打撃フォームの修正がここまで功を奏している前川。(C)産経新聞社

 レギュラーシーズンの開幕が迫る中、プロ野球12球団の調整もいよいよ本格化。

オープン戦でのチーム内競争も激しさを見せ始めている。

 その中で今春に異彩を放つのが、藤川球児新監督による新体制を発足させた阪神の若きロマン砲、前川右京だ。

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 今春、高卒4年目となる若武者は、すこぶる調子が良い。依然として新外国人のラモン・ヘルナンデス、井坪陽生、野口恭佑、島田海吏、井上広大らと定位置奪取を目指し、しのぎを削る立場だが、現時点で一歩抜け出ている感すらある。

 スタンスが広く、上体をかがめていた昨季から、重心を高くした新フォームに取り組んでいる今春はスイングが安定。バットの軌道がスムーズになり、確実性がアップした影響は数字にも表れている。ここまで4試合に出場しているオープン戦では、打率.500、3本塁打、長打率1.188、OPS1.688と驚異的なハイアベレージを記録。スモールサンプルに過ぎないが、開幕スタメンに向けた打撃でのアピールに成功していると言えよう。

 もっとも、ポテンシャルは以前から球界内でも認められていた。前川が1軍で台頭し始めた2023年には、かつて阪神の投手コーチなどを歴任した佐藤義則氏が「バットコントロールが良い。じっくりボールをみて、自分の打ちたいボールを打っている」「やっぱり打撃センスがすごいと思う」と絶賛。百戦錬磨の名コーチを唸らせていた。

「あとは継続的な結果だけ」――そんな虎党たちの声も聞こえる中で、1軍レベルの投手たちを相手に本領を発揮し始めている前川。6番に入る想定もされている21歳が打線の中で機能すれば、おのずと佐藤輝明、森下翔太、大山悠輔のクリーンナップも活性化。昨季にチーム打率.242(セ・リーグ5位)と精彩を欠いた猛攻打線が怖さを持ち始める。

 繰り返しなるが、まだレギュラーシーズン開幕前のオープン戦の4試合に過ぎない。だが、それでも「俺がスタメンになる」と言わんばかりにバットで魅せる若虎に“ロマン”を抱かずにはいられない。

 前川の奮闘でチーム内競争もし烈を極めるのは想像に難くない。それは就任会見で「現状維持でいるように周りから見えるような選手は危機感を持って臨んでもらいたい」と明言した藤川監督にとっても嬉しい悲鳴となるはずだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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