2021年1月に女優デビューした水嶋凜。これまで『直ちゃんは小学三年生』(テレビ東京系)、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』などドラマ出演が続いた彼女がこの秋、ミュージカル『シンデレラストーリー』で初舞台にして初主演という大役に挑む。
【写真】水嶋凜、お母さんに通じる透明感!
■初舞台で挑む大役は「いじめられているなんて思っていないポップなシンデレラ」
本作は、ファンタジーとしての「シンデレラ」の物語の大筋は変えることなく、魔法が解けたのにどうしてガラスの靴だけはそのままだったのか、なぜ家事ばかりしていたシンデレラが華麗なダンスを踊れたのか、などリアルに考えたら避けては通れない問題に回答していく、鴻上尚史による書き下ろしミュージカル。作中の音楽の歌詞を全曲斉藤由貴が担当したことでも話題を集めた。
17年ぶりの上演となる今回は、演出をウォーリー木下が務め、シンデレラ役をWキャストで加藤梨里香と水嶋凜が演じる。王子役に大野拓朗、魔法使いにアン ミカ、佐藤アツヒロがシンデレラの継母・ベラドンナを演じ、意地悪な義姉をおかずクラブ・ゆいP、まりゑが務めるなど、個性あふれるカラフルなキャストが顔をそろえた。
――今回、初舞台で初主演を務められますが、お話を聞かれた時の心境はいかがでしたか?
水嶋:子どものころに劇場で観ていたみたいなんですけど、小さかったので記憶になくて。でも、祖母の家にDVDがあって、よく観ていた作品だったので、うれしいのと同時にすごくビックリしました。しかも大役すぎて、芸能界に入ってまだ日の浅い私にできるのかなっていう不安も大きかったです。
――子どもの頃から慣れ親しんだお話ということですが、「シンデレラストーリー」はどんなお話という印象でしょう。
水嶋:おとぎ話の『シンデレラ』とは、お話は一緒だけど現代風というか、またちょっと違った感じがありました。でもやっぱり、舞台上でガラスの靴がキラキラ光っているのを見て憧れもありましたし、大きなドレスを着て踊ってすごいな、すてきだなっていう気持ちは小さいながらにありましたね。
――演じられるシンデレラはどんな女性ですか? 水嶋さんとの共通点はありますか?
水嶋:本作のシンデレラは、原作のいじめられてかわいそうなシンデレラというより、自分ではいじめられているなんて思ってもいなくて、“ちょっとお姉様たちにいじられているけど、いつものこと”って思っているような、楽しくポップな女の子なんです。
――舞台のお稽古も初体験かと思いますがいかがでしょう?
水嶋:大人数で一つのものを作った経験がないので、たくさんの人が動いて一個の作品を作り上げていくんだっていうことを日々実感して、毎日が発見の連続です。
作品も、芯の部分は台本通りではあるんですけど、役者さんがこれをやりたいって言ったらこうなるし、演出家さんがもっとこうしたほうが…ってなったら、どんどん変わっていく。舞台というものは日々いろいろと更新されていくものなんだっていうことが一番の大きな発見でしたね。私も最初ははっきり言えなかったですけど、最近は“シンデレラはたぶんこういう心情だから、こういうときこういう言葉が出るんじゃないか”とか、演出家のウォーリーさんに聞いてみたりできるようになりました。
――Wキャストを務める加藤さんとはどんなシンデレラにしようとお話をされていますか?
