テレビ、ラジオ、ドラマに執筆と、デビューから40年近く第一線で活躍を続ける清水ミチコ。ジャンルを問わない活動の中で、彼女のコアともいうべきものは間違いなくライブだという。

今年もライフワークである全国ツアー、そして年始の恒例ともなった日本武道館公演を控える清水にインタビュー。今回のツアーの見どころを教えてもらった。

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◆10回目の武道館公演「これはお祝いしたい!」

 11月11日の江戸川区総合文化センターを皮切りに開催される全国ツアー『清水ミチコアワー ~ひとり祝賀会~』。ツアー発表時には「モノマネや人の勝手な新曲など、元々おめでたい芸風の私。笑い(W)とバカバカしさ(B)、そしてコア(C)なモノマネという祝・WBC的ライブを目指します!」とのコメントも寄せられたが、今回も、モノマネ、〇〇風作曲法、映像にトークと、開演からラストまでまさしく“WBC”なライブになることは間違いなさそうだ。

――今回のツアータイトルは『ひとり祝賀会』となりました。


清水:今回で武道館が10回目になるっていうことで、自分でもすごい!って思って。これはお祝いしたいと思いまして、1人で自分を祝うっていうのがなんか悲しくて面白いなと(笑)。“WBC的ライブ”ってのもキャッチーな方がいいかなと思って、ただ付けただけなんですよ(笑)。

――2013年の『国民の叔母・清水ミチコの『ババとロック』 in 日本武道館』から10回目。初武道館で印象に残っていることはありますか?

清水:1回目は、自分にできるのかなって思って怖かったし緊張もしたので、自分だけじゃなく“清水ミチコフェス”みたいにしていろんなゲストに力を借りて、よろよろと立ち上がることができたんですよね。

今ではもう1回目ほどの緊張はないですけど、お正月1本目の仕事であるっていうことと、あの会場に行くとやっぱり神聖な気持ちになるので、“やるぞ!”っていう気持ちになるんですよね。


――それでは、ここ10年は武道館が終わるまで、年が明けたっていう感じではないですね。

清水:そうなんです。だから1回オリンピックの工事かなんかの関係で開催できなかった年があったんですけど、その時は周りのスタッフがすごくホッとしているのがもう顔に出ちゃって(笑)。

――(笑)。アニバーサリー公演になりますが、何か特別なことは企画されてますか?

清水:まだ決定はしてないですけど、どなたかスペシャルな方のVTR出演とか、あるいは生でトークをするとか、そういうことをお願いしようと思ってます。

◆一番好きで興奮できることっていうのはやっぱりライブ

――清水さんのライブと言えば、ここでこの人に目を付けたか!という方のモノマネやパロディー映像も必見ですが、準備は早めからスタートするのでしょうか?

清水:いや、たとえば8月にネタになりそうな事件があったとしても、11月に始めるツアーだともうすごい古い感じがするんですよね。
だから、10月まで待つっていう感じですね。準備は8月からやってるんですけど、結局決まっていくのは秋からが多いかな。ギリギリまでこれはどうかあれはどうかって話し合ってます。

――ファンとしては、どうしても新ネタに期待してしまうのですが…。

清水:もちろん、ありますよ! 今年大ブレイクしたあの子とか、あのアーティストの作曲法とかね。世の中に爆発的ヒットがあるとこっちにもおいしい余波がありますから(笑)。


私は70年代の音楽が好きなんだけど、あの頃は自分で曲を書くとか作詞するとかは少なかったんですよね。最近の人たちは才能が昔とは全然違うんだなって感じがしますね。あと、複雑すごく。(モノマネを)本気ではなりきれてないけど、おちゃらけてネタって感じでやる分には憎まれないんじゃないかなって(笑)。糸井(重里)さんには「夢グループ」をやってくれって言われていて(笑)。新曲が出たらしいから聴いてみようかと。


そうそう、プーさんとハイジの原作の著作権が切れたとかで、いろいろ使えるという話も聞いたので、「しめた!」って思ってます(笑)。

――清水さんがモノマネされる方はパワフルな方が多いですよね。

清水:好きなんですよね。自分の中にそういう核みたいなものがないタイプだったので、そうなりたいっていう思いが強いのかも。あとは、特に権力者の人のモノマネだと余計に笑うんですよね、みんなが。政治家とかね(笑)。


どういうわけか自分は昔から、男性アイドルにはまったく興味なくって、女性のアイドルとか歌手が好きだったんですよね。だから今親しくさせてもらってる森山(良子)さんにも浅田(美代子)さんにもテンションが上がりますね。あんまり好きになるとモノマネしちゃうんで、迷惑な話なんですけど(笑)。

――清水さんにとってライブ、全国ツアーというのはどういうものですか?

清水:こういう仕事に就くとね、ラジオとかテレビとか映画とかいろんな仕事をさせて頂けるんですが、その中で一番残っていくものが自分に合っているものなんだろうなって思ってるんです。それについては、私にはやっぱりライブなんだろうなって。考えてみたら、一番好きで興奮できることっていうのはやっぱりライブだし。できるだけ長くやりたいと思ってるので、最近はライブのために健康診断に行くとか、健康にも気を付けるようになりました。

あとは、私はフォーク世代なので、フォークシンガーの方が夜汽車に乗ってどっか行くっていうのを学生時代に聞いていて、すごくうらやましかったんですよね。それを自分でもできてるみたいで、さすがに夜汽車はないんですけど、飛行機とか乗るとワクワクして楽しいんですよね。

――ライブに参戦されるファンの皆さんはどんな方が多い印象ですか?

