ALSOK杯第75期王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は藤井聡太王将への挑戦権を争う挑戦者決定リーグが大詰め。「将棋の日」である11月17日(月)には2局が行われました。
このうち東京・将棋会館で行われた永瀬拓矢九段―菅井竜也八段の一戦は95手で永瀬九段が勝利。リーグ成績を5勝0敗とし、最終局を待たずして2年連続の挑戦を決めています。
○菅井八段の工夫

永瀬九段以外の6名はすでに2敗を喫している今期のリーグ。永瀬九段は残り2局中1局で勝利を挙げれば王将挑戦が決まります。両者の間での20度目の対決となった本局は、後手となった菅井八段が工夫を披露。飛車を振る位置を保留したまま右銀を活用したのは序盤の乱戦もいとわない指し回しで(前例1局)、盤上は力戦調の角交換振り飛車対居飛車の対抗形に落ち着きました。

菅井流の序盤術に対し慎重に時間を使っていた先手の永瀬九段ですが、敵陣にスキありと見るや大胆な打開策に打って出ます。敵陣一段目に角を打ち込んだのは相手の駒組みを真っ向から否定する強い一手。この手以降は後手に形勢の針が振れなかったことからすると、この日は妥協を許さない永瀬流の充実ぶりが結果につながった形です。

○カラい指し回しで永瀬快勝

粘り強い指し回しを身上とする菅井八段もなんとか局面の複雑化を図りますが、永瀬九段のメリハリの利いた攻防の前にはなすすべがありませんでした。手堅い底歩で敵竜の働きを止めておいてからジッと垂れ歩で反撃に出たのがカラい勝ち方で、こうなると受けに適した駒のない菅井八段は粘りようがありません。

終局時刻は18時11分、最後は自玉の寄りを認めた菅井八段が投了。
一局を振り返ると、緩急自在の指し回しで菅井流力戦策をいなした永瀬九段の快勝譜となりました。これで5勝0敗となった永瀬九段は最終局を待たずに挑戦権を獲得。局後、「スタートダッシュでつまずかないようにして拮抗した星取りにできるよう頑張りたい」と意気込みを語りました。

水留啓(将棋情報局)
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