9月5日にドイツのベルリンで開幕するエレクトロニクスショー「IFA 2025」に出展するLGエレクトロニクスが、一般公開の前日にあたる9月4日にブースをメディア公開しました。ここ数年の流れを汲み、今年も大きなテーマは「スマートホームとAI」でした。


各戸に「LGのAIエージェント」がいるマンションが好調

LGエレクトロニクスはスマートホームの普及に対してとても積極的なメーカーのひとつです。

独自に「ThinQ(シンキュー)」というエコシステムをつくり、近年ではThinQのプラットフォームをオープン化して、LGのスマート家電に他社の製品やサービスをつなげるようになりました。LGのスマートプラグやスマートセンサーなど小型のIoT家電は、米Connectivity Standards Alliance(CSA)が旗を振るスマートホームの新しい統一規格「Matter(マター)」にも対応しています。

そのLGが、2024年には生成AIモデルをベースにした独自のAIエージェント「FURON(フューロン)」を発表しました。LGが買収したオランダのスマートホームデバイスのメーカー、AthomのHomey(ホーミー)というスマートハブをベースにした「ThinQ ON」という据え置き型のデバイスにFURONを載せて商品化しました。

このThinQ ONは、昨年には韓国でコンシューマ向けの商品として販売を開始しましたが、今年から提供形態を少し変えたそうです。LGの担当者によると「国内のマンションデベロッパとのBtoBビジネスが軌道に乗ったことから、ThinQ ONと必要なAIサービス、LGのスマート家電をパッケージにして、新築の集合住宅に一斉導入を始めています。スマートホームがプリインストールされている物件として、とても好評」なのだといいます。

ThinQ ONを導入した家屋の規模、使用する家庭の数などのデータは公表されていませんが、マンションデベロッパとともに「便利なAIの活用術」を入居時にわかりやすく提供することで、スマート家電の「スマート機能」の使用を促す効果も現れているようです。

LGのAI、IFAの出展から現在地と未来が見えた

なおThinQ ONには、接続されているLGのスマート家電の使い勝手を圧倒的に高める2つの便利なAI機能があります。

ひとつが「ThinQ Up」という、ThinQ ONに接続したスマート家電のファームウェアを、自動的に最新の状態に保ってくれるOTAアップデートの機能です。

そしてもうひとつが「ThinQ Care」という機能。
ThinQ ONにつながるスマート家電に不具合や予期せぬ故障が発生しないよう、常時コンディションを見守る自動診断機能です。それぞれ地味に感じられる機能ですが、スマート家電に関わる様々なトラブルをAIによって解消して、ユーザーに長く心地よさを実感してもらうことを目指しているところに好感が持てます。

IFA 2025のブースでは、FURONと自然に会話を交わしながらテレビなどのスマート家電を操作したり、車庫に泊めた自動車のAI機能を自宅の室内から操作する「未来のAIホーム」を見せるステージもありました。様々なスマートIoTデバースを乗せたキャンピングカーが、AIエージェントのThinQ ONと連動するようなイメージも描いているようです。

LGは近年、韓国の自動車メーカーである現代(ヒョンデ)と組んで、自動運転機能を備えるスマートビークルの開発にも力を注いでいます。LGのスマートホームと家族の自動車がAIエージェントを媒介としながら、ユーザーに快適さを実感させる使い方が色々と開拓されることを期待したいと思います。

著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら
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