アニメでも人気を博した『オッドタクシー』の世界からスリリングなミステリードラマが誕生。本作でダブル主演を務めるのが、ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)での純子役も話題となった河合優実と、『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)、『きのう何食べた? season2』(テレビ東京系)など数々の映画・ドラマの話題作に継続的に出演している坂東龍汰だ。

そんな注目を集める2人が、本作の撮影を振り返り、今の世界線へと導いた自身の“ルート”も語ってくれた。

【写真】同事務所所属で共演も3度目! 気心の知れた河合優実&坂東龍汰の2ショット

■『オッドタクシー』の雰囲気はそのままに「こんなに自由でいいのかな」と思うぐらい出演者が躍動

 漫画『RoOT / ルート オブ オッドタクシー』(「ビッグコミックスペリオールダルパナ」連載中)で描かれている、若手探偵コンビの奮闘劇を基にドラマオリジナルで描く本作で、河合は愛嬌ゼロの探偵・玲奈、坂東は玲奈の後輩で凶運のポジティブ新人・佐藤を演じる。依頼を受けた小戸川(篠原篤)というタクシードライバーの謎めいた私生活を解明していくなかで、2人はさまざまな人物が複雑に絡み合う“女子高生失踪事件”へと足を踏み入れる。

――今回、映画『花と雨』や、Vaundy、Perfumeといったトップアーティストのミュージックビデオなどを手掛けた土屋貴史監督が演出・脚本を担当されていますが、脚本を読まれた時の感想は?

河合:『オッドタクシー』ならではのユーモアもあって、でも“ロー”トーンというか…作品の雰囲気は、すごく踏襲されているなという感じがしました。

坂東:この脚本がどういうふうに映像化されて、どうなるのかは未知数だなという印象でした。でも、このキャスティングで撮られる画を想像したときに、今までにない面白いドラマになるんじゃないかと直感的に感じて、すごくワクワクしていました。
その気持ちのまま、撮影に入ることができましたね。

――お二人とも土屋監督とご一緒するのは初めてとうかがいましたが、監督とのやりとりで印象深いことは?

河合:撮影に入る前に、アニメの『オッドタクシー』を意識として持ち込んだんです。もちろん、それは一つ共有できることなので、良い部分もあるんですけど、監督は「いつもやっているように、自由にお芝居をしていただければ大丈夫です」「アニメだからとか、原作のキャラクターだからこうだとか、そういうことにあんまり囚われないでいい」というスタンスを貫かれていました。なので、撮影中も本当にのびのびやらせてもらえましたね。

坂東:監督は物静かに見守ってくれて、でも面白かったら笑ってくれるし、何か聞いたら絶対に答えてくれて、信頼できる方だなと思いました。優しい方なので、現場の雰囲気がものすごく良かったです。


河合:寛大でしたね。だから、撮影中、「こんなに自由にやっちゃっていいのかな」と思ってしまうぐらいでした。現場でも、私たちのアイデアを採用してくれるし、面白がってやってくれるんです。完成した映像を見た時に、監督の中で「こういう映像にしたい」というビジョンがしっかりあるからなんだろうなと思いました。映像としてのゴールを逆算しながら、そのなかで俳優たちが自由にできるというか…。自由といっても「本来の自然な姿を捉えます」というスタンスとはちょっと違って、本当に監督のビジョンのなかで、俳優たちがキャラクターとして生き生きできるという感じでした。


坂東:たしかに。完成した映像を見ても、キャストの芝居のトーンと、監督が撮りたいかっこいい画が魅力的に融合されているのがすごい。それと、やっぱりユニークだなって思いました。海外のドラマを彷彿とさせるような画のつなぎ方とか、見たことがないテンポ感とか…とにかく気持ちのいい編集をしてくださっていて、うれしくなるというか…愛を感じるんですよね。

河合:分かる!(笑)

■ミステリーゆえの複雑さに撮影で苦戦! 河合が『オッドタクシー』の考察サイトで確認?

