どんなにヒットし、どんなに長く続いたシリーズにも必ず「第1回」が存在する。長く続いたシリーズであればあるほど、紆余曲折を経て今の姿があるはず。
【写真】いつまでも美しい沢口靖子(今年撮影)
同作は、京都府警科学捜査研究所(科捜研)の法医研究員・榊マリコ(「榊」は正式には木+神)の活躍を描く科学捜査ミステリーシリーズ。1999年にスタートしたSeason1から足掛けなんと23年、現行のテレビドラマでは最も長く続いている人気シリーズだ。そんな『科捜研の女』のSeason1第1話はどうだったのか?
■ 全然クールじゃないおてんばマリコ ゴミ袋に頭を突っ込み初登場!
今では常に冷静沈着で、“クールビューティー”という形容がぴったりのキャラクターのマリコ。ときにおっちょこちょいな側面もあるが、基本的には科捜研を引っ張る頼もしい存在だ。
しかしそんな今のマリコに慣れていると、第1話の初登場シーン、事件現場のゴミ袋に頭を突っ込み、刑事に首根っこをつかまれているマリコを目の当たりにすると衝撃的だ。マリコが事件現場のゴミ捨て場を観察していたところ、警官に不審者と勘違いされてしまったというのが事の真相だが、この波乱の幕開けが物語るように、第1話ではこの後もマリコの周りでいろいろ起きる。
キャラクターも、今より気性が荒い。新しく京都府警に赴任してきた刑事部長・倉橋(渡辺いっけい)に遭遇すると、あろうことかマリコは即ビンタ! 仮にも上司なのに…。この背景には、マリコが共に事件を捜査していた城丸刑事(伊藤裕子)との会話がある。結婚したい彼氏がいるという城丸は、バツイチの相手が“前妻”の悪口ばかり言っているとマリコに話す。その前妻こそが、何を隠そうマリコだったのだ。
さらにその後、今度は城丸がわざわざマリコのラボまで乗り込んできて、「私の男に何してくれてんの」と言わんばかりにマリコにビンタをお返し! ここまで全て京都府警内で起きたことで、なかなか話題に事欠かない警察署である。
このように第1話のマリコは勝ち気で「おてんば」とさえ言いたくなる。クールビューティーとはかけ離れているが、でもそれがキュートにも感じられる。一体この23年の間で、何が彼女を変えさせたのだろう。数多の事件を通して人間の嫌な部分をたくさん見てきたことだろう。殉職した同僚を見送った回数も少なくない。とにかく、23年の月日でマリコの性格が第1話より落ち着いたことは確実だ。
■ 内藤剛志がまだいない
今ではホームズとワトソンぐらい、マリコとの鉄板コンビが定着した感のあるのが、内藤剛志が演じる警部補・土門薫。しかし、第1話にはいつまで立っても登場しない。事件が解決したあとも出てこない。それもそのはず。
土門の代わりに第1話から登場するのが、小林稔侍演じる警部・木場俊介。本物の刑事以上に刑事っぽい小林が演じる木場は、“刑事の勘”で捜査するいわゆる「昔気質のデカ」。“科学はうそをつかない”をモットーとするマリコとは水と油の関係で、第1話で早くも対立するが、2人が全く別のプロセスをたどって殺人事件の同じ容疑者にたどり着く展開は興味深く、ドラマが進むに連れてマリコと木場が反発しながらやがては共闘する、という展開を期待させる第1話となっている。
■ 驚いたのは沢口靖子の変わらなさ
ほかにも、第1話を見返してみると、現在放送中の最新Season22では原型をとどめていない要素がいくつもある。科捜研メンバーのキャストも刑事メンバーのキャストもほとんど入れ替わっている。また、現在放送中のSeason22では、マリコたちが日夜働くラボがリニューアルしたことが話題になった。
しかし、その中で唯一、ほとんど変わっていないものがある。それはマリコ演じる沢口靖子本人だ。第1話を見返してみると、沢口の容ぼうの変わらなさには誰もが驚くのではないだろうか。漫画のキャラクターでさえ23年も連載したら、もう少しタッチが変わるものである。
23年という歳月によって感じられたマリコの内面の変化と、沢口の変わらなさ。