水嶋:暗い印象に決してならないようにと。悲しいシーンはありますけど、それも頑張って頑張って、めげずに楽しくやってきたうえで、もう無理かも…とちょっと諦めかけるシーンなので、基本は明るく、ポジティブに、ちゃんと自分というものを持っているシンデレラを作っていこうとウォーリーさんも含め3人でお話してます。
――お継母様の佐藤アツヒロさん、お姉様のゆいPさん、まりゑさん、魔法使いのアン ミカさんと共演者の皆さんもパワフルな方たちばかりですね。
水嶋:そうなんです(笑)。アツヒロさんは、シャイな方なのか普段はあまり自分からお話されないんですが、お稽古中は“こうしたほうがいいかな?”“俺こうするから、もっとこうしていいよ”とおっしゃってくださいます。以前、“俺は毎回ハマリ役だと思ってもらえるように仕事をしている”とおっしゃっていて、今回もパワフルなママって感じのハマリ役にしか見えなくてかっこいいんです。
お姉様も強烈で、役的にはいじめる役ではあるんですけど、稽古中はすごく優しくて、いろいろとフォローをしてくださいます。家族のシーンでは、誰かがセリフが分からなくなってアドリブを始めると、それに応えて周りもアドリブを始めて、わけが分からなくなって笑ってしまうことがよくあるんです(笑)。
アン ミカさんも心があったかくて、優しくて、明るくて、元気な方で。皆さん、はっちゃけた人たちの集まりというか、毎日が本当に楽しいです。
■「反対はされないけど心配はされた」芸能界デビュー 将来は芯を持った女性に
――今回はミュージカルということでダンスもあります。
水嶋:ピアノをやっていたのでリズム感はなくはないのですけど、体を動かすと分からなくなってしまって…。暇を見つけてはひたすら足を動かして、ダンスを体になじませるようにしています(笑)。
――水嶋さんの9月6日リリースのデビュー曲「予感」はお母様が1986年に作詞を手掛けた曲になりますが、歌詞の印象はいかがですか?
水嶋:なんかこうあんまり普通チョイスしないような言葉が多いなって思いました、特徴的というか…。歌詞の意味をちゃんと理解しないと難しい言葉はけっこうあるかなと感じました。
――デビューに際して、ご両親からの反対はありませんでしたか?
水嶋:反対はしないですけど、心配はされました。「あなた、その性格で大丈夫なの?」「人前で話すの苦手だし内気だけれど、大丈夫なの?」みたいな感じで…。でも、「やってみたら?」と。
――女優さんを志されたきっかけは何だったのでしょうか。
水嶋:1つは、大学で映像を勉強していて、作る側・撮る側だったんですけど、映る側・演じる側もやってみたい、どっちもやりたいという気持ちがあったこと。もう1つは映画『記憶にございません!』の舞台あいさつを見たときに、出演者さんたちのオーラに圧倒されたというか、“やりたい”っていう気持ちになったことが大きかったです。
――デビューしてから1年8ヵ月くらいですが、どんな日々でしたか?
水嶋:意外と長く感じたかもしれないです。準備期間だったり、学校があったりしていたので、仕事をいっぱいしてあっという間に時間が過ぎたっていう感じよりは、普通にゆっくり過ぎていったっていう気がします。お仕事を始める準備をしたり、ダンスや歌唱レッスンをじっくりと積み上げた時間でした。マイペースな性格なので、ゆっくりと進められたのはよかったのかもしれないです。
――デビューしてから、ご自身の中の変化は感じられますか?
水嶋:自分を研究しないとダメだなと思いましたね。自己分析というか…。もっとちゃんと自分を知る必要があるんだなって常々思うようになりました。自分のことを知ってもらうために自分のことを聞かれることが多いので、何が好きでどういう考え方を持っているかなどを、ざっくりじゃなくて知る必要があるのかなって。ちゃんと自分の言葉で自己紹介できるようにならないといけないなと感じています。
――今年23歳を迎えられますが、今後どんな女性、女優さんになっていきたいという思いをお持ちですか?
水嶋:芯を持った女性になりたいです。確固たる、絶対動じない何かを持っていて、ちょっとしたことでぶれにくいというか、しっかりした人になりたい。憧れの女優さんは竹内結子さんです。動きとか表情とか声とか、全部好きです。
(取材・文:編集部 写真:高野広美)
ミュージカル『シンデレラストーリー』は、東京・日本青年館ホールにて9月6~19日、愛知・東海市芸術劇場大ホールにて9月24・25日、福岡・キャナルシティ劇場にて10月1・2日、大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて10月7~10日上演。