従来の"紙の保険証"は、2025年12月1日をもって原則として利用できなくなる見通しです。まだマイナ保険証へ切り替えていない人に向けて、切り替えの手順や移行期間中の対応方法をわかりやすく解説します。
あわせて、マイナ保険証で受けられる便利な機能やメリットについてもお伝えします。

"紙の保険証"は12月1日で終了

従来の保険証、いわゆる"紙の保険証"は、2024年12月2日以降、新規発行が終了しており、記載されている有効期限まで使用可能となっています。有効期限の記載がない健康保険組合の保険証は、経過措置として2025年12月1日までは使用できますが、それ以降は原則使用できなくなります。

ただ、移行期の対応として、有効でない保険証を持参したとしても、保険給付を受ける資格を確認した上で適切に受診が行われるような運用をすることを厚生労働省は各自治体に通知しているので、いきなり10割負担になることはありません。

しかし、こうした暫定的な対応はいつまでも続くわけではないので、マイナ保険証または資格確認書での受診に早めに切り替えましょう。
*資格確認書での受診について

マイナンバーカードを取得していない人や、マイナンバーカードの保険証利用登録をしていない人には、従来の保険証の有効期限内に、申請不要で発行元から「資格確認書」が交付され、保険証の代わりとして利用できます。

また、暫定措置として、後期高齢者医療制度の被保険者については、2026年7月末まではマイナ保険証の有無にかかわらず、申請不要で「資格確認書」が交付されます。

さらに、高齢者や障害のある人など、マイナ保険証の利用が難しい場合も、申請により「資格確認書」の交付を受けることができます。

医療機関では、この「資格確認書」を提示すれば、これまでどおり保険診療が受けられるため、マイナ保険証がなくても慌てる必要はありません。

ただし、マイナ保険証には診療情報に基づくより適切な医療の提供など多くのメリットがあり、国もマイナ保険証の切り替えを推奨しています。特段の理由がなければ、マイナ保険証への切り替えを検討するとよいでしょう。

※資格確認書の有効期限は5年以内で保険証の発行元が設定します。

マイナ保険証への切り替え方法

●マイナンバーカードを取得していない人
→マイナンバーカードの取得方法へ

●マイナンバーカードは持っているが健康保険証利用登録をしていない人
→健康保険証利用登録の仕方へ
マイナンバーカードの取得方法

マイナンバーカードの交付申請をします。
申請の方法は3つあります。

パソコンやスマートフォンからオンラインで申請する

郵便で申請する

まちなかの証明写真機から申請する

申請してから1か月ほどで交付通知書(はがき)が自宅に届きます。必要書類をもって交付場所に行き、暗証番号を設定してマイナンバーカードを受け取ります。
健康保険証利用登録の仕方

マイナンバーカードを健康保険証として利用登録します。
登録の方法は3つあります。

医療機関・薬局の受付(カードリーダー)で行う

「マイナポータル」から行う

セブン銀行ATMから行う

「マイナポータル」アプリを利用すれば、すぐに登録できますが、スマートフォンの操作に自信がない人は、医療機関の受診時にマイナンバーカードを持っていけば、その場で利用登録ができます。

利用登録が終われば、マイナンバーカードがマイナ保険証として利用できるようになります。
マイナ保険証のメリットと便利な使い方

マイナ保険証の利用者のメリットと便利な使い方をまとめました。
1. データに基づくより良い医療が受けられる

過去に処方された薬や検診結果などを口頭で正確に伝えるのはなかなか大変です。マイナ保険証で受付し、情報提供に同意すれば、過去に処方された薬や検診結果などを医師や薬剤師にスムーズに共有できるため、その人のデータに基づいた総合的な診断や重複する投薬を避けた適切な処方を受けることができます。
2. 手続きなしで高額療養費の限度額を超える支払いが免除される

高額療養費の支給を受けるには、通常、医療機関や薬局の窓口で一旦全額を支払った後に、支給申請書を提出することで、自己負担限度額を超えた分が払い戻されます。
窓口での支払いを自己負担の上限額までにするには、事前に「限度額適用認定証」を申請する必要があります。しかし、マイナ保険証を利用すれば、「限度額適用認定証」がなくても、窓口の支払いを自己負担の上限額までとすることができます。
3. マイナポータルで確定申告時に医療費控除が簡単にできる

通常、医療費控除を受けるためには、医療費の領収書から「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告時に添付する必要があります。マイナンバーカードを健康保険証として利用登録をすると、マイナポータル(政府が運営するオンラインサービス)から保険医療を受けた記録が参照できるため、領収書を保管・提出する必要がなく、簡単に医療費控除申請の手続きができます。
スマートフォンをマイナ保険証として利用する

2025年9月19日から、機器の準備が整った医療機関・薬局で、スマートフォンのマイナ保険証としての利用が始まりました。
スマートフォンのマイナ保険証対応施設を示すステッカー

健康保険証の利用登録がされたマイナンバーカードをスマートフォンに追加することで、実物のカードがなくても、スマートフォンをかざして保険証として利用できます。また、追加した後でも実物のマイナンバーカードは引き続き保険証として利用できます。
マイナンバーカードをスマートフォンに追加する方法

<事前準備>

保険証利用登録済のマイナンバーカードを用意する
対応しているiPhone/Androidをマイナポータル公式サイトで確認する
最新のマイナポータルアプリをダウンロードまたは最新のバージョンにアップデートする
券面入力用暗証番号(数字4桁)※iPhoneのみ
署名用パスワード(英数字6~16文字)

最新のマイナポータルアプリから、画面の案内に従って、スマートフォンのマイナンバーカードの利用申請・登録を行います。

iPhoneとAndroidでは利用申請・登録の方法が異なります。詳しい手順は厚生労働省のサイトでご確認ください。
マイナ保険証で広がる利便性とスマホ活用

医療機関や薬局での受付で、マイナ保険証をカードリーダーにかざして本人認証を行うことが、手間に感じる人は少なくないと思います。しかし、慣れればスムーズに行えるので、従来の保険証のように確認する時間を取られず、受付での時間短縮につながります。


マイナ保険証を基本とする仕組みに移行すれば、医療機関の業務の効率化のみならず、正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられたり、医療関係の手続きが楽になったり、利用者のメリットも大きくなります。

今後は、スマートフォンをマイナ保険証として利用するケースも増えていくでしょう。マイナンバーカードを持ち歩く必要がなくなることで、紛失の心配が減り、スマートフォンがあれば思わぬタイミングで受診が必要になった場合でも対応できるので利便性が高まります。

スマートフォンのマイナ保険証対応医療機関・薬局は、厚生労働省のサイトで確認できます。順次更新をしているので最新情報をチェックしましょう。

石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。 この著者の記事一覧はこちら
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