NTT東日本、ミネルバ大学、ミネルバジャパンの3者は9月8日、次世代のグローバルリーダーの育成を目的とした新たな教育モデルを共創するため、連携協定を締結した。この協定により、3者は日本各地での実体験と生成AIなどの最先端テクノロジーを掛け合わせた実践的な教育モデルを構築し、より良い世界の未来を創るグローバルリーダーの育成を推進していく。
○今年の9月から1年間、日本で学習するプログラムがスタート
ミネルバ大学(米カリフォルニア州サンフランシスコ)の学生は、在学中の4年間で世界7カ国の主要都市を巡り、現地の企業やNPO、行政、研究機関等と協働したプロジェクト学習・インターンに携わる(ローテーションプログラム)。そして今年の9月からは、2年生のすべての学生(今年は125名)は1年間、日本の大学や地域、企業等と連携した学習プログラムを実施する取り組みをスタートする。この中では、世界が直面する少子高齢化、持続可能性などの影響を真っ先に受ける日本における新しい教育モデルの構築を図る。
なお、2学年の1年間のローテーションプログラムは、今後、10年間継続される予定で、NTT東日本がこのプログラムに協力していくというのが今回の連携協定だ。
ローテーションプログラムについてミネルバ大学 学長 マイク・マギー氏は、「教室の中のレクチャーや講義だけでなく、実際にフィールドに出て行う活動でどのような形で問題解決にあたって改革・協同ができるのかということを、将来を見ながら学習をする中で、有望なリーダーシップを育成できると考えています」と述べた。
NTT東日本は、東京都調布市にある中央研修センターでイノベーションデモ展示や地域の共創環境を提供しており、2022年10月には、ドルトン東京学園と探究的な教育機会の創出および地域の価値創造の推進を目的とした連携協定を締結している。
NTT東日本では、ミネルバ大学の日本進出を知った際、こういった経験も活かせるのではないかと考え、ミネルバ大学にプレゼンを行ったという。
「私たちは地域でいろいろな社会課題の解決を取り組んでおり、(日本での教育プログラムは)日本進出される学生のみなさんのお手伝いができるチャンスではないか考え、社員とともに昨年の11月、熱いプレゼンテーションを行いました。それが今回のきっかけになっています」(澁谷氏)
○日本で実施する教育プログラムとは
日本で実施する教育プログラムの特徴は、パートナーシップを組むことによって、実践型のコースになっている点。日本の伝統や文化、歴史について学ぶような深い体験型の学習になっており、複雑化している今日の社会的問題への解決方法に対しての学びといったものが柱になってくるという。
連携協定では、NTT東日本が持つ地域とのネットワークやテクノロジーの社会実装に関する知見と、ミネルバ大学が持つ世界最先端の教育メソッドを融合し、実践型教育モデルの実現に向けた共創を進めていく。具体的には、日本各地をフィールドとした実地学習の共同設計や、生成AIをはじめとするテクノロジーを活用した社会課題解決に資するデジタルサービスの共同開発などを実施する予定だ。
日本の社会課題に根ざした現地での体験学習プログラムの共同設計では、初回は岩手県釜石市を舞台に、防災・復興を学ぶプログラムを提供する。
「釜石市は、災害の街が今どういう状況で、どういう形で復興しているのかを学生の皆さんに見ていただき、現地で肌で感じていただきたい」(澁谷氏)
また、社会課題解決に資するデジタルサービスの共同開発では、生成AIを活用した、探究的な学びを支援する次世代教育モデルの開発・実証などを行う。
フィールド学習では、東京都調布市の地域循環型社会の実現に向けた実証フィールドである「NTT e-City Labo」や、東京都新宿区のライフパフォーマンス向上に向けた実証を行う「Wellness Lounge」などの活用も考えている。Wellness Loungeでは、真の人間の幸せがどこにあって、デジタルだけでは解決できない新しい健康のあり方や人としての幸せのあり方を一緒に作り上げていきたいという。
そのほか、佐渡で酒蔵を一緒に再興してもらうことや、農業体験として、秋田でイチゴ作りを行うことなども候補として考えている。
○共創の目的と意義
澁谷氏は、ミネルバ大学との共創の目的は3つあると語った。1つ目は、「地域循環型社会の成功モデルの創出」、2つ目が「地域循環社会を支える次世代の社会基盤の実現」、3つ目が「社会変革を起こす人材の発掘と育成」で、この中でもっとも重要なのが、人材の発掘と育成だという。
「重要なのは、未来を狙う社会のイノベーションを起こせる社会起業家人材の育成です。(今回の協定は)グローバルで変革を起こせる人材をミネルバ大学さんと一緒に育てていくことを日本でやっていただけるという、非常に意義深い協定になると考えています」(澁谷氏)
澁谷氏は、今回の協定においてNTT東日本が提供できる価値として、これまでの活動を通して培った地域とのつながりにより、さまざまなプロジェクトをミネルバ大学とつなげることができる点や最先端のITC環境を提供できる点を挙げた。
「フィールド学習では学びを少人数で行った後、AIを活用しながらプロトタイピングでモデルを作り、それを実フィールドに導入していくという3つのプロセスで取り組みますが、学びのところは大学側でやられると思いますが、IOWNの最先端の通信、ローカル5Gの環境、GPUサーバを使っていただけるような最適なAI環境を提供できるので、たモデル作りやプログラミングを徹底的にやっていただける環境も提供します」(澁谷氏)
今回の協定の意義について、マイク・マギー氏は、「われわれもNTT東日本と同じようにレジリエントな社会の構築にコミットメントしています。そういった同じ方向を向いていることが今回のパートナーシップに結びついたと考えています。われわれにとっても、NTT東日本は理想的なパートナーだと考えており、今後にこの分野で成長し、日本のみならず、国際的にも協力して進めていきたいと思っています」と述べた。
なお、今回の協定はクローズのものではなく、今後もグローバルのさまざまな企業や大学と結びつきながら、成功事例をオープンにしていくことによって、世界全体で、本当の意味でのサステナブルな社会を構築できる人材を育成していくという。