“キング・オブ・ロックンロール”と称される希代のスーパースター、エルヴィス・プレスリー。若くして謎の死を遂げた彼の波乱人生を映画化した『エルヴィス』で主演を務めた俳優のオースティン・バトラーが初来日を果たし、キャリアの全てを注いで取り組んだ本作への思いを語った。
【写真】エルヴィスのような色気漂うオースティン・バトラー 撮り下ろしフォト
■オファーを受けたとき、運命的なものを感じた
本作は、『ムーラン・ルージュ』『華麗なるギャツビー』で絢爛豪華な世界を作り上げたバズ・ラーマン監督がメガホンをとったミュージック・ドラマ。スターとして人気絶頂の中、不可解な死を遂げたエルヴィスの生きざまを、「監獄ロック」「ハウンド・ドッグ」など誰もが一度は耳にしたことのある名曲の数々に乗せて活写する。また、アカデミー賞俳優トム・ハンクスが強欲なマネージャー、トム・パーカーを熱演。エルヴィスとの知られざる関係性が解き明かされる。
オースティンにとってエルヴィスの存在は、あくまでも「おばあちゃんが大好きな歌手」。本作のオファーが来るまでは、なじみはあったけれど、特に大ファンというほど夢中だったわけではない。
何か運命的なものを感じたオースティンは、「何がなんでもこの役を掴みたい」という思いが湧き起こり、オーディションが始まる前から行動に出る。
■ムーブメント・コーチと二人三脚でエルヴィスの領域に!
『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックのムーブメント・コーチを担当し、見事ラミにオスカーをもたらしたポリー・ベネットが、幸運にもオースティンのサポートに付いた。準備期間を入れると約3年、オースティンはエルヴィスまみれになる。「もともと自分はシンガーでもダンサーでもなかったし、その上でエルヴィスを演じなければならなかったので責任重大だったね。
「つまり、綿密に計算しながら演じることと同時に、それがあたかも初めて起きているかのように振る舞わなければならないので、その両方をうまく合わせることが難しかった。全てエルヴィスの視点から表現しようと思っていたので、エルヴィス本人が体験したもの、彼が育ったビール・ストリートで見たもの、ゴスペルを歌う教会で彼が聴いたもの、感じたものを知ることに時間を割いたんだ。だから、彼を真似た振り付けは一切していない。音楽を聴いた瞬間、勝手に体が動いてしまうという状態に自分を持っていかなければならなかったので、とにかく、内側からエルヴィスを感じられるようになるまで、エルヴィスのことだけを考えて3年間を過ごしたんだ」。
■俳優として、常に自分が成長できる大きなチャレンジを探している
ロックを生んだ世界的スーパースターなだけに、その重責から相当なプレッシャーがあったというオースティン。だが一方で、そんなチャレンジングな役を探している自分もいるという。「俳優として、アーティストとして、一番充実感を得られるときは、やはり自らの意志で大きな挑戦を受けて立ったときだね。だから僕は、自分が怖く思うもの、チャレンジングだと感じられるものを常に探している。
自身のキャリアを変えてしまうくらい何かを要求される役を常に求めているというオースティン。次回作の話をするのは早計だが、将来、どんな顔をいくつ見せてくれるのか、実に楽しみな俳優だ。(取材・文:坂田正樹 写真:小川遼)
映画『エルヴィス』は公開中。