清水:私のファンの方は、男女、あと男女どっちでもない方とか、年齢層も幅広いなって思いますね。でも、10年経ったから、「お互いちょっと…来ましたね」っていう感じもありますけど(笑)。

――オシャレというか、スマートにライブを楽しまれている方が多い気がしました。森山さんや平野レミさんが客席にいても、そんなに騒ぐこともなく…。

清水:本物がいるのに、ニセモノに夢中で(笑)。女芸人の友達が言ってたんだけど、これだけたくさんの人がいて、1人の出待ちもいないのが面白いって(笑)。みんな年なんだよって答えたんですけど。

◆日々楽しみを見つけてトライ 人付き合いで気を付けるまさかのこととは?

――清水さんはデビューからもうすぐ40年。ターニングポイントを挙げるとすると…。

清水:なんだろう? やっぱり『夢で逢えたら』になるのかな。あの番組でみんなと一緒にコントをして、その後、(野沢)直子ちゃんは1人でニューヨークへ行ってやってみるとか、私はライブに懸けてみるとか、ほかのみんなも司会のほうに進んでみたりと、自分の好きな道が拓けてきた感じがありますね。

――ブログやSNSなどを拝見していると先輩後輩、お笑い、歌手などを問わず、いろんな方とのお付き合いが軽やかですが、人付き合いで大切にしていることはありますか?

清水:正直飲みすぎないってことですかね(笑)。私いまだに信じられないんですけど、飲みすぎて自分がなくなって、人にすごい暴力的な言葉をかけてたことがあったんですって。けちょんけちょんに言ってたらしくて、すごく傷ついたって後から聞いたことがあって…。そんな言葉って謝っても謝っても消えないと思うんですよね。だからとにかく飲みすぎないように。調子に乗って“飲むの楽しい~”なんて思ってたら、人に悪口を言ってたっていう最低の感じで(笑)。30代の時に深く反省して、それからはあまり飲まないようにしました。

――清水さんは、結婚、出産も経験しながら、40年近く第一線で活動を続けられてきました。後輩の女性芸人さんからは憧れの存在なのではないでしょうか。

清水:どうなんだろう…。「いろいろ上手くいっていいですね」ってよく言われますけど。

でも、こういうことができなかったなとか、ネタですべったなとか、とにかく高齢になってくるとネタがなかなか思いつかなかったりと、毎日しんどいことは多々ありますけどね。でもみんなと飲んだり食べたり笑ったりしてると、束の間忘れたりできるんですよね。いい友達ができたなと思うし、女性芸人ってやっぱり性格のいい人が多いので、こっちも救われるっていうか、嫌な性格が直ってくる(笑)。

――普段の皆さんとの集まりの時はお友達という感じですか? やっぱり後輩という感じですか?

清水:後輩ですかね。野沢直子ちゃんくらいだと3つくらい下なので一緒って感じなんですけど。

でも先輩後輩になるってことは、結局おごんなきゃいけないってことですからね。「ごちそうさまです!」って言われて利用されてます(笑)。

――プライベートでのこれからの楽しみや目標はありますか?

清水:そうだなぁ。結局学生時代ってなんだかんだ忙しいし、20代もなんだかんだで忙しい。育児とか終わって今になってやっと自分の好きなことはこれで、これをやりたいっていう自由も利くので、習い事したいとか、ここに行きたいとか、そういうふうに日々楽しみを見つけてトライするようにしてますね。

スペインにもう1回行きたいっていうのもあるし…。そうそうナンチャン(南原清隆)は狂言をやってるんですけど、先日「日本のそういう芸能すごくいいよ!」って言ってたんですよ。私はもともと民謡がすごく好きなので、民謡の歌い方を習おうかなと思って。いい先生を紹介してもらうところなんですよね。

――いずれライブで民謡の〇〇師匠のモノマネとかも…。

清水:やっても誰も知らないっていう(笑)。

――(笑)。では最後に全国ツアー、10回目の武道館に向けて、ファンのみなさんへのメッセージをお願いします。

清水:「ひとり祝賀会」ってタイトルにしたんですけども、1人で自分の全国ツアーと武道館10周年を祝うっていう気持ちと、そのためには、祝賀会に来てよかったってお客さんに思ってもらいたいので、その分すごく時間をかけてアイデアもいろいろ絞り出しているので、きっといいものになるんじゃないかと思ってます。人に優しいまではいかないけど、ブラックさは少しはマイルドになってきましたし(笑)、毒々しいものもありますけど、毒々しくないものもありますので、ぜひ楽しみにしてください。

(取材・文:編集部 写真:高野広美)

★『清水ミチコアワー ~ひとり祝賀会~』★

・11月11日/東京・江戸川区総合文化センター
・11月18日/富山・富山県民会館
・11月23日/大阪・フェスティバルホール
・11月24日/石川・金沢文化ホール
・11月26日/福岡・福岡国際会議場 メインホール
 
・12月3日/愛媛・しこちゅ~ホール(四国中央市市民文化ホール)大ホール ~おりがみ~
・12月16日/岩手・盛岡市民文化ホール 大ホール
・12月17日/宮城・東京エレクトロンホール宮城
・12月19日/愛知・ 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
・12月24日/北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)

<2024年>
・1月3日/東京・日本武道館
・1月20日/群馬・メガネのイタガキ文化ホール伊勢崎

・2月3日/岡山・倉敷市芸文館
・2月10日/埼玉・久喜市総合文化会館
・2月12日/秋田・あきた芸術劇場ミルハス 中ホール
・2月18日/長野・ホクト文化会館 中ホール
・2月23日/静岡・静岡市民文化会館 中ホール
※その他追加公演の予定あり。10月以降公式サイトにて順次発表

 チケット価格は、各公演6800円(税込/全席指定)、武道館公演は7500円(税込/全席指定/お土産つき)。