外食チェーンといえば、出店を増やし、借り入れも活用しながら規模を追っていく——そんな成長戦略を思い浮かべる人は多いだろう。だが、名古屋発祥のブロンコビリー(3091)は少し違う。


急拡大で苦しんだ過去を踏まえ、勝てる立地に絞って出店し、自己資本比率は外食業界でも異例の水準を保ってきた。

なぜこの“攻めすぎない経営”が、長い目で見て強い株価につながったのか。上場直後から同社株を保有する名古屋の長期投資家・なごちょう氏に、競合比較も交えながら、その実力を伺った。
○創業初期の失敗を活かし、堅実路線へ

外食産業では、人気メニューの開発やメディア露出が成長の起爆剤になりやすい。だが、ブロンコビリーの強さはそこだけではない。「勝てる条件がそろうまで動かない」。この外食企業らしからぬ姿勢にこそ、同社の持ち味がある。

「実は創業初期、出店を広げすぎて倒産の危機に陥った過去があるんです。その反省から、『石橋を叩いて渡る』出店方針へと転換しました。この原体験が、今の経営の土台になっています」(なごちょう氏、以下同)

その姿勢がよく表れているのが立地選びだ。都心の一等地に無理に出るのではなく、ロードサイドを中心に土地代を抑えられる場所を選ぶ。「売上を最大化する」より、「利益がきちんと残る場所に出す」発想である。


「外食はどうしても原価より販管費、とくに賃料で差がつきやすいビジネスです。ブロンコビリーはそこを徹底して見ています。だから、原材料や人件費が上がる局面でも粘り強いんです。

もちろん商品力も高く、看板メニューの『がんこハンバーグ』のコスパや、『サラダバー』の満足度はかなり高い。最近では旬の野菜をふんだんに使った季節限定サラダバーが、女性客やファミリー層のリピート率をさらに押し上げている印象がありますね」

○原材料高を跳ね返す結果に。過去最高益の更新が止まらないワケ

また、2026年1月に公表された2025年12月期の通期決算は、原材料高で利益を削られる企業が相次ぐ外食業界にあって、他社とは一線を画す内容だった。

売上高、各段階利益ともに過去最高を塗り替え、特に本業の稼ぎを示す営業利益は、前期比で2桁増を達成。インフレの逆風を完全に跳ね返した格好だ。

「2025年12月期の着地は、まさに『負けない経営』の集大成とも言える内容でした。肉の調達コストや光熱費が跳ね上がる中、値上げで凌ぐのではなく、それ以上の満足度を客席に届け切ったことが大きいです。

既存店売上高が前年比100%を超えて推移している事実は、価格が上がっても『やっぱりブロンコビリーがいい』と選ばれ続けている証拠です。コスト増を飲み込んだ上で利益を一段と伸ばす、理想的な勝ち方ですね」

この勢いは今期も続く見通しだ。
2026年12月期の通期予想についても、同社はさらなる増収増益を見込む強気のシナリオを公表している。

安定したキャッシュ創出力を背景に、1株あたりの配当も右肩上がりを維持。着実に「負けない強さ」を積み上げる姿は、長期投資家にとって大きな安心材料となっているのだ。
○外食なのに自己資本80%超…異例の堅さ

外食各社は、新規出店のために借り入れを積極的に活用する。売上のトップラインを伸ばすことが、市場での評価につながりやすいからだ。ところが、ここでもブロンコビリーは同じ土俵には乗らない。

「ブロンコビリーの自己資本比率は80%を超えています。外食業界ではかなり異質で、吉野家が約50%台、ゼンショーやすかいらーくが30%台であることを考えると、その盤石さがわかりますよね。彼らは『売上成長の速さ』よりも『潰れにくさ』を優先してきたんです」

その“守りの強さ”がはっきり表れたのが、コロナ禍だった。

「売上が急減した局面でも、まずは会社を守り切るという考えが徹底されていました。もともと無借金に近い状態だったのに、万が一、売上ゼロの状態が長引くことに備えて、念のために巨額の借り入れを行ったんです。結局、その資金は使わずに1年後に返済したのですが、このエピソードだけでも経営の考え方がよく出ています」

また、スクラップ&ビルドを繰り返す外食チェーンが多いなか、同社の閉店数はかなり少ない。
最初から損益分岐の低い場所を選び、契約や立地条件を吟味しているからだ。さらに、その強い土台は従業員への還元にも向かっている。

