは、自分の知識や視点を広げるうえでも貴重な経験になりますし、社会に出てからも本当に役に立つのかなとは思います」
○お金の知識は“生きる力”になる――高校生が学んだこと、感じたこと
ーー相澤くんに伺います。今回の取材で、SBI証券の方々にお話を伺って感じたことを教えてください。
相澤くん「投資ということが、目先のお金のことだけではなく、長期的な視点で考えなければならないんだな、ということが分かりました。そして、自分たちの世代はもっとお金のことを知らなければならないな、という気持ちが強くなりました。学校のちょっとした授業だけでなく、こうしてプロの方とフラットに投資について伺ったり、話し合える場があると嬉しいですね。
あとNISAを通じて口座数を大きく伸ばしているにもかかわらず、手数料での収益をなくしてでも貢献しようとしている姿勢に驚きました(※)それでも、投資を通じて社会に貢献したいという企業の姿勢があり、長期的な視点で顧客を支援しながら、世の中を良くしていこうとする企業っていいなと思います」
※SBI証券は「ゼロ革命」という、各種手数料を無料化する取り組みを行っている
ーー相澤さんは今日の取材を踏まえ、将来にどう活かしたいと考えていますか。
相澤「お金が例えば入ってきたら、私たちはまず銀行に預金しようと思ってしまうんですよね。でも、正しい知識として投資を知ったうえで、預金以外にも選択肢を持っていることが大切なんじゃないかと感じました」
ーーでは、最後に貴社として、今後、高校生や若者世代に向けて、どんな取り組みをしていきたいと考えていますか?
谷さん(金融教育推進室)「投資は、資産を増やすという部分もあるのですが、現金でお金を持っているとインフレに負けて価値が減ってしまう場合もあります。まずは、投資を行うことによって、インフレに負けないようにできる、お金の価値をそのまま維持し続ける手段のひとつではある、というようなお金についての知識について、セミナーなどを通じて知ってもらうことは、やっぱり社会的な意義はあると思いますので、今後も積極的に取り組んでいきたいですね。
そして、暮らしている中でお金に困ってやりたいことができないときに、その課題を解決するひとつの手段としての、投資があること、そして世の中の方々がより良い人生を送れるようお手伝いをできれば、証券会社の一社員としてそれ以上の喜びはないですね」