高齢化社会の今、だれもが望むのは、「100年使える脳」。開頭手術やMRIの画像診断などを含め、1万人以上の脳を診てきた“脳の名医”が、実際に診療室で患者にアドバイスし、自身も実践中である「脳のメンテナンス法」を提案する『100歳まで冴える脳習慣10』(著者:石川久/主婦と生活社)から一部を抜粋して紹介します。


今回のテーマは『「脳みそ」に痛みの神経はない 頭痛はどこが痛んでいるのか?』。
○「脳みそ」に痛みの神経はない 頭痛はどこが痛んでいるのか?

じつは、一般に「脳みそ」としてイメージされる脳の実質は、痛みを感じません。脳の実質には、全身から伝えられる痛みの信号を感じとる部位はあるのですが、脳自体が刺激されたり傷ついたりしても、痛くもかゆくもないのです。

頭部で痛みを感じる神経は、脳を覆っている硬膜やくも膜、頭蓋骨を覆う骨膜に存在するほか、側頭部から顔面にかけて通っている三叉神経や、後頭部にある大後頭神経などがあります。脳に腫瘍ができたり、脳出血を起こしたりした場合も、それによって、これらの痛みを感じる神経や部位が圧迫されたり、傷つけられたときに、初めて痛みを感じるのです。

私が行っているような頭部の手術でも、痛みを感じる神経や部位に麻酔が効いていれば、脳をどれだけさわっても患者さんにはその感覚はありません。手術中に患者さんを麻酔から覚醒させた状態で行う「覚醒下開頭術」という手術が可能であるのもそのためです。この手術では、運動野や言語野などの重要な部位に影響がないか、患者さんと会話をしながら手術を行うことにより、術後の後遺症をできる限り防ぐ目的で行われます。

頭痛対策としては、このような頭部の仕組みを知ったうえで、痛みの原因と治療法を理解しておくことが大切です。順にご説明していきましょう。
○「たかが頭痛」と放置せず受診することが頭痛対策のスタート

「頭が痛い」ときに、いったいどこが、なぜ痛んでいるのか。その症状はさまざまであり、その原因をつきとめることが、治療のスタートになります。


まず大切なのは、急を要する「危険な頭痛」を見極めることです。危険な頭痛は、急激に発症することが多く、たとえば、くも膜下出血では、よく「バットで殴られたような」と表現される激しい頭痛が起こります。そのほか、脳卒中や脳腫瘍など明らかに病変が認められる場合は「二次性頭痛」といい、早急な対応が必要になります。

一方、頭痛があっても、CTやMRI検査などで異常はみられない場合は、「一次性頭痛」に分類されます。一次性頭痛は、いわゆる「頭痛持ち」といわれるような症状であり、患者数が多いのは「筋収縮性頭痛」と「片頭痛」です。病院を受診される患者さんは、中等度から重度の頭痛が慢性化している方が多く、なかには、いったん頭痛が起こると「外出できない」「寝込んでしまう」など仕事や生活に支障が出ている方も少なくありません。

ところが実際には、自己判断で市販の頭痛薬で対処していて、「頭痛くらいで」と受診していない人も多いのが現状でしょう。ある調査では、片頭痛のある人で、医療機関を受診していない割合は、7割に達するとされています。実際に十分な知識を持たないままに、間違った薬の使い方をしたり、効かないどころか、かえって悪化させている人も多いことが問題になっているのです。

ですから、頭痛対策としては、きちんと病院で診断を受けて、その原因を見極めることが最優先。脳神経外科や脳神経内科、頭痛外来などで、しっかり検査を受け診断を仰ぐことをおすすめします。頭痛治療も進んできています。
決して「頭痛持ちだから」ですまさないでいただきたいと思います。

○『100歳まで冴える脳習慣10』(著者:石川久/主婦と生活社)

記憶力、集中力、思考力が落ちたと感じたら始めどき!もの忘れ、認知症、脳卒中、脳動脈瘤を防ぐ全身管理術。ドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」医療監修者、ベストセラー『1日1問解くだけで脳がぐんぐん冴えてくるドクターズドリル』著者が実践する、「脳に効く」生活習慣を公開。
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