川口春奈×目黒蓮で送る、この冬一番泣けるラブストーリー『silent』(フジテレビ系/毎週木曜22時)。12月22日(木)に放送された最終回は、スピッツの「魔法のコトバ」の歌詞に導かれるような美しいラストとなった。

(文=菜本かな) ※本記事はネタバレを含みます。ご注意ください

■紬&想の結末は“二人だけにはわかる”ものに

 『silent』は、最後まで“深い”物語だった。ラブストーリーであるにもかかわらず、キスやハグを安易に使わない。さらに、“当て馬”と呼ばれるキャラクターを、優しいだけのかわいそうな人にもしない。それでも、青羽紬(川口)と佐倉想(目黒)が積み上げてきた“愛”や、戸川湊斗(鈴鹿央士)と桃野奈々(夏帆)の温かさは、しっかりと私たちの心に届いているのだから、すごい。

 筆者を含めた多くの人が、想が紬の名前を呼びかけるラストを予想していたはずだ。しかし、きれいなイルミネーションの下で、想が紬に“何か”をささやいたけれど、その内容は“二人だけにはわかる”もので、私たち視聴者には伝わらない。でも、それぞれの表情を見ていると、二人を笑顔にする“魔法のコトバ”だったということは分かる。まさに、劇中で度々登場したスピッツの「魔法のコトバ」どおりの展開となった。

 肩をすくめて、くしゃっと照れ笑いをする想。そんな彼を包み込むように、華やかな笑みを浮かべる紬。これまで、たくさんの壁があったけれど、最後に幸せそうな二人を見ることができて本当によかった。
SNS上でも、「ハッピーエンドで本当に嬉しかった」「最後、幸せそうな想と紬を見ることができて本当によかった」と紬&想を祝福する声が多く上がっている。

■紬&想以外もそれぞれの幸せへ

 二人を支えてきた登場人物たちも、それぞれの幸せへと歩き始めた。

 まず、本作の鍵を握っていた湊斗。紬の元恋人で、想の親友というかなり微妙なポジションながら、最後まで“主成分優しさ”であり続けてくれた。中盤でちょっぴり人間臭い部分も見えたけれど、彼はやっぱり優しい。ただ、その優しさが、時々、周囲に消費されているように見えて、“かわいそう”と思ってしまう瞬間も、正直あった。

 でも、友人に「湊斗くん、絶対幸せになってね」と茶化された時、「今が幸せじゃないって決めつけんな!」と返した彼を見て、ちょっぴり安心した。きっと湊斗は、ただ優しさを消費されているだけではない。そのなかで、自分の幸せを探して、見つけていける強さがある人なんだと。

 そして、本作の裏ヒロインと言っても過言ではないのが、奈々。「奈々だけに伝わればいいから」と手話を覚えてくれた想が、ほかの女の子と手話で会話をしていると知った時、とても苦しかったと思う。「プレゼント、使いまわされた気持ち」と思ってしまうのも、仕方がない。


 けれど、奈々はちょっとのことでは折れない強い女の子だった。想に思いが届かなくても、しっかり前を向いて歩き続ける。その先で、かつて恋仲のような関係だった春尾正輝(風間俊介)と再会することができた。二人の関係がどうなったのかは具体的には描かれなかったけれど、きっとどこかで笑い合っていることだろう。無邪気にわがままを言う奈々を、春尾が楽しそうにたしなめながら。

 「すべてが最高のドラマだった」「自分の中で大切なドラマになった」と最後まで多くの支持を集めた『silent』。SNS上では、「ロスになりそう」と早速“ロス”を恐れる声も上がっている。しかし、毎週木曜日の夜、『silent』に恋焦がれた日々は、私たちの心のなかに永遠に残り続けるはずだ。最終回まで、温かな気持ちにさせてくれた『silent』に、感謝の思いを込めて。

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