「創業者一族が、役員だけでなく社員やパート、アルバイトにまで、長年の感謝として自身の保有株式を贈与しているんです。上限10万株の規模で継続的に実施していて、本当に驚きました。月に1回、全店休業日を設けて研修も行っています。人が辞めにくく、接客品質がぶれにくい仕組みや企業文化まで含めて、長く強い会社だと感じます」

○ブロンコビリーの強みは、味やメニューだけではない

ハンバーグやステーキを提供するチェーン店は数多い。「レストランさわやか」や「びっくりドンキー」、「ステーキ宮」(7412)、あるいは「いきなり!ステーキ」(3053)など、価格帯や商品カテゴリーが近い競合は少なくない。

「商品競争だけなら、確かに競合は多いです。ただ、ブロンコビリーはサラダバーのクオリティや、先ほど触れたお茶碗での提供など、食事全体の満足感で差別化を図っています。実際、同業他社がブロンコビリーのサラダバーやロードサイド展開、ファミリー需要の取り込み方をベンチマークして真似している構図すらあります。つまり、競争の土俵をつくっている側なんですね」

ただ、投資家の目線で見たとき、本当の差は味やメニューそのものだけではない。

「商品力に関しては、どうしても好みの差があります。
しかし、株として見たときに決定的な差になるのは、やはり財務と出店規律です。圧倒的な自己資本比率と、撤退店舗の少なさ。ここは、他社と明確に分かれるポイント。効率よく利益を出す仕組みが完成されているからこそ、これだけ高い自己資本比率を維持できているんですよ」

競合各社が話題性や店舗網の拡大でしのぎを削るなか、ブロンコビリーの優位性は、リスクを抑えながら積み上げていく「経営の崩れにくさ」にある。
○荒れやすい外食株で、なぜ選ばれ続けるのか

成長スピードの遅さは、株式市場ではマイナスに受け取られることもある。だが、ブロンコビリーの株価は、長い目で見ると着実に水準を切り上げてきた。

「私は2007年の上場直後から保有していますが、公募価格を下回る水準で買えたこともあり、現在は分割調整後で約8倍の株価上昇になっています。派手に急騰する銘柄ではありませんが、時間をかけてしっかり積み上げてきた。長期株主が報われた銘柄のひとつだと思います」

外食株は、景気動向や原価、人件費の上昇といった外部環境の影響を受けやすい。そのなかで評価されやすいのは、やはり「安心感」だ。

「優待や知名度だけでなく、財務面の厚さや企業体質が評価されているんだと思います。急拡大しないぶん、売上の伸びは爆発的ではありません。
ただ、それが逆に大崩れしにくい経営につながっている。

だから、“高成長株”というより“堅実成長株”として見るべきです。投資家が見るべきポイントは、『何店増えたか』といった表面的な出店数ではありません。どこに出したのか、その地域で再現性があるのか、利益率が守られているのか。重要なのは『出店の質』なんです」
○“早く店舗を増やさない”のが勝ち筋

では、この会社に今後の伸びしろはあるのだろうか。結論から言えば、余地は大きい。ただし、やはり広がり方は速くないだろう。

「日本全国を見渡せば、北海道や東北、九州など、まだ出店していない未開拓エリアはたくさんあります。とはいえ、これまでの方針通り、今後も一気に店舗を増やすフェーズにはしないはずです。

首都圏を開拓する場合も、主戦場はやはり郊外やロードサイドになります。拡大余地はあっても立地の選別は厳しく、出店スピードよりも『そこに出して勝てるか』という成功確率が優先されるわけです」

一方で、新たな収益源づくりにも動き始めている。

「居酒屋『しきや』や商業施設向けの新業態に加え、食品会社を買収してドレッシングなどの食品事業にも着手しています。
本業の強みをどう横展開するかが今後の見どころですね。さらに、2027年3月の株主総会では台湾進出の発表も控えているそうなので、将来的には海外展開も視野に入りそうです」

最大のリスクを挙げるとすれば、「堅実すぎて成長が見えにくいこと」かもしれない。全国展開のペースがゆっくりなぶん、株価が一気に評価されにくい場面もある。ただ、それは裏を返せば、急拡大で崩れるリスクが小さいということでもある。

派手な成長株ではない。しかし、無理な出店で崩れるリスクが小さく、財務にも余裕がある。ブロンコビリーの魅力は、一気に跳ねることではなく、時間をかけて着実に積み上げていく強さにあるのかもしれない。

西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。公式noteはこちら この著者の記事一覧はこちら
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