俳優デビューから3年という事実に驚きを覚えるほど、俳優として存在感が着実に増している眞栄田郷敦が、ホラー映画『カラダ探し』に出演する。携帯小説として話題となり、コミック版もシリーズ累計発行部数340万部を突破した原作を実写化した本作は、主演の橋本環奈、そして眞栄田を筆頭に、山本舞香、神尾楓珠、醍醐虎汰朗、横田真悠と、勢いある人気若手俳優たちが惨殺される1日を繰り返す高校生を演じている。
【写真】吸い込まれるような瞳が印象的 眞栄田郷敦、撮り下ろしインタビューカット
■ 橋本環奈、山本舞香、神尾楓珠らと共演「カメラが回っているか分からないくらい楽しんでいました」
――最初から一気に心をつかまれ、次第に友情ものとしても引き込まれました。純粋に面白かったです。
眞栄田:そうですよね。普段そんなに言わないんですけど、僕も単純に「面白い!」と思いました。脚本を読んでいた段階では、同じ日の繰り返しなので観客が飽きてきちゃうんじゃないかという不安があったんです。
でも実際に完成した作品を観てみたら、どんどんテンポが上がっていき、青春ものとして進んでいくという。さすが羽住(英一郎)監督だと思いました。幼少期の頃に映画館に行ったときのようなワクワク感を思い出しました。
――ホラーとしてももちろん、眞栄田さんは青春ものとしても好きだという意識が強いとか。
眞栄田:徐々にみんなの表情が変わっていく感じ、関係性が深まっていく感じが好きなんです。それぞれに何かを抱えていて、絶対に交わらないはずの6人が、“カラダ探し”という普通ならマイナスなことをプラスに変えていくさまが面白いです。
撮影も後半になるにつれて、カメラが回っているのかいないのか分からないくらい、みんな心から楽しんでいました。演じている僕ら自身の楽しい雰囲気が出ていると思います。
僕はすごく人見知りだから、最初はしゃべれなかったんですけど、(山本)舞香さんとかめちゃくちゃフランクなので、気を使ってくださってうれしかったです。本当にみんな仲が良くて、休憩時間も和気あいあいと楽しくしていましたし、最終日にも6人でご飯を食べました。明日香(橋本)以外は、割とみんな自分自身の性格に似たキャラクターだったので、自然にできたシーンが多かったです。
――眞栄田さん自身の高校時代と比べてみて、いかがでしたか。
眞栄田:「遊んで楽しむ」みたいな青春は送ってこなかったんです。だから、みんなで海へ行ってはしゃいでワーキャーしたりするシーンなんか、「俺にはこんな青春なかったな。いいな~」と思いました(笑)。
高校時代の僕には音楽の道という明白な目標があり、プロになるための練習を365日ひたすら続けていました。文化祭など学校行事の思い出は残っていますし、楽しかったですけど、遊んで過ごすという感覚はなかったんです。
■ デビューから3年 強まるこだわり「少しでも違和感があればディスカッションします」
――音楽の道を諦めたタイミングで、羽住監督の『OVER DRIVE』(2018)の試写会に足を運んだことが俳優業に挑むきっかけになったとお聞きしました。
眞栄田:音楽の道を志していた頃は、自分が俳優になるなんて全く思い描いていませんでした。デビューするとなったとき、初めてきちんと向き合うと決意したんです。
ところが、最初の頃はとにかく自分のことだけで精いっぱい。今考えると、何に精いっぱいだったのかも思い出せないほどです。今にしてみれば何を考えて役を作り、セリフを言っていたんだろうと思います。
この仕事を始める前と今とでは、作品の見え方も違いますし、自分の感じるいい芝居、好きな芝居というのも分かってきました。理想や目標は高まる一方です。知識を含め見えるものが増えてきているからこそ、自分自身に対して求めるものも増えているんだと思います。
どの現場でも自分の役や作品に対して、とことんこだわりを持っていたいですし、そこは大事にしたい。キャラクターやセリフや展開、動きに少しでも違和感を覚えれば、監督とめちゃくちゃディスカッションしています。そうやって現場で監督やスタッフ、共演者と話し合いながら、みんなで作っていく感覚が好きなんだと思います。
――橋本さんとは映画『午前0時、キスしに来てよ』(2019)以来の共演なので、ご自身の変化を、より感じられたかもしれませんね。
眞栄田:『ゼロキス』の頃のことは、実はあまり覚えてないんです。でも再共演ということで、めちゃくちゃ気合いが入っていました。あの頃の自分は、まだ何も分かっていませんでしたが、思い返してみて、「何かを得て成長できたか?」と自分に問うと、自信を持って「はい」と言えます。(取材・文:望月ふみ 写真:池村隆司)
映画『カラダ探し』は公開中。