今年に入って2本目となる主演映画『劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~』が公開中なのが、俳優の鈴木亮平。2006年の俳優デビュー以降、さまざまなジャンルの作品で存在感を放ってきた彼の、ここ10年の代表作を中心に唯一無二なキャリアを振り返っていこう。



【写真】すべてはここから始まった 代表作『変態仮面』肉体美へのトレーニングショット

お下劣キャラから朝ドラ主人公の夫 カメレオン俳優の異名を手に

◆『HK 変態仮面』/肉体美とお下劣ギャグを惜しげもなく披露

 鈴木の名を世間に知らしめ、現在に至っても彼自身が「代表作」と認めているのが、2013年に公開された主演映画『HK 変態仮面』だ。あんど慶周のマンガ『究極!!変態仮面』を福田雄一監督が実写化した本作で鈴木が演じたのは、正義感の強いド変態、色丞狂介。女性のパンティを被ることで覚醒し変態仮面に変身するというキャラクターだ。

 文章を書いているこちらが恥ずかしくなるほどの変態ヒーローを、鈴木はバッキバキに仕上がった肉体で熱演。白スニーカー、網タイツ、ブーメランパンツ、そして顔にはパンティという変態コスチュームで格闘アクションからお下劣ギャグまで体当たりで挑む彼の演技は映画ファンや原作ファンに衝撃を与えた。

◆『花子とアン』/吉高由里子の相手役としてブレイク

 『HK 変態仮面』公開の翌年、鈴木はなんと日本の朝を象徴する番組に抜擢される。
彼が出演したのは吉高由里子が主演を務めた連続テレビ小説『花子とアン』(NHK総合)だ。

 このドラマは「赤毛のアン」の日本語翻訳者として知られる村岡花子の半生をモチーフにしたフィクションで、鈴木は主人公・花子(吉高由里子)の夫となる印刷屋の2代目・村岡英治役で出演。持ち前の演技力に加えて、品の良さと知性を感じさせるたたずまいが視聴者から高い支持を得ることに。花子と二人三脚で関東大震災や息子の死といった悲劇を乗り越えていく姿が感動を呼んだ。

◆『天皇の料理番』/体重20kg減で激やせ! 壮絶な役作りが話題に

 2015年には佐藤健が主演を務めたドラマ『天皇の料理番』(TBS系)に主要キャストとして出演。昭和天皇の料理番を務めた秋山徳蔵の半生をモチーフにした本作で、鈴木が演じたのは主人公・篤蔵(佐藤)の兄・周太郎。


 周太郎は弁護士になる夢を追いつつも篤蔵の夢もサポートするという弟思いなキャラクター。しかし劇中で病に侵されてしまい自身の夢を断念するという展開を迎える。そんな周太郎を演じるために、鈴木は体重を20kg落として撮影に臨むという執念の役作りを敢行。鈴木の“役者魂”が多くの視聴者の涙を誘った。

男子高校生や歴史上の偉人まで 役どころのためなら体重増もいとわず

◆『俺物語!!』/体重30kg増でマンガキャラを完コピ

 『天皇の料理番』での壮絶な役作りでさらに知名度を高めることになった鈴木。番組が終了し数ヵ月がたった同年の10月に公開された主演映画『俺物語!!』では、まったく異なるキャラクターを熱演。


 映画『俺物語!!』は「別冊マーガレット」(集英社)で連載されていた河原和音・アルコの同名コミックを実写化したラブコメディ。本作で鈴木が演じたのは常人離れした身体能力を持ち正義感にあふれているものの異性からはまったくモテない高校生・剛田猛男。原作では身長2m、体重推定120kgという巨体を演じるために、鈴木は30kgの増量を敢行。肉体改造に加えて原作にしっかり寄せたヘアメイクもあいまって、原作ファンも納得の“完コピ”ぶりをスクリーンで披露した。

◆『西郷どん』/西郷隆盛役で体重を約100kgまで増量

 映画、テレビドラマの話題作に次々と出演し俳優としてのキャリアを順調に重ねていた鈴木は2018年、ついに大河ドラマに出演することに。彼にとって大河ドラマ初出演にして初主演作となったのが西郷隆盛の半生を描いた『西郷どん』(NHK総合)。


