『ハリー・ポッター』シリーズの世界が体験できる「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 ‐ メイキング・オブ・ハリー・ポッター」(以下、「スタジオツアー東京」)が、2023年夏に、東京・練馬区のとしまえん跡地に誕生する。映画第1作目公開から20年以上たった今でも、世界中の『ハリー・ポッター』熱は冷めることを知らず、日本の多くのファンが、今か今かと本施設のオープンを待ちわびていることだろう。

今回クランクイン!は、イギリスのロンドンにある本場の「ワーナーブラザース スタジオツアーロンドン‐メイキング・オブ ・ハリー・ポッター」(以下、「スタジオツアーロンドン」)を取材。未だベールに包まれる「スタジオツアー東京」のヒントを得るべく、現地でその実態を調査してきた。

【写真】入っていきなり『死の秘宝』の巨大なドラゴン! 本場「スタジオツアーロンドン」の内部の様子

■“魔法”が目の前に!

 今回訪問した「スタジオツアーロンドン」は、『ハリー・ポッター』シリーズの舞台裏を見て回り、数々の名場面を生んだ“魔法”を体験できるウォークスルー型の施設。撮影に使われたセットや衣装、アニマトロニクス、特殊効果、小道具など、『ハリー・ポッター』を生み出した、ありとあらゆる仕事を目の前で楽しむことができる本施設は、2012年の開業以来、1600万人以上が来場し、いまだに予約困難という人気っぷりだ。

 結論から言うと、ここはすごい。想像をはるかに超える素晴らしさだ。入り口を通り抜けると、いきなり『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』でグリンゴッツ銀行にいたウクライナ・アイアンベリー種のドラゴンに出迎えられる。その威風堂々とした姿は、思わず息を呑むほどの迫力で、数歩歩いただけで、この施設のただならぬ雰囲気を感じられる。

■迫力満点の巨大展示

 「スタジオツアーロンドン」の大きな特徴の1つは、その施設の広さ。約1万4000平方メートルもある本施設の所要時間は3時間以上と言われる。“『ハリー・ポッター』の世界に包まれる”という貴重な体験ができる巨大な展示を見ると、誰しもが興奮と感動を抑えられなくなるだろう。

 特に驚いたのは、ホグワーツ魔法魔術学校の「大広間」のセット。
ヨークストーンの床を歩くと、気分はすっかりホグワーツ生。組分け儀式や、クリスマス・ダンスパーティー、魔法対決など、目をつぶると数々のシーンが浮かぶ思い出深い「大広間」は、オーク材やパイン材の長テーブルや“寮別ポイント計”など、映画ではじっくり見ることができない部分も堪能でき、とにかく「目が足りない」と思わされる充実っぷりである。

 そのほか、「9と4分の3番線&ホグワーツ特急」、「グリフィンドールの談話室と男子寮」、「ダンブルドアの校長室」など、映画のシーンそのままのたくさんのセットが、わたしたちを待ち受ける。日本では何が見れるのか…想像するだけで胸が高鳴る。

■『ハリポタ』愛深まる“スタッフの熱量”に感激

 没入感の高いセット展示のみならず、“映画の裏側にあるスタッフの仕事”まで知ることができる、学びの深さも「スタジオツアーロンドン」の良いところ。今回は、ツアーの中で取り上げられた“興味深いエピソード”をピックアップして紹介する。

 まずは「ダンブルドアの校長室」。48点もの歴代校長の肖像画や、本体からラベルまで手作業で制作されたという800本あまりの“記憶の棚”の小瓶、天体好きのダンブルドアらしい研究道具など、あらゆるものが所狭しと並べられているのが本セットの特徴なのだが、注目したいのは本棚。ここにある無数の蔵書の大半は、イギリスの電話番号案内帳に革のカバーを付けたものなのだという。一冊一冊、手作業でラベルが貼られたそうで、想像するだけで気が遠くなりそうな量である。

 また、セットや衣装、小道具のみならず、『ハリー・ポッター』シリーズに欠かせないのが“動物”。フクロウのヘドウィグ、ネズミのスキャバーズ、ネコのクルックシャンクス、犬のファングなど、記憶に残るキャラクターも多数いるが、撮影スタジオでは、「動物部門」が世話する動物がたくさん飼われていたそうだ。
1ヵ月のエサの量は6.5トンを超えていたらしい。「動物部門」では芸なども教えており、例えば、フクロウが手紙を運べるようになるまで、6ヵ月はかかるという。こちらも根気のいる仕事である。

 このように、「スタジオツアーロンドン」では、映画を見るだけでは気づきにくい、たくさんのプロの仕事を目の当たりにすることができる。オタク心をくすぐる素晴らしい技術ばかりで、施設を出るころには「早く映画を見て確かめたい!」という気持ちにさせられる。

 もちろん、『ハリー・ポッター』に詳しくなくとも、全力で楽しむことが可能。グリーン・スクリーン技術を使って写真が撮れるエリアや、バタービールが飲めるカフェなどもあるので、思い思いの過ごし方ができるだろう。

■「スタジオツアー東京」今わかっていること

 さて、こんなにも映画製作の魅力を感じられる施設が、いよいよ日本にやってくる。ロンドンに続き2番目、そしてアジア初となる「スタジオツアー東京」は、『ハリー・ポッター』や『ファンタスティック・ビースト』シリーズの舞台裏を散策できる、ウォークスルー型の施設だ。敷地の広さは、約9万平方メートル(東京ドーム2個分)。

 3万9000平方メートルの施設本体には、「サウンドステージ」と「バックロット」が用意され、展示スペースの見学の所要時間は、およそ半日だという。東京の施設は、本場ロンドンよりもスケールの大きなセットが組まれる予定だ。


 入園チケットは、「スタジオツアーロンドン」と同じように、快適な入場人数となるよう調整をして販売するとのこと。実際に行ってみたところ、「混みすぎて苦しい」と感じることはなく、むしろ膨大な展示量なので、次から次へと人が流れていくようになっていた。見逃したり、諦めたりということはまずないので、ご安心を。

 また、「スタジオツアー東京」入場口前の広場スペースには、特別につくられた映画に登場する魔法動物の彫刻が置かれた造園エリアを計画しているほか、西武線・池袋駅の1・2番ホームは、ロンドンにある「キングスクロス駅」を参考に、最寄りの西武線・豊島園駅は、ホグワーツ魔法魔術学校への「ホグズミード駅」をほうふつとさせる赤を基調としたホームに、リニューアルも予定している。都心からアクセスも良く、さらに、到着する前から『ハリー・ポッター』気分を味わえるのは、日本ならではだろう。

 今回「スタジオツアーロンドン」を体験してみてわかったことは、映画やこの施設に関わる人たちは、妥協知らずで、一切手を抜かないということ。きっと「スタジオツアー東京」も、こだわりにあふれた場所になるはずだ。オープンまで首を長くして待ちたい。(取材・文・写真:阿部桜子)

 「ワーナーブラザース スタジオツアー東京 ‐ メイキング・オブ・ハリー・ポッター」は、2023年夏、としまえん跡地にオープン。

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