シャオミは、2026年3月17日に「POCO」ブランドの新機種「POCO X8 Pro」と「POCO X8 Pro Max」の2機種を発売しました。新機種を積極投入して国内でのPOCOブランド確立を図りたいシャオミですが、POCOのターゲットとなり得るコアゲーマー層の関心が、スマートフォンから離れてしまっていることが非常に気になります。

POCOで人気の「X」シリーズを新製品で強化

2026年初からスマートフォンの新製品ラッシュが続いている中国のシャオミ。2月末にはフラッグシップモデルの「Xiaomi 17 Ultra」などを発表したばかりですが、3月17日にはオンライン専用の「POCO」ブランドの新機種「POCO X8 Pro」と「POCO X8 Pro Max」の2機種を発表しました。

POCOブランドの中で「X」が付くモデルは、最上位の「F」とエントリークラスの「M」の中間に位置するモデルで、コストパフォーマンスが高いPOCOブランドの中でも特に人気が高いシリーズとのこと。それだけに、シャオミはXシリーズの強化を図る方針で、2025年に発売された「POCO X7 Pro」の後継モデルとなるPOCO X8 Proに加え、新たに上位版のPOCO X8 Pro Maxも追加しているのです。

POCO X7 Proは高い性能と、イエローとブラックのコントラストが特徴的なデザイン、そして価格の安さが人気のポイントとなっていたことから、POCO X8シリーズ2機種ではそれらのポイントを強化。性能に関しては、POCO X8 Proが台湾メディアテックの「Dimensity 8500-Ultra」、POCO X8 Pro Maxは「Dimensity 9500s」と、いずれも高い性能を持つチップセットを搭載していますし、さらにPOCO X8 Pro Maxはバッテリーが8500mAhと、タブレット並みの容量を備えています。

デザインに関しては、両機種ともにメタル製フレームとガラス製のバックパネルを採用し、POCO X7 Proと比べるとシンプルで落ち着いたデザインとなっているのですが、背面のカメラ部分が光る「ダイナミックRGBライト」を新たに用意。ゲームプレイ中や音楽再生中にこの部分を光らせることで、ゲーミングデバイスのようなインパクトのある演出を実現しています。

値段に関しては、POCO X8 Proが59,980円からと、POCO X7 Proの発売当初の価格を維持。POCO X8 Pro Maxは、上位モデル「POCO F8 Pro」より1万円安い79,980円からと、性能を考慮すればかなり安価といえるでしょう。それだけの安さを実現しているのには、1つにカメラの性能を抑えているためで、両機種はともに5000万画素の広角カメラと800万画素の超広角カメラを搭載。POCO X8 Pro Maxの方がより高性能なイメージセンサーを搭載しているとはいえ、一般的なハイエンドモデルと比べ物足りなさがあります。


2つ目は、FeliCaなど国内向けカスタマイズをせず、他の国と同じモデルを横展開していること。そして3つ目は、販路をオンラインに絞っていることです。それゆえ、今回の新機種は幅広い人達をターゲットにした普遍的なモデルというより、ある程度ターゲットを絞ったモデルとなっていることが分かります。
ゲーミングデバイスとしての魅力を失うスマートフォン

そのターゲットとなるのは、ゲームが好きな比較的若い世代の人達です。2つの新機種はともにゲーミング需要を意識して、長時間、快適なゲームプレイを可能にするためのチップセットと冷却性能、そしてバッテリーの強化に力を入れていますが、こうした点はやはりゲームプレイに特化し高い性能を備えた、ゲーミングスマートフォンに近いものを感じさせます。

ただ、それだけに今回の新機種、さらに言えばPOCOシリーズ全体での国内販売を拡大するうえで、大きな課題があるように感じてしまいます。それは日本において、ゲーミングデバイスとしてのスマートフォンの人気が低迷していることです。

なぜなら日本では、本格的にゲームをプレイしたいコアゲーマー層が、スマートフォンからパソコンに流れてしまっているからです。理由の1つは、スマートフォンでコアゲーマー層に人気のゲームがパソコンなどにも横展開しており、プラットフォームを問わず遊べることから、快適なプレイ環境を求める人たちがパソコンに移りやすいのです。

そしてもう1つは、スマートフォンをゲーミングデバイスとして見た場合、拡張性に乏しく周辺機器も少ないなど、コアゲーマー層が求める快適なゲームプレイに適していないためです。よりよい環境でゲームをプレイしたいコアゲーマー層は、ゲーミングのプラットフォームとして拡張性や自由度が高いパソコンを選ぶ傾向が強く、「ゲームプレイを快適にするため高性能のスマートフォンを買う」という流れには至っていません。

その傾向は、ゲーミングスマートフォンの苦戦ぶりからも見て取ることができます。
過去大きな盛り上がりを見せ、参入が相次いだゲーミングスマートフォンですが、現在も継続的にデバイスを投入しているのは、「REDMAGIC」シリーズで知られる中国ZTE傘下のヌビア・テクノロジーくらいとなっています。

一方で、これまでゲーミングスマートフォン「ROG Phone」シリーズを展開してきた台湾エイスーステック・コンピューター(ASUS)は、2026年に入ってスマートフォンの新規開発を停止したとの海外報道が相次いでいる状況です。現時点でASUSからの正式な発表がされてないことから真偽は分かりかねますが、ROG Phoneシリーズをはじめとした、ここ最近同社のスマートフォン事業が非常に厳しい状況にあることは確かです。

2025年には、ソニーがフラッグシップモデルの新機種「Xperia 1 VII」で、従来力を入れてきたゲーミング関連の機能強化を見送るなど、一般的なスマートフォンでもコアゲーマー向に向けた対応が弱まりつつあります。そうした状況を見るに、日本でゲーミングを目的としてPOCOシリーズを買う人が大幅に増える可能性が高いとは言えず、顧客を増やすには別のアプローチが求められていることも確かでしょう。

そこでシャオミとしては、新たに「TikTok」や「X」などのSNSを活用したプロモーションを実施したり、店舗を拡大している「Xiaomi Store」でPOCOをアピールするイベントを実施したりするなどして、より幅広い層に製品やブランドをアピールしていく方針のようです。ただ、実際にデバイスを手にすると、やはりゲーミング要素が強いとも感じてしまうだけに、プロモーション戦略と製品とのギャップをいかに埋めていくかが、今後の大きな課題になってくるかもしれません。

佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら
編集部おすすめ