――撮影で印象に残っていることは?

坂東:優実ちゃんが演じる玲奈と僕が演じる佐藤は、事件を解決していくストーリーテラー的な存在を担っているんですが、スケジュール的に話数が入り乱れての撮影だったので、撮影中、「このシーンではどこまで事態を把握しているのか、いないのか」みたいな確認があったのが印象深いです。

河合:うん、難しかったよね。
そうした上で、どんどんと新しいキャラクターが登場してくるので、「何で今、玲奈はこの人に会っているんだろう」みたいな感覚になることも(笑)。本格的なミステリーだからこそだと思うんですけど、映像だと分かりやすいんですが、台本の文字だけでストーリーを追っていると、状況把握が難しいんですよね。

坂東:そうそうそう。

河合:だから、撮影中、『オッドタクシー』の考察サイトとか見ましたもん(笑)。「あれ? 何でこの人はこういうセリフを言ってるんだっけ」というのを把握するために。

坂東:優実ちゃんがすごいのは、いつ何が起きたかということを書き出して、時系列でノートにまとめてたんですよ。


河合:(笑)。

坂東:最初は、やたら僕に聞いてきてたんです。「ここ、何で私いるんだっけ?」とか。

河合:やたらって(笑)。嫌だった?(笑)

坂東:全然嫌じゃない(笑)。嫌じゃないし、一緒に考えるのも楽しかったんですけど、ある日を境に聞かれなくなったんです。


河合:え、そう?

坂東:うん。「あれ?」と思って、チラっと優実ちゃんのノートを見たら、出来事を時系列で書き出していたんです。それを見て、「優実ちゃんは自分の中で解決しちゃって、もう頼られることはないんだな」と思って、ちょっと寂しい気持ちになりました(笑)。

河合:それぐらい緻密な台本だったんですよ(笑)。

――(笑)。同じ事務所に所属されていて、共演も3度目。話を聞いていても、お二人の仲のよさが伝わってくるのですが、現場で気付いたお互いの新たな一面はありますか?

坂東:やっぱり普段会う時と現場では違うなとはちょっと思いました。オフの時は、年相応の人間味があるんだけども、現場にいるとすごく職人感があるというか。

河合:へぇ。

坂東:こうやっていろいろな人を圧倒してきたんだな、と。

河合:言い方悪い(笑)。

坂東:(笑)。そんな百戦錬磨の河合優実と、ここからどんどんまた成長していくと思うけど、このタイミングで一緒に芝居ができたのがうれしかったです。

河合:(照)。私も、もともと坂東くんのことは知っていたけど、現場での姿をずっと見ているのは初めてだったので、坂東くんの性格や人間性みたいなものが、現場でこういう作用を生むんだということを知ることができました。坂東くんが持っている明るい雰囲気がみんなに伝染していって、すごくハッピーな現場だった。それはやろうと思ってもできない人もいるから、やっぱり天性のものだなって感じましたね。

――坂東さん演じる佐藤の明るいキャラクターにも合っていますね。

河合:そうですね。現場の“太陽”でしたね。

坂東:え!?(驚)

河合:はい。本当に言ってますよ(笑)。

坂東:…でも、この現場は“太陽”が多すぎたからね、スタッフさんも。

河合:うん。でもシビアな俳優さんだったら、スタッフさんのそういう“太陽”な一面が出てこなかったかもしれない。

坂東:なるほど…そっかそっか。

河合:みんなで楽しくドラマを作っていこう、みんなが主張していいんだって思えたのは、坂東くんみたいな人がいるからだと思いますね。

坂東:うれしいな。何か、勇気出た(笑)。

■注目度の高い本作 河合「面白いと思っていただける自信がある」 坂東「優実ちゃんのおかげで話題になるかも(笑)」

――さまざまな出来事や人物の選択が思わぬ展開を呼ぶストーリーが、まさに『RoOT / ルート』というタイトルを体現しているように感じられました。お二人が、これがなかったら今の世界線はないかもしれないと思うことは?

