広瀬すず主演の映画『遠い山なみの光』(公開中)が第69回ロンドン映画祭Strands部門へ出品されることが明らかになった。

『遠い山なみの光』は、ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロ氏の長編デビュー作を、石川慶監督が映画化。
主演は広瀬すず、共演は二階堂ふみ、吉田羊、カミラ・アイコ、松下洸平、三浦友和ら。舞台は、戦後間もない1950年代の長崎と、1980年代のイギリスで、時代と場所を超えて交錯する「記憶」を巡る秘密を紐解いていくヒューマンミステリーに仕上がっている。

この度、本作が10月8日から19日までロンドンおよび英国各地で開催される第69回ロンドン映画祭のStrands部門に出品されることが明らかになった。ロンドン映画祭は、英国映画協会(BFI)が主催するイギリス最大級の映画祭で、1957年に創設。毎年秋にロンドン各地で開催され、世界各国から選ばれた最新の話題作や独立系作品、ドキュメンタリーなど幅広いジャンルを上映し、新進気鋭の才能から巨匠まで多彩な作品が集まり、観客・批評家・業界関係者が一堂に会する国際的な映画イベントとなっている。

今回選出されたStrands部門は、テーマごとに編成されており、新たな発見を促すとともに、これまでにない観客層にも映画祭を開かれたものとすることを目指している。Journeyカテゴリーは、観客を非日常へと連れ出し、物の見方を変えるような旅や目的地に焦点を当てた作品群が選出され、過去には、三宅唱監督の『ケイコ 目を澄ませて』なども上映されている。

ロンドン映画祭ディレクターのクリスティ・マセソン氏はセレクトに関し「『遠い山なみの光』は、長崎とイギリスを行き来しながら展開する叙情的なドラマで、私たちプログラマーは深く心を動かされました。本作は、トラウマ、記憶、そして欲望を繊細に描き出し、戦争や歴史の傷が形作った秘められた感情を力強く掘り起こしていきます。この秋、ロンドン映画祭で本作を観客の皆さまと共有できましたら、私たちにとってこの上ない光栄です」とコメントしている。

また、原作者のカズオ・イシグロ氏はロンドン郊外で撮影現場を訪れており、その際、「とても美しくて、イギリスに長年住んでいる、その時代の日本人女性が装飾したイギリスの家で、僕にとっては感動的でした。僕が育った家もこんな感じだったから。
僕が何者かということを、そしてこの映画を象徴するような庭園だと思います。イギリスの環境に日本のものが混ざった感じ、そんな世界で僕自身も育ってきたのです」とコメント。

石川慶監督は「日英合作のこの映画がロンドン映画祭で上映されることをとても誇りに思います。カズオ・イシグロさんをはじめ、ともに映画を作り 上げたイギリスのスタッフに再会できるのを心待ちにしています」と期待に胸を膨らませている。

(C)『遠い山なみの光』製作委員会

【編集部MEMO】
原作者、エグゼクティブ・プロデューサーのカズオ・イシグロは、本作で描かれる長崎県の出身で、幼年期に渡英したのち、1983年にイギリス国籍を取得。2017年にノーベル文学賞を受賞している。本作以外にも映画化された作品は数多く、『日の名残り』『上海の伯爵夫人』『わたしを離さないで』『生きる LIVING』は、日本でも公開されている。
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