広瀬すず×永瀬廉で送る青春ラブストーリー『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系/毎週火曜22時)。1月17日(火)に放送された第1話は、主人公・浅葱空豆(広瀬)と、音楽家を目指す青年・海野音(永瀬)の運命的で衝撃的な出会いが描かれた。

(文=菜本かな) ※本記事はネタバレを含みます。ご注意ください

■夕暮れのような時間に出会った空豆と音

 青春を思う時、なぜ人は切なくなるのだろう――――――。

 第1話のサブタイトルが、胸を打つ。“23歳”って、複雑な年齢だ。あの頃の自分を振り返ると、まだまだ子どもだったなぁと思う。一応、大人だと定義されるようにはなったけれど、心はまだまだ幼くて。青春の終わりかけの、まさに夕暮れのような時間を過ごしていた。ずっとそこにはいられないことが分かっている曖昧でかけがえのない時間。そんな“23歳”の冬に、空豆と音は出会う。

 九州の片田舎で育った空豆は、男勝りな性格と行動力で周囲を惹(ひ)きつけていく野生児のような女の子。噴水でパシャパシャと顔を洗ったり、音が落としそうになったスマホを守るために水の中に飛び込んだりと、天真らんまんだ。しかしその一方で、時折、瞳の奥に寂しさをのぞかせる瞬間も。
押しては引くオーガニック小悪魔っぷりに、今後、音も引き込まれていくのだろう。

 音と出会った時、空豆には“運命の人”がいた。幼なじみで、ずっと隣にいた矢野翔太(櫻井海音)だ。空豆と翔太は、二人でひとつだった。翔太は、どんな時でも空豆の味方でいてくれて、高校の時にはバイトで稼いだお金で婚約指輪を買ってくれたことも。しかし翔太は、空豆とは正反対な清楚系女子に恋に落ちて、婚約破棄を迫ってきた。空豆は、指輪をずっと大事にしてきたのに…。二人は、もうすぐ結婚式を迎えるはずだったのに…。

「おいたちの思い出は、誰も入れんじゃなかと? おいたちの思い出はただのゴミくずね? ただの紙くずと一緒ばい! 捨てたかと? 捨てたかとやろ」

 浮気されて、悔しくて悲しくて、どうしようもない思いをぶつける空豆が苦しい。あの頃には戻れないことは分かっている。もう、翔太の気持ちが自分にはないことも。ボロボロになりながらも最後の勇気を振り絞り、「気持ちん悪か!」と翔太をビンタしてやる空豆は、やっぱりカッコ良かった。
SNS上でも、「ちょっと痛そうだったけど空豆よくやった!」「あっぱれだったな」と称賛の声が相次いでいる。

 振られた婚約者に会いに行き、浮気相手と遭遇と、一番カッコ悪いところを、音に見せてしまった空豆。ここまで来たら、もう見せられないものはない。何度別れてもまた出会ってしまう運命に従って、結ばれる二人の姿が見たい。

 ただ、ドラマ公式サイトには、“とっくに恋に落ちているのに、なかなか恋が始まらない夢追う2人”との一文が…。たしかに、今のところはじゃれ合う兄妹のような雰囲気で、恋が始まるムードのようなものは皆無だが、どうなっていくのだろう。今後、“夕暮れに、手つなぐ”二人の姿を見ることはできるのだろうか。

■海野音に引き込まれる

 音は、“こんな永瀬廉が見たかった!”が詰め込まれた役柄だ。空豆に、「好きな人おらんと?」と聞かれて、「あんま、人を好きにならないみたい」と返した時の切ない表情。目を伏せた瞬間に見せる“闇”のような冷たさに、私たちは引き込まれてしまう。彼が抱える“闇”に、自分も触れてみたい。その奥には、温かい光が宿っている気がするから。


 『おかえりモネ』(NHK総合)の永浦未知(蒔田彩珠)が、永瀬演じた及川亮に“沼落ち”したのも、きっと彼の瞳に奥行きを感じたからだろう。永瀬の瞳の奥に宿る光は、ラブストーリーの説得力を増す役割を担っている。

 ちなみに音は、脚本家・北川悦吏子が「完全なる、あっと驚く当て書き」をしたキャラクターでもある。そのマッチ度は、ファンからも「当てがきって知らんくても当てがきした? って思うくらい永瀬廉」「7割五分永瀬廉って感じで相変わらず左利きが愛おしかった」「ほんまさすが当て書きされただけある。永瀬廉が永瀬廉してる最高」との声が上がるほど。

 憂いを帯びた瞳が印象的な音が、野生的な空豆と出会い、希望を取り戻す日が来るのだろうか。毎週火曜日が楽しみになる温かな作品が誕生した。

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