世界的な声価を高めている中谷(左)。ゆえに井上(右)とのマッチアップへの機運も高まっている。
「やっぱりイノウエは特別なファイターだ」
間違いなくキャリアは“収穫期”に突入している。
2月24日、ボクシングのWBC世界バンタム級王者・中谷潤人(M.T)は、東京・有明アリーナで3度目の防衛戦に臨み、同級6位ダビド・クエジャル(メキシコ)を3回KOで撃破。絶対王者らしい貫禄を漂わせる完勝を収めた。
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会場をどよめかせる衝撃的なパフォーマンスだった。完全に主導権を握った3回、攻勢に転じた中谷は左、右、左の連続攻撃で1度目のダウンを奪取。再開後、ほぼグロッキー状態となったクエジャルにぐっと間合いを詰めて強烈な左フックを食らわせた。
力なく崩れ、キャンバスに座ったクエジャルは呆然。もはや戦意喪失し、レフェリーの10カウントにも立ち上がれず、あっけなく勝負が決まった。
試合後にリング上に上がったIBF世界同級王者の西田凌佑(六島)と顔を合わせ、「やりましょう」と声をかけた中谷。陣営の動きを見ても統一戦路線に入ったと言っていい。そうした状況下で機運が高まっているのは、現スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)との“メガマッチ”の実現だ。
すでに“モンスター”側は中谷との大一番に含みを持たせている。昨年10月には井上本人が「まぁパウンド・フォー・パウンドで1位になりたいという若者がいるんで。
無論、両雄ともに“やるべきこと”は残されている。年内でのフェザー級転向も視野に入れる井上も、WBC世界同級1位アラン・ピカソ(メキシコ)やWBA同級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との対戦が有力視されている。
対戦希望が尽きないモンスターの状況も相まって、中谷の陣営は冷静だ。
ロサンゼルスで中谷を指導する名トレーナーのルディ・エルナンデス氏は、米誌『The RING』の取材に対して「イノウエはすでにスーパーバンタム級で、我々はその階級へ上げている立場だ。敬意を表しても彼(井上)が優勢だと考えている」と指摘。さらに中谷が目標とするパウンド・フォー・パウンドの1位を争う傑物の凄みを語った。
「やっぱりイノウエは特別なファイターだ。私は初めて彼を見たときからそう思っていたし、今もそう思っている。相手を2秒でノックアウトできるなら、彼はそうする。
名伯楽が語った井上との「差」
当然ながら意欲がないわけではない。中谷をティーンエージャーの頃から叩き上げてきた名伯楽は、「イノウエはジュントよりも2歩先にいる」と差を明確にしつつ、「我々は彼と同じレベルを目指している。我々の仕事は、準備を整えて勝つ方法を見つけること。その日のためにやるべきことは山ほどある」と冷静に語った。
「私たちはそれぞれ自分たちの道というものを歩んでいる。そして、イノウエにはやりたいことをする権利がある。彼はその資格を得たんだ。もしも、いつか我々の道が交わることになったら全力で対処する。ただ、すでに素晴らしい戦いは始まっている。二人の行く末、そして戦いは日本人だけじゃなく、世界の他の地域の人々も話題にしているんだ」
ダウン未経験だったクエジャルを圧倒した防衛戦後には「今、バンタム級の統一を望んでいるナカタニに勝てる者はいるだろうか? おそらくいない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]