 西郷隆盛の青年期以降を演じた鈴木は、晩年を演じるにあたっては体重を約100kgまで増量して撮影に挑み、その大胆な体型の変化は多くの視聴者に衝撃を与えた。

◆『テセウスの船』/殺人容疑で逮捕される悲劇の警察官

 鈴木は『西郷どん』の放送終了から約1年後の2020年1月にスタートした竹内涼真主演のドラマ『テセウスの船』(TBS系)に出演。

 このドラマは「モーニング」(講談社)で連載されていた東元俊哉による同名マンガが原作で、平成元年に警察官の父親が起こした殺人事件により世間からずっと後ろ指をさされて生きてきた主人公・田村心(竹内)が、事件当時にタイムスリップし、事件の真相を追う本格ミステリー。

 本作で鈴木が演じたのは主人公・心の父で警察官として働く佐野文吾。劇中で鈴木は、逮捕以前の文吾と逮捕後も一貫して無罪を主張し続ける老年の文吾を熱演。優しい父にして正義感あふれる警察官でありながら、殺人事件の容疑者とされてしまうという複雑な境遇のキャラを抜群の演技力で体現。
作品に奥行きを与え多くの視聴者を感動へと導いた。

正義感あふれるドクターと残虐非道なヤクザ 対極な2役で世間を驚かせる

◆『TOKYO MER』/正義感あふれる凄腕救命救急医

 助演としても作品に貢献する演技力と存在感を示した鈴木が日曜劇場枠で初主演を務めたのが2021年7月期放送の『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)。

 本作は、重大事故、災害、事件の現場に駆けつけ、命を救うために危険な現場に飛び込んでいく救命救急チーム“TOKYO MER”の活躍を描くヒューマンドラマ。このドラマで鈴木はTOKYO MERの専任チーフドクター・喜多見幸太を演じた。

 人命救助のためなら自身の命をもかえりみない喜多見になりきった鈴木。1分1秒を争う人命救助の場面でも冷静かつスピーディに対応する姿やオペシーンでの見事な手さばきなど、細部にこだわった演技は作品に圧倒的な説得力を与えていた。


◆『孤狼の血 LEVEL2』/残虐非道なヤクザを怪演

 『TOKYO MER』放送中の8月に公開されるやいなや、演じる役柄のギャップに多くの観客が驚かされたのが映画『孤狼の血 LEVEL2』だ。

 この映画は役所広司と松坂桃李が共演した『孤狼の血』の続編。広島の架空都市・呉原市を舞台に、裏社会を取り仕切る刑事・日岡秀一(松坂)と対立する組織の抗争を壮絶なバイオレンスとともに描いていく。

 本作で鈴木が演じたのは刑期を終えて出所してきたばかりの上林成浩。上林組を率いる彼は周囲から“悪魔”と恐れられる武闘派ヤクザ。劇中では体格の良さが際立つスーツ姿にモミアゲを剃った異様なヘアスタイル、そしてドスの効いた広島弁で大暴れ。「何もかんもぶっ壊れればいいんじゃあ…」と凄み、嬉々として暴力の限りを尽くす“悪のカリスマ”として新境地を開拓している。

◆『エルピス‐希望、あるいは災い‐』/知性と色気あふれる記者役にSNSも興奮

 2022年屈指の話題作として記憶に新しいドラマ『エルピス‐希望、あるいは災い‐』(カンテレ・フジテレビ系)では、一転してテレビ局の政治部記者として官邸キャップを務める斎藤正一役を演じることに。

 このドラマは連続テレビ小説『カーネーション』(2011年/NHK)の渡辺あやが実在の複数の事件から着想を得てオリジナル脚本に仕上げた社会派エンターテインメント。

 鈴木演じる斎藤は、主人公の女性アナウンサー・浅川恵那の元恋人で同僚というキャラクター。劇中ではかつて恋人同士だった恵那と斎藤の男女としての関係も描かれ、大胆なベッドシーンも。インテリジェンスと野性味が混ざり合った斎藤に対しては、放送中からSNSに「男の色気、だだ漏れ!」「斎藤さんはめちゃセクシーでイイ男」などの声が相次いでいた。

 今年3月に40歳を迎え、ますます俳優としての人気が高まっている鈴木。2024年にはNetflix製作の実写映画『シティーハンター』で主人公・冴羽りょうを演じることも発表されている。今後、彼がどんな役を演じていくのか見逃すことはできない。(文:スズキヒロシ)