高橋は新天地で再び輝こうとしている(C)産経新聞社

 まるで別人のような働き――とは言い過ぎでしょうか。

 ソフトバンクから巨人にトレード移籍したサブマリンの高橋礼投手です。

熾烈な開幕ローテーションを巡るサバイバル戦に勝ち抜き、ローテの一角をつかむと、今季ここまで5試合に先発して、2勝0敗。防御率0.95と見事な活躍をしているのです。

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 スポーツ紙のデスクは言います。

「専大松戸高校から専修大を経て、2017年のドラフト2位でソフトバンク入りした下手投げ投手です。プロ2年目の2019年には12勝を挙げ、新人王に輝きました。この年は日本シリーズ第2戦で7回1安打無失点の快投を見せていますが、その相手こそ巨人だった。

しかし2021年からの3年間ではわずか1勝止まり。昨年11月には巨人との間で、ウォーカー外野手と泉圭輔投手を含めた1対2トレードが成立したんです」

 すると高橋礼はキャンプ、オープン戦と水を得た魚のように本領を発揮。開幕から4試合では防御率0.38。4月7日、東京ドームでのDeNA戦では6回無失点で1086日ぶりの白星となる移籍後初勝利を挙げると、21日のマツダスタジアムでの広島戦では降雨コールドによる5回ながら「プロ初完投」。28日、横浜スタジアムでのDeNA戦こそ今季最短の5回途中で降板しましたが、ここまでの活躍は称賛に値すると言えるでしょう。

 前述のデスクはこう続けます。

「改めて思うのは、パ・リーグの強豪・ソフトバンクの選手層の厚さです。高橋礼の躍動は、他球団に移籍すれば1軍でバリバリ活躍できる選手が筑後のファーム施設にはゴロゴロいることの証明でもあります」

 過去、トレードは「放出」といったニュアンスで報道されることもありました。しかし人材が流動化する現代社会同様、プロ野球の世界も移籍が活発化すれば、思わぬスターが出現する可能性は十分あるのです。

「少し前までは、他球団に移籍して活躍すると編成担当者のメンツが潰れることから、『飼い殺し』にする例もないことはなかった。しかし、ようやく『ウチではチャンスがないので、他に行って成功してくれ』といった具合にトレードがポジティブな文脈で語られるようになった。これは大きな進歩です。

基本的にドラフトにかかってプロ入りする選手は、誰もが怪物。花開くか否かは紙一重の世界です。現役ドラフトも含め、環境の変化によって復活への道筋が照らされるのは、球界にとっていいことでしょう」(前述のデスク)

 オレも環境さえ変われば、まだまだやれる――。高橋投手の活躍を見ながら、そう思う2軍選手たちが大勢いるのは間違いないでしょう。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]