乃木坂46を卒業して10ヵ月。秋元真夏のほがらかな笑顔は今なお、変わらない。

卒業後は新たな「挑戦」として、12年間を過ごした事務所から新天地へと移籍。テレビのレギュラーを獲得するなど、活躍の場を広げている。年明け1月には、自身にとって2度目の舞台出演となる『鍵泥棒のメソッド→リブート』でヒロインに挑戦。変化の続く環境で、何を思うのか。出演作への意気込みとともに聞いた。

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■演じるヒロインとの共感「日常的にケータイのメモ」を

 『鍵泥棒のメソッド→リブート』は、2012年公開の映画『鍵泥棒のメソッド』を舞台化したコメディ作品。ひょんなことから人生が入れ替わってしまった売れない若手俳優の桜井(望月歩)と、伝説の殺し屋・コンドウ(少路勇介)。やがて、ヒロイン・香苗(秋元)らも巻き込み、物語はめまぐるしく展開していく…。

――舞台出演は、乃木坂46時代の『サザエさん』(2019年9~10月)以来。今作『鍵泥棒のメソッド→リブート』出演の意気込みは?

秋元:出演させていただけてうれしいです。映画版も好きで、殺し屋が出てきたりと怖いシーンもありますけど、見終わってから前向きになれるし、人生はいいものだと考えさせてくれる作品でした。

――乃木坂46時代には7万人規模の神奈川県・日産スタジアム公演も経験。
今作では、386席と規模の違う東京・本多劇場に立ちます。


秋元:人前に立つという意味では規模の違いはあまり感じないかもしれません。でもライブとお芝居ではステージに立つ感覚が違いますね。前回出演した舞台『サザエさん』では、神宮(明治神宮野球場)のライブ翌日に通しリハーサルだったんです。直前まで大勢の人の前に立っていたので、そういう意味での感覚的な慣れはあったのですが、歌って踊るのではなく、ファンの方とは限らない人たちもいらっしゃる場所で演じる新鮮な緊張感がありました。

――今作ではヒロイン・香苗役だけでなく、1人で複数役を演じるのも大変そうです。

秋元:台本を読んでビックリしました。ほかの役を演じるとき、香苗として見られないように切り替えなければと思って。おっちょこちょいなので「今、何の役で出ているか」を分かるように演じられるかは、ちょっと不安です…(笑)。

――(笑)。演じる香苗は、年上の男性に一目惚(ぼ)れしやすい女性編集者です。

秋元:芯が強くしっかりしていて、決断力のある女性だと感じました。
自分の中で気持ちを作り上げて演じたいです。気になったことを書き留めておく香苗の習慣は、共感できました。私も気になったことや忘れてはいけないこと、人の名前も書き留めていて、日常的にケータイのメモに頼っています。

――今作でメモは物語の鍵を握るアイテムですが、秋元さんがメモを取りはじめたきっかけは?

秋元:乃木坂46時代の握手会です。来てくださる方々が増えはじめたときに、名前や特徴、話した内容を「次に会うときも覚えておきたい」と思ったのがきっかけでした。すっかり習慣付いて、今では逆に、メモに頼らないと「何も覚えてない」くらいなのはちょっとした悩みです。おっちょこちょいなエピソードも書き留めていて、毎回「なぜ、こんなに間違えるんだろう…」とか、自分にイラつきながらも「ハァ…」と落ち込んだあとにメモして、寝かせています(笑)。

■事務所移籍は「誰も知らない環境での挑戦」を考えての決断

――舞台のほか、テレビやラジオのレギュラー番組など、活動は順調。2月のグループ卒業から10ヵ月ほどで、環境の変化は?

秋元:グループでのお仕事に区切りが付いて、1つ1つ、自分のお仕事と向き合う時間が増えました。例えば番組に出演する前には、空気感を知るためにその番組の過去回をチェックして、収録に向けた事前アンケートも時間をかけて書けるようになりました。

――グループ卒業後の3月には、新天地のジャパン・ミュージックエンターテインメントへ移籍しました。

秋元:乃木坂46のメンバーとして12年間お世話になり、学んだことがたくさんありました。
12年分も私のことを知ってくださっている方々に囲まれた環境は優しく、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。卒業直前に「私の人生を新たにスタートさせるなら、誰も知らない環境での挑戦が一番じゃないか」と思ったのが、移籍のきっかけでした。

