原泰久による人気漫画を2019年に実写映画化した『キングダム』は、興収57.3億円を記録し、この年の邦画実写作品の興収ナンバー1を記録。その後2021年には続編として『キングダム2 遥かなる大地へ』が公開され、こちらも興収50億円を突破するヒットを記録した。

満を持しての公開となる第3弾『キングダム 運命の炎』は、原作でも人気の「紫夏編」と「馬陽の戦い」が描かれる。山崎賢人演じる主人公・信が大将軍を目指す秦国と、隣国の趙との激しい戦いが描かれる本作で、趙軍の副将・馮忌を演じた片岡愛之助、万極を演じた山田裕貴が、念願だったという『キングダム』出演への思いや、互いの芝居について語り合った。

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■「出たい!」と熱望していた作品に出演

――シリーズ2作品が大ヒットした『キングダム』ですが、作品をどのようにご覧になっていましたか?

愛之助:以前マネージャーから「原作がすごく面白いです」と勧められて読んだのですが、本当に面白くて。さらに実写化された作品を拝見して「おーすごいな」という感想を持っていました。皆さんキャラクターがハマっており、よくぞ再現したなと感動していました。どんな役でもいいから参加したいなという思いは、俳優としてありました。


山田:僕もいろいろな番組等で『キングダム』という漫画が面白いということは聞いていて、読んでみようと思い、手に取ったんです。もう最初の巻から感動して泣きまくりで(笑)。すごく好きな漫画の一つになりました。そんな作品が実写化されると聞いて、昔から一緒にお仕事をしたことがある、吉沢亮が王様の役をやっていて、1作目が公開されたとき、僕は京都で撮影していたのですが、初日に映画館に観に行ったぐらいです。映画も素晴らしく、僕もいつか何かの役で出られたらなという思いはありました。

――出てみたいと思っていた作品からオファーがありました。
どんな思いでしたか?


愛之助:それはもう、何でもいいから出たいと思っていたので、本当にうれしかったです。

山田:僕もお話をいただいたときは、とてもうれしかったです。ただ万極というキャラクターは想像していなかったので、驚いたのですが…。

愛之助:まさか万極役が来るとはね(笑)。

山田:(笑) 万極か!という。いわゆる怨念の強い役で、この先どこまで描かれるか分かりませんが、信にいろいろなものを背負わせるキャラクターなので、すごく楽しみでした。


――それぞれのキャラクターを演じるうえで意識したことは?

山田:万極は、漫画では頭のあたりに呪いの幽霊みたいな絵が描かれているキャラクター。40万人の趙国の民が秦国に虐殺されたという過去を持つなか、万極がどれだけ辛い思いをしてきたのかということを考えました。もちろん、理解することは難しいのですが、白髪のビジュアルやしゃべり方など、過酷なことがありすぎてああなってしまったのかなと想像することで、演じるというよりは、極限の負を体現しようという思い。怒りと苦しみ、悲しみだけで存在しているような…。その思いを最初の一太刀に込めました。

愛之助:馮忌は、静と動で言うなら静のキャラクター。
僕はどちらかというと動のタイプの人間で、石橋は飛んで渡って落ちてから考えるみたいな人間なので、共感できる部分はなかったんです。でも真逆なキャラクターだからこそ、面白かったですね。一つ大事だなと思ったのは、信にとって馮忌は飛信隊の隊長として初めて対峙する大物。その意味で、すごく強くて大きな存在でなければ、信の価値が薄れてしまう。主役を引き立たせるために、映画を良くするためには、立派な武将でなければいけないというところは意識しました。

■お互いの芝居の印象は?

――山田さんから見た馮忌はいかがでしたか?

山田:原作漫画で、キャラクターが吹き出しでしゃべるのではなく、心の声が書かれている部分があるじゃないですか。
馮忌が頭の中で作戦を練っているときのナレーションとか、しっかり作品の中で成立させるのは、とても難しいなと思っていて。

愛之助:ほぼ会話がない!(笑)。これ成立するのかな、という。

山田:でも愛之助さんがすごく的確な表現をされていたのがすごいなと思いました。自分ならどうやるかなと考えていたんですけど、ナレーションに対して、愛之助さんが表情で魅せていくのが、なんだかすごくて。

愛之助:そんな風に言っていただけてうれしいです。


山田:先ほど、馮忌は静と話していましたが、ものすごく静かで知的ながらも、奥底に見える闘志を表現されていました。挟み撃ちする前に睨んでいる感じとか。僕が言うのもおこがましいですが、すごく素敵だなと思いました。

――愛之助さんから見た万極はいかがでしたか?

愛之助:最初、万極は誰がやるんだろうと思っていたんです。こんなにも恐ろしく業の深い役を、特殊メイクをしたとしても成立させるのは並大抵ではない。でも山田君と聞いて「なるほど、彼ならできるな」と腑に落ちました。現場でもこういう特殊な役が多いって言ってたよね?

山田:結構ダークな役が多いかもです(笑)。

愛之助:実際、負のオーラを見事に体現されていて、すごかった。なかなか負のオーラって出せないものなので、黙っているだけだと、ただそこに立ってるだけになってしまう。山田君には、ワンカットの中に、ゾッとするような感覚がありました。すごい俳優さんだなと思います。

山田:ありがとうございます。

■敵役だけど、信を応援! 2人が語る『キングダム』の魅力

――主人公の敵役としての参加でしたが、出来上がった映画を観て、どんなことを感じましたか?

愛之助:演じるときは、敵としてしっかり全うしようという思いですが、映画を観ているときは、ずっと信を応援していました。やられるのは自分なのに「行け!行け!」ってね(笑)。それぐらい信に感情移入できましたし、熱中して観ていました。泣きながら観ていましたからね。

山田:前半は紫夏とえい政の話に感動し、後半は成長した信の強さに惹かれました。1や2のときは、がむしゃらに進む信の姿が印象的だったのですが、今回は100人の隊をまとめる顔も見え隠れして、成長している姿はグッときました。自分が出演している作品なのですが、ファンのように観ることができる映画でした。

――改めて撮影に参加して、『キングダム』という作品の魅力をどのように感じましたか?

愛之助:信の成長を観る楽しさはありますね。人間的にも剣の強さも、どんどんのし上がっていく爽快さは魅力かなと。あとは登場人物たちの愛が、いろいろな形で描かれていること。秦国から見たら、趙は敵かもしれませんが、見方を変えれば、秦が敵にもなる。そういう多面的に人物を描いているところが素晴らしい作品だなと思います。

山田:信を含め、敵味方関係なく、登場人物たちの心がしっかり描かれているところが好きなんです。敵を敵としてだけで終わらせない漫画でもあるし、映画でもある。いろいろな人の心が見られるところは、大きな魅力だと思います。

愛之助:今回第3弾ですが、原作も長いので、どんどん新作を作って、『男はつらいよ』並みに続けて欲しいですね。そして、ずっと先でまた違う役で出たいです。

山田:それいいですね!(笑)

(取材・文:磯部正和 写真:池村隆司)

 映画『キングダム 運命の炎』は公開中。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記
※えい政の「えい」は「上に亡、中に口、下左から月、女、迅のつくり」が正式表記