『るろうに剣心 最終章 The Final』が、今夜21時放送の「金曜ロードショー」(日本テレビ系)でテレビ初放送。シリーズの中でも屈指の傑作である本作は、新田真剣佑演じる雪代縁(ゆきしろえにし)の物語と言っても過言ではない。



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 公開のたびに議論が巻き起こる、人気コミック、アニメの実写化だが、『るろうに剣心』は、完璧なハマり役と評価を得た緋村剣心役の佐藤健を中心に、シリーズ全5作、通算10年にわたって、原作ファンも映画から入ったファンも問わずに支持され続けた稀有なシリーズだ。その4作目『The Final』において、特に観るべきなのが、新田真剣佑。現在、ハリウッドで活動中の新田の、日本における集大成といっていい。

■コミック、アニメ原作の実写化映画に重宝されてきた新田

 日本を代表するアクション映画スター、サニー千葉こと千葉真一の長男として、1996年にアメリカのロサンゼルスで生まれた新田。拠点を日本に移し、本格的な俳優活動をスタートさせた新田が、その存在を認知させたのは、競技かるたを題材とした末次由紀の人気コミックの実写化映画『ちはやふる』シリーズでの綿谷新役だった。当初、真剣佑名義で活動していた彼が、新田真剣佑と改名した作品でもある。

 その後も、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤ問題は砕けない 第一章』『東京喰種トーキョーグール』『カイジ ファイナルゲーム』など、コミック&アニメの実写モノに愛されてきた新田。彼自身の放つ、繊細さと妖しさを秘めた美しい容姿とは一見反する骨太な存在感が、コミック、アニメ作品にも負けないのだろう。また、新田は「原作コミックは基本読まない」と公言しているが、役づくりへのストイックな姿勢が知られる彼には、そのほうが軸をぶらすことなく、成功へと繋がるのだと感じられる。『The Final』においても、脚本へと抽出されたキャラクターの芯をつかみ切り、原作ファンも大納得の縁を生み出した。

■「これこそ縁!」とオープニングから期待値を爆上げ

 週刊少年ジャンプの黄金期を支えた作品のひとつである、和月伸宏の同名コミック『るろうに剣心』は、TVアニメシリーズも大人気に。そして、ドラマ『ハゲタカ』、大河ドラマ『龍馬伝』の大友啓史監督、佐藤健主演で、ワーナー・ブラザース映画の制作・配給によって、2012年に第1作が放たれた。
日本映画の限界に挑み、ワイヤーを駆使して凄まじいスピードで繰り広げられるアクションと映像美で大ヒットを記録し、第2作『るろうに剣心 京都大火編』、第3作『るろうに剣心 伝説の最期編』が連続公開。そこから年数が経ち、コロナ禍での公開延期も経ての2021年、ついにシリーズ最終章となる2部作の第1弾『るろうに剣心 最終章 The Final』が公開にいたった。

 新田が演じたのは、剣心の亡き妻・雪代巴(演:有村架純)の弟であり、剣心の過去と頬に刻まれた十字傷の謎を知る、大陸の格闘術を身につけた最凶の敵・雪代縁。天誅ならぬ“人誅” と称して剣心への復讐を誓い、剣心と仲間たちを襲う。最終章の冒頭を担ったのは新田。白髪に特徴的なミニサングラス、オレンジの衣装で登場した縁が、汽車の内部という狭い空間で、息を呑む圧倒的な強さを見せ、「おお! これこそ縁!」とオープニングから期待値を爆上げした。

 剣心との再会のシーンでは、静かな中に今にも発火しそうな怒りを表現。終盤での直接対決への気持ちをあおった。新田は、公開時のインタビューにおいて、本作の撮影は「桁違いのアクションだった」と告白すると同時に、「楽しかった」と何度も発言しているが、新田のポテンシャルを最大限に引き出した、世界で活躍するアクション監督・谷垣健治の手掛けたアクションには、観客側からも拍手しかない。

■剣心と縁の肉体と魂がぶつかりあうクライマックスに震える

 迎えた最大の見せ場、剣心と縁の肉体と魂がぶつかりあうクライマックス。「見逃し厳禁! まばたき厳禁!」と叫びたくなる、最高峰といえるアクションシーンが、縁の館で連続する。ここにきてようやく、鍛え抜かれた新田の爆裂上腕二頭筋が披露される演出もニクイ。
この立ち姿を見ただけで、新田の縁役に懸けた思いが伝わってこようというものだ。

 風に乗り、哀しさを帯びた剣心の受けの戦いに、空気を怨で切り裂き、怒りを全身から発出して向かってくる縁。剣心にとって、敵でありつつも、決して戦いたくはなかった相手だが、ふたりは剣を交えるしかなかった。このシーンで、新田はバリエーション豊かに超絶アクションを繰り出すとともに、幾重にも厚みのある心の様を表現してみせる。剣心への怒り、憎悪に支配された体の奥にある、最愛の姉を亡くした瞬間の恐怖と、寂しくてたまらない、姉の優しい笑顔に包まれたい少年の心。もともとは破壊する予定がなかったという、庭園の八角堂をなぎ倒すパワーを見せながらも、新田の縁は、守ってあげたくなるような弱さを滲ませる。

■現在25歳、これからの海外での活躍が目に浮かぶ

 千葉真一の二世であることを殊更に強調するまでもなく、自身の才能と魅力で惹きつける新田だが、それでもやはり幼いころから空手やレスリング、体操などを経験してきた素養は確実に俳優としての武器になっている。そして生まれ持った資質を、己の努力でさらに強固なものへと高める意志もしっかりと受け継いでいる。

 『The Final』で、その身体能力の高さと割り切れない感情の機微表現をMAXまで発揮した新田。これが俳優・新田真剣佑だといわんばかりに。とはいえ、ここで分かった気になるのは早い。現在25歳の新田は、昨年から拠点をアメリカへ。
恵まれた肉体に加えて、これまで日本の俳優たちの壁になってきた言語も問題なし。すでに海外版『聖闘士星矢』での主演と、Netflix制作のドラマ『ONE PIECE』でのロロノア・ゾロ役が発表されている。日本のコミック、アニメを海外で実写化するという、ともに地雷を踏む危険性もあるプロジェクトだが、日本へのごあいさつ程度の出演だった『パシフィック・リム:アップライジング』とは違い、新田がメインを張るのだ。ぜひ応援したい。

 まずは『るろうに剣心 最終章 The Final』。この輝き、パワーを見れば、世界での活躍を自然と期待したくなると断言しよう。(文・望月ふみ)

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