――卒業前後、グループの肩書きが外れることへの不安もあったのではないかと。

秋元:ありました。「乃木坂46の子」として頂いていたお仕事もたくさんあったと思いますし、ただの「秋元真夏」になってどうなるだろうと考えたこともありました。でも、最近は不安に思う時間が減りました。ベースにある乃木坂46での思い出を大事にしながら、活動していきたいです。

――グループ時代とは、時間の使い方も変わったのかと思います。

秋元:睡眠時間が増えました(笑)。ゆっくり寝て「この時間はしっかりお仕事をしよう」とか、メリハリのある健康的な生活を送れています。乃木坂46時代はシングルリリースや握手会、ツアーと、1年の大まかな流れが決まっている中で、個人のお仕事もとなると「昨日は何をしていたっけ…」「明日は何だっけ…」と分からなくなるときもあったんです。歌やダンスを覚えるのも時間がかかるタイプでしたし、頭の中がいっぱいでした。
今は、1つ1つのお仕事にじっくり向き合えるだけの余裕が少しできたかなと思います。

――さらなる変化として、テレビ番組ではグループ卒業後に「5kg」太ったとも明かしていて…。

秋元:乃木坂46時代は「踊っているから大丈夫」と思って、ダンス以外の運動をしていなかったんです。その勢いのまま卒業してダンスがなくなった結果、太っちゃったんだと思います。体を絞りたい気持ちはありますけど、まだ何もできていません(苦笑)。

■グループで学んだもの「人のいいところを見つける」

――8月20日には、30歳になりました。心境の変化は?

秋元:はっきりとした自覚はないんですけど、プライベートの友人が結婚して、子どもが生まれてというのを見ていると「私もそんな年代かぁ」と実感します。番組で年下の共演者の方から年齢を聞かれて「30歳です」と答えるとビックリしてくれるのがうれしくて、最近の楽しみです(笑)。

――乃木坂46で共に過ごしたメンバーからも、お祝いされたのでしょうか?

秋元:新内眞衣(乃木坂46のOG)からオーブンレンジをもらいました。30歳の区切りとして「長く使えるものがいいんじゃないか」と考えてくれたみたいで。偶然にもレンジを買い替えたいタイミングだったので驚きました(笑)。料理が好きなので重宝しています。
最近も自家製のホワイトソースでお餅と明太子の入ったグラタンを作りました。

――そうした絆も生まれた20代を振り返り、得たものは何でしたか?

秋元:人のいいところを見つけることです。周囲にいいところを持つ子たちがたくさんいたので、簡単に見つけられる環境ではありましたが、特に20代後半でキャプテンになってからは、「この子のすてきなところを伸ばしたい」「メンバーを知ってもらうためにこう動こう」と、より考えるようになりました。誰かのすてきなところを見つけて、人のために動くのは人生の原動力です。

――そんな力を与えてくれたグループのOGとして、8月末には「乃木坂46 真夏の全国ツアー2023」最終公演も鑑賞されたそうですね。

秋元:楽しかったです! 1期生や2期生が全員卒業して、3~5期生の後輩たちだけの大舞台は何も心配なく、大成功を収めている姿がカッコよかったです。特にキャプテンの梅澤美波が頑張っていたのが伝わってきて、ステージで話す姿もカッコよく、感動しました。

――OGとして今なお、グループの存在を感じる瞬間も?

秋元:たくさんあります。グループのレギュラー番組『乃木坂工事中』(テレビ東京系/毎週日曜24時)は、番組が好きで毎週欠かさず見ているんです。CDリリースのたびに音楽番組もチェックして、「うちの子たちかわいい」と思いながら純粋なファン目線で見守っています。

――「制服のマネキン」の選抜メンバー発表から計算して、10月で芸能活動は12年目に突入。今思う、将来像は?

秋元:環境が変わって間もないですし、いっぱいいっぱいでそこまで先を考えられない部分もありますが、テレビでチャンネルを変えたときに「秋元真夏が出ているなら見てみよう」と思ってもらえる存在になれたら。
その気持ちは昔からずっと変わりません。アイドル時代から応援し続けてくださるファンの方々との交流も、ファンクラブイベントを通して楽しんでいきたいですね。

――さらなる活躍を期待しています。ちなみに、「料理が好き」とおっしゃる秋元さんは乃木坂46時代から「国民の嫁」として愛されていました。今後も、キャッチフレーズは変わらず?

秋元:今も自分で使っていますし、これからも。一生使い続けます(笑)。

(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:上野留加)

 舞台『鍵泥棒のメソッド→リブート』は2024年1月11日~21日、東京・本多劇場にて、1月27日に大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。

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