バカリズム脚本によるドラマ『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系/毎週日曜22時30分)が、期待にたがわぬ異色の出来で、ファンを増やしている。一見、日曜日の夜、1日の締めにダラダラと見るのに持ってこいの空気感を漂わせながら、その実、何重にも重なり合った仕掛けで、じわじわと独特な世界へ引き込んでいく。

1人の女性が人生をゼロからやり直す姿を描くストーリーから、バカリズム色全開だが、そこに、同じくバカリズムが脚本を務めた『架空OL日記』に通じる女子トークなどが融合。さらには、思わず突っ込みたくなる小ネタの数々や、「懐かしい!」と叫びたくなるアイテムの登場、伏線の回収などなど…魅力が盛りだくさん。本稿では、SNSなどでも盛り上がりを見せる、本作に散りばめられた仕掛けの数々を振り返っていきたい。

【写真】“麻美”安藤サクラがまさかの人生4周目!? 第6話の場面写真をチェック

■共感者続出! 怖いほど頷ける“あるあるトーク”

 本作は、安藤サクラが扮(ふん)する主人公・近藤麻美が、ある日突然、交通事故によって33歳で終了してしまった人生を、“それまでの記憶を持ったまま”に、ゼロから生き直す地元系タイムリープ・ヒューマン・コメディ。“人間に生まれ変わるため”多くの“徳”を積むミッションとともに、ストーリーは展開していく。

 初回放送時、まず視聴者をトリコにしたのが、麻美と、幼なじみのみーぽんこと米川美穂(木南晴夏)と、なっちこと門倉夏希(夏帆)のトークシーンだ。女子が複数集まると、高い確率で発生する、いくつもの“問題”が毎度、繰り広げられていく。第1話の、誕生日にお店でのサプライズをするか否か問題にはじまり、カラオケに行って、同級生の福ちゃん(染谷将太)と再会したシーンでは、夕飯を食べてお腹いっぱいの3人の前に、サービスでポテトが出されるという問題が発生(しかし、3人は福ちゃんに本当のことを伝えられないうえ、なんだかんだ最終的にはポテトをたいらげる)。

 こうした、思わず“あるある”と共感したくなる問題に対する会話が、途切れることなく続いていくのだ。まるで同級生の会話を盗み聞きしているような内容と、絶妙なテンポと間の取り方。バカリズムの脚本と、それを体現する安藤、木南、夏帆の3人の会話劇で、こちら側に違和感をみじんも抱かせることなくストーリーが自然に進んでいく。だからこそ、このような、なんてことのない会話が、先の伏線になっているとは、つゆほども思わないのだ。


■「なつかし~!」思わず叫んでしまうアイテムと時代を映す出来事

 日常会話とともに、これでもかと登場するのが、プリクラやゲームボーイアドバンスなど、数々の懐かしいアイテムだ。2周目の人生に突入し、赤ちゃんの頃の麻美が登場するシーンでは、テレビで『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ系)が流れ、立って歩けるようになった麻美の傍らには、サンリオがデザインしたキャラクター“みんなのたあ坊”のぬいぐるみが、小学生時代には、当時大ブームを巻き起こした“たまごっち”が登場した。プロフィール帳も、あれはいったいなんだったんだろうと今では首を傾げたくなる代物のひとつだが、SNSのなかった時代の懐かしい遺物として、登場した時には気持ちが高ぶった。

 ほかにも『ズームイン!!SUPER』(日本テレビ系)や、ノストラダムスの大予言、ガラパゴスケータイ(ガラケー)の登場や、赤外線通信、スカイツリー開業など、「なつかし~」と叫びたくなるシーンを挙げ始めるとキリがない。SNSでも当時を知る視聴者からの共感の声が相次いでおり、多くの反響が寄せられている。

■ただの日常会話じゃなかった! おそるべき伏線回収

 こうした、日常の何気ない様子を切り取った本作だが、視聴者が最も目を離せない理由は、秀逸な伏線回収ではないだろうか。第1話、麻美、美穂、夏希が交わした“ポケベル”についての会話が、麻美が人生2周目で、友人の玲奈ちゃんのお父さんの不倫を未然に防ぐ際の作戦へとつながっていく。