河合:私は自分の出身の高校に入ってなかったら、このお仕事をしてなかった気がします。人前に出て何かを表現したり、みんなで一緒にものを作ったり、そういうイベントが大好きな校風だったので、そこで表現することの楽しさを体験できたんです。そうじゃなかったら、今が違ったかなと思いますね。

坂東:わかる。僕も本当にそう思うな。高校時代って、やっぱり仕事とかそういうことを考えずに何かに没頭できる時間というか…人の才能や発想力、センスとか、いろいろなものを培う3年間なんだろうなって、今になって改めて思うよね。だから、その時間って本当に大事だなって思う。

河合:うん。そんなふうに仕事をする前の、育まれている時間のなかで選択していることって、すごくたくさんあるんじゃないかな。

坂東:そういう時間が“今”を作ってるよね。僕も高校の3年間でいろいろな国に行ったりで、違う異文化の人たちと交流して人と人とがつながることの意味や喜びを感じられたり、その人たちともの作りをして発表したりした体験があるからこそ、今、この仕事が楽しくできているのかなって思いますね。日々、いろいろな人と共同作業をしながら、現場で一つの作品を作っていくのは大変でもあるんですけど、エネルギッシュだし、それを経て良いものができた時の感動の方が圧倒的に勝るんです。僕も高校の時の体験がなかったら、この世界に興味を持たなかったのかなと思います。

――そうしてお二人が俳優業に進み、数々の作品に出演されてきて、河合さんが出演された『不適切にもほどがある!』(小川純子役)、坂東さんが出演された『きのう何食べた? season2』(田渕剛役)なども話題に。そうしたなかで届けられる本作は、視聴者の皆さんの期待値も高まっていると思います。

河合:もちろん作品によって届けようとするものが違うのは前提なんですけど、自分が今まで出演した作品がもとで『RoOT / ルート』に注目してもらえたり、これから取り組むものがもっと見てもらえたりする可能性が上がることは事実だと思います。自分が演じた過去の役によって、どんどん未来の作品にいい風が吹くっていうのは、すごいいいことだなと感じているので、本当に今までやったことをやってきてよかったなと思っています。私が出演した他の作品を見て本作に興味を持ってくださった方も「絶対面白い!」って思っていただける自信が、私は完成した映像を見てあるので、本当にいろいろな人に見ていただきたいですね。

坂東:さまざまな作品に出演してきて、この間ふと思ったことがあるんです。地方に行く新幹線からいろいろな街を眺めていたんですけど、「この家に住んでいる人や、ここで歩いている人たちの中に、どこかで僕を見てくれて、知ってくれている人が何人かはいたりするのかな」って。それで、人に届ける仕事、人前に立つ、テレビに出るってすごい仕事だなって、改めて感じたんですよね。今、映画を作ったけど公開できないとか、上映する映画館の数が少なくて地方の人がなかなか見られないという状況があったりするなかで、自分が前に出て、メディアで知ってもらうことによって、そういう作品もより多くの人に見てもらえる未来があるなら、僕は出続けたいし、やり続ける意義があるな、と。それは、この仕事を始めたころからもすごく思っていますけど、『RoOT / ルート』もそのきっかけになるだろうし、純粋に多くの人に届けたいっていう気持ちで今までやってきたので、皆さんに届くことを願っています。でもやっぱり“純子“のおかげで、バーっと話題になるかも(笑)。

河合:だといいですね(笑)。

(取材・文:齊藤恵 撮影:高野広美)

 ドラマ『RoOT / ルート』は、テレビ東京、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送にて4月2日より毎週火曜24時30分放送。テレビ大阪にて4月5日より毎週金曜26時放送。Netflixにて見放題独占配信。