先発から外れたヤクルト戦に代打で登場するも空振り三振……。佐藤の表情は曇っていた。

写真:産経新聞社

 恒例の「ゴールデンウイークこどもまつり」が催された4月28日の甲子園。大型ビジョンにひらがなで表記された阪神のスタメンに「さとう」の3文字はなかった。開幕からクリーンアップの一角を担ってきた佐藤輝明が本拠地でのヤクルト戦で先発から外されたのである。

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 佐藤の快打に期待した子どもたちのため息をよそに、指揮官の意図は明確だった。佐藤の代わりに先発に入った糸原健斗が4打数3安打、1打点と奮闘し、4-3と接戦をモノにした試合後のテレビインタビューで岡田彰布監督は「最近の内容を見ていて、いつ行こか、という感じだったんですけど、昨日の内容(3三振)を見ても、いっぺん糸原で行こうというのはあった」と明かした。

 たしかに、最近の佐藤は内容が芳しくない。

直近5試合で19打数1安打の打率.053、12三振と明らかに精彩を欠いている。

 苦境を物語るのは「本領」を発揮しきれずにいる点だ。元来、佐藤はアベレージヒッターではなく、左打者にとっての“難敵”と言える甲子園の浜風さえももろともしないパワーが自慢。しかし、今季はそれも鳴りを潜めている。

 佐藤のような打者を評価するうえで興味深い「ISO」という指標がある。これは単打でも数字が上がる長打率から打率を引き、打者の純然たるパワーを示すのに有益とされているというものだ。

 だいたい.140を平均とし、.200もいけば「優秀」となるのだが、今季の佐藤はここまで.134と平均以下。あくまで開幕約1か月段階でのサンプルに過ぎないものの、昨季は.235の高水準だっただけに、自慢のパワーが発揮できていないのは一目瞭然だ。

 当たれば、飛ぶ――。そんな魅力、あるいは浪漫が佐藤にはある。しかし、今季ここまではその姿もコンスタントに見せられていない。上位争いを続けるチームにあって先発から外れるのは必然ではあった。

 先発から外れた一戦において佐藤は8回に2死二塁の得点圏に走者をおいた局面で、代打として起用された。だが、結果は空振り三振。外角低めのボールゾーン付近にチェンジアップとスライダーを集められ、まんまと仕留められた。もちろん、丁寧に投げ切った相手左腕・長谷川宙輝の仕事ぶりも見事だったが、その“あっけない”幕切れに球場全体からため息が漏れた。

 岡田監督は、先述のインタビューで「どう這い上がってきてほしいですか?」と問われ、「這い上がるって、ゲームでも使こてますよ」と笑みを見せ、「簡単ですよ、ボールを振らないで、ストライクを打ってくれたらいいと思いますけどね」とつぶやいた。

 指揮官の言葉を聞くに、チャンスは必ず与えられる。

あとは、佐藤自身でどこまで改善できるのか、だ。

 阪神の“アレンパ”には佐藤の力がいる。それは間違いない。だからこそ、あえて厳しい言葉をかけたい。「またか」と失望はさせないでくれ、と。

[文/構成:羽澄凜太郎]