 「(ポケベルが流行ったのは)うちらが保育園くらいのときじゃない?」と、1周目では使い方を知らなかったポケベルを、人生2周目、しかも保育園児の麻美が使いこなすのだ。さらに、人生1周目の妹・遥(志田未来)との会話も、不倫を防止するヒントに。今現在では撤去されてしまった電話ボックスの場所や、父が貯めているへそくりの場所を2周目で知っていたことで、麻美の不倫防止計画が成功するのだ。さらに第1話のラストでは、国武万里の「ポケベルが鳴らなくて」が流れるなど、至れり尽くせりな演出で伏線を回収していく。

 また、同じく第1話の「(中学時代の教師)ミタコング(鈴木浩介)が何か問題を起こして辞めたんだって」という会話は、2周目、3周目と、麻美のミッションとして引き継がれていく。
さらに、伏線回収とは違うが、松坂桃李演じる元カレ、田邊勝のエピソードも、人生ごとに違いが見られておもしろい。先日、公式ツイッターが、麻美の人生2周目と3周目で成功者となった勝(松坂)のオフショットを披露。各周で年商に1億円の差が生まれた勝が、雑誌で着けていた腕時計のデザインが異なることを明かして話題になった。このように、遊び心が詰まった演出のこだわりも楽しい。

■豪華俳優陣が続々登場

 そして、テレビ局内で登場するドラマもそうだが、ここまで、実際に放送されていた他局の作品タイトルや、出演俳優の実名、時に本人役として名だたる俳優が続々と登場する豪華な演出も新鮮だ。

 中でも、ここまでの屈指の名場面として挙げたくなるのが、麻美が2周目の人生で不倫を阻止したことにより、引っ越しがなくなった玲奈(黒木華)と再会したカラオケでのシーン。彼氏の宮岡徹(野間口徹)が既婚者だと聞いた玲奈は、麻美、美穂、夏希の心配をよそに、ブチ切れた様子ですぐに電話をかけ、「お前、既婚者なんだってな!」と一瞬の迷いもなく切り捨てた。これには、麻美たちでなくとも拍手を送りたくなる。黒木は、玲奈の柔らかい雰囲気と、豹変した姿、テンションMAXでヘヴィメタル曲を歌う姿を見事に演じ分けたのだ。

 残念ながら、人生3周目では麻美が宮岡の不倫を未然に防いだため、このカラオケのシーンはなかった。作中に聞こえた麻美の「もう1回見たかった」という心の声は、視聴者の心のつぶやきでもあったのではないだろうか。

 また、第3話では人生2周目の麻美が、俳優の前野朋哉を目撃するシーンも。
これは、“現在放送中のドラマ『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系/毎週水曜22時)を撮影中の前野朋哉を見かけた”という設定のコラボレーションとなった。ちなみに、本作と『リバーサルオーケストラ』は、ともに三上絵里子がチーフプロデューサーを務めている。

■ついに人生4周目に突入 麻美以外にもタイムリープする人物が!?

 さて、麻美は現在、人生3周目。テレビ業界に就職し、第5話ではプロデューサーとなって、自らの体験を題材にしたドラマ『ブラッシュアップライフ』を企画するなど、テレビ局で生き生きと働いている。3周目で気になったことといえば、彼女が地元から東京に出たこと。そして振り返ってみると、多くの人の人生を巻き込みながらタイムリープしていることである。

 また、本日12日放送の第6話では、麻美の人生が4周目に突入することが判明。さらに、麻美と同じく人生を繰り返しているらしい謎の女(水川あさみ)も登場する。麻美や周囲の人々の物語がどのように進展していくのか、仕掛けられた小ネタや伏線に注目しつつ、最終回まで楽しみたい。(文:望月ふみ)

引用:『ブラッシュアップライフ』公式ツイッター(@brushuplife_ntv)

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