十三代目市川團十郎が10日、都内で行われた舞台「市川團十郎・ぼたん・新之助 成田屋親子『伝承への道』」記者懇親会に、長男である八代目市川新之助、長女・市川ぼたんと共に出席。團十郎は、ぼたんの演目である「子守」にちなんで自身の子守の思い出を語る一幕もあった。



【写真】すっかり大きくなった市川新之助

 本舞台は「伝統の継承、未来へ」をテーマに、座談会として成田屋親子が登場するのをはじめ、團十郎・ぼたんの「男伊達花廓」、新之助の「鳶奴」、ぼたんの「子守」などの演目を披露する。

 團十郎は、今回の舞台について「コロナ禍と時代の流れによって、歌舞伎というものの存在意義をもう一度確認しなければいけないと思った」と語ると、「江戸時代にあった文化を今の時代を意識した考え方で表現するような構成にしたい。松竹さんの本興行ではできないことを自分たちの興行でトライしていければ」と本舞台の意義を語る。

 ぼたんは、江戸時代の貧しい家庭に育った女の子が主人公の「子守」という演目を披露する。どんな内容であるかを一生懸命説明するぼたんに温かいまなざしを向けていた團十郎は、「その時代に生きていた人の情緒をご覧になってもらいたい」とフォローする。

 ぼたんが行う演目の「子守」にちなんで、團十郎の子守の思い出を聞かれると「麗禾(ぼたんの本名)は歩き出すのがとても早く、1歳ちょっとで一緒に歩いていたので、あまり子守をした思い出がないんです」と語ると、「勸玄(新之助の本名)はなかなか歩かなかったので、(妻である)麻央にしても私もずっと抱きかかえていた思い出がありますね」と懐かしそうに語っていた。


 家庭では父、稽古場では師匠という存在の團十郎。ぼたんは「遊んでくれたりご飯を食べたりしているときはすごく優しいお父さん。稽古中は、直した方がいいところをたくさん指摘してくれる頼もしいお父さん」と違いを語ると、新之助も「お稽古のときも丁寧に教えてくれます」と羨望の眼差しを向けていた。

 記者からの質問にもしっかりと回答するぼたんと新之助を見て目を細めていた團十郎だったが、「それぞれの性格があるので、稽古の方法は変えています」と述べると、「しっかりと伝統芸能を継承していくことが大切だと思っています」と今後もこうした舞台を続けていければと思いを語っていた。

 舞台「市川團十郎・ぼたん・新之助 成田屋親子『伝承への道』」は、3月30日東京国際フォーラムホールC、31日神奈川県民ホール、4月15・16日NHK大阪ホールにて上演。