多くの日本企業において、インサイドセールス(IS)は「テレアポ部隊」の延長として捉えられがちです。しかし、筆者が考えるIS組織は、単なるアポイント獲得係ではありません。
日本においては、コンタクト情報が流通しているわけでもなく、ソーシャルセリングが可能なLinkedInが浸透しているわけでもありません。ですから、ISのコールドコールの能力が、ABM(Account Based Marketing)の活動の結果を左右します。
この記事では、筆者がこれまでの経験から培った、IS組織を構築するための4つの柱を解説します。
なお、筆者は「インサイドセールス」という日本で普及した組織名には、とても違和感があります。セールスと言いつつ"売っていない"ことが多いからです。グローバル組織では、小口取引を担当する組織がインサイドセールスで、その一部にリードフォローしたらアウトバウンドでプロスペクティング(所謂コールドコールやコールドメール)をする役割を持っています。
また、これらの名称は、前者がSDR(Sales Development Representative)、後者がBDR(Business Development Representative)と呼んでいるわけでもありません。筆者の経験では、ひっくるめてBDRと呼ぶ場面が多かったです。ある意味、The Modelの弊害です。この記事では日本で普及した名称で説明します。
1.科学的なH / C(人員)設計と役割の専門化
ISは直感ではなく逆算で人員を配置します。
必要H / C数 =(SDRが必要な商談額 ÷ SDR個人の平均創出能力)+(BDRが必要な商談額 ÷ BDR個人の平均創出能力)
必要商談金額合計は、(収益ゴール + 来年の成長分) ÷ 勝率です。(収益ゴール + 来年の成長分)は、本来、来年度のパイプラインのギャップ分と来年度に作成すべき再来年度のパイプラインの合計ですが、ここもシンプルにしています。パイプラインは、商談をまとめたものです。
SDRとBDRでは役割の違いによって「商談1件当たりの価値」が異なるため、これらを混同してはいけません。ですから、分けて計算します。一人が両方を持つ場合、それぞれ計算してから、合算して個人の平均創出能力を算出します。
SDRはマーケティング活動で得た「インバウンドリード」をクオリファイ(見極め)する役割です。
BDRは戦略ターゲット企業に対し、自ら「アウトバウンド」で仕掛ける役割です。高いスキルが求められ、特に日本では「VITO(Very Important Top Officer)への手紙」やコールドコールの工夫が不可欠です。ABMの実行においては、コンタクト情報が豊富な大手企業はいいかもしれませんが、そうでない場合はBDRの能力がキモになります。
このように、収益ゴールからISの必要人数を計算するということは、すなわち、収益を支える重要なロールであることを意味しているわけです。
2.人材の揺籃組織としての位置付け
IS組織の真の価値は商談創出だけではありません。顧客と製品の知識が最も集積する場所として、他部門へ人材を輩出するタレントプールと定義することが重要です。人材の採用がますます困難になる今日この頃、ISは重要な役割を果たします。
若手を採用し、ISで約2年間程度、徹底的に育成。その後、フィールドセールス、カスタマーサクセス(CSM)、マーケティング、プロダクト部門へと展開する仕組みを作るのです。IS組織は常に見込み顧客に接し、最新のプロダクトの知見を持つため、いろいろな部門に展開しやすいのです。海外では、フィールドセールスへの登竜門のような位置付けになっています。そういえば、エンタープライズ向けの製品を持つ会社でも、モヒカン頭の人がいましたね。
ポイントは、優秀な人材が他部署へ異動することを前提とするため、常にバッファーを含めた継続採用を行うことを経営陣や人事と合意しておく必要があります。多少のコストは増えるかもしれませんが、収益への貢献だけでなく、採用、および、若手のキャリアサポートによって、大きな価値を得られること間違いなしです。
3.テクノロジーを駆使した「オペレーショナル・エクセレンス」
世界基準のISは、最新のSalesTech / MarTechを武器として使いこなします。
ISが関わるテクノロジーのベースの部分は、MA(Marketing Automation)のリードスコアリングだと考えます。これがないと、無駄なリード、特にマーケティングが作成したアウトバウンド系のリードは、ほとんどが商談にならないため、ここを効率化することが極めて重要です。
リードスコアリングの詳細な説明は省きますが、ロジックベースと機会学習ベースがあり、ロジックベースではHubSpotやSalesforceを使い、属性(業界・役職)と行動履歴(資料DL・Web閲覧)からスコアを算出し、ある閾値を超えたリードだけをSDRがフォローします。閾値未満のリードは、MAによるシナリオベースのナーチャリングへ回し、ISで効果的にアプローチします。
セールスエンゲージメントアプリケーションの活用も注目されているエリアです。日本では馴染みがないセールスエンゲージメントアプリケーションであるOutreachや、国内のRevComm社のMiiTelなどのツールを使い、電話・メールの活動フローを自動化・可視化します。RevCommのMiiTel、特にAIによる音声解析は、トークの質向上やVoC(顧客の声)収集にも効果的です。
4.Go-To-Market戦略に基づいた「チームセリング」
Go-To-Market(GTM)戦略を北極星として連携するモデルが効果的です。ISは孤立した部隊ではありません。セールス、マーケティングと共通の売上ゴールを持つワンチームとして動く必要があります。
GTM戦略によってどのセグメントを営業テリトリーにするかを決め、そのテリトリー内の企業へ仕組みでアプローチします。それを筆者はセグメンテーション&フラグメンテーションと呼んでいます。
セグメンテーションは、市場No.1になれる儲かるセグメントを定義します。製品戦略と密接に関わりますね。市場という大きな面を、さらに小さな面に分割するイメージです。
そして、フラグメンテーションは、面で決めたセグメントを各企業に分解して、アプローチの優先順位を決めます。例えば営業が直接狙う企業と商談が存在する企業をA(既存 / 即応)、B(BDR開拓対象)、C(マーケティング対象)に分け、BDRは特にBアカウントの開拓や失注・解約案件の掘り起こしに注力します。
Dとして、競合にべったりなどの理由で、アプローチしない企業を定義することも忘れないでください。SDRは、Cで作成されたリードをもとにフォローアップをします。フラグメンテーションによって優先企業が決まるので、ABMが実行できるのです。
IS組織が直面する課題を乗り越えるために
もし、あなたの組織で「商談の質が低い」「リードが放置されている」といった課題があるなら、それは個人の能力ではなく、プロセスの欠如かもしれません。
真の世界基準を目指すなら、単なる「数」を追う組織から、「データとテクノロジーを駆使し、次世代のリーダーを育てる戦略組織」へと脱皮する必要があります。
北川裕康 キタガワヒロヤス 現在は独立して、経営・営業&マーケティングのコンサルティングサービスを上場企業やベンチャー企業、および外資日本法人に提供している。2025年3月末までAI inside株式会社の執行役員CPO(Chief Product Officer)。38年以上にわたりB to BのITビジネスに関わり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workday、Infor、IFS などのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションなどで執行役員などを歴任。大学は計算機科学を専攻して、富士通とDECにおいてソフトウェア技術者の経験もあり、ITにも精通している。前データサイエンティスト協会理事。マーケティング、テクノロジー、ビジネス戦略、人材育成に興味をもち、学習して、仕事で実践。書くことが1つの趣味で、連載や寄稿多数あり。 この著者の記事一覧はこちら











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