和歌山毒物カレー事件を多角的に検証したドキュメンタリー映画『マミー』が、8月3日より全国順次公開となることが決定。併せてメインビジュアルが解禁された。



【写真】和歌山毒物カレー事件26年目の挑戦 映画『マミー』場面写真

 和歌山毒物カレー事件――1998年7月、夏祭りで提供されたカレーに猛毒のヒ素が混入。67人がヒ素中毒を発症し、小学生を含む4人が死亡した。犯人と目されたのは近くに住む林眞須美死刑囚。むごたらしい事件にメディアスクラムは過熱を極めた。自宅に押し寄せるマスコミに眞須美死刑囚がホースで水をまく映像はあまりにも鮮烈だった。彼女は容疑を否認したが、2009年に最高裁で死刑が確定。
今も獄中から無実を訴え続けている。

 事件発生から四半世紀、本作は最高裁判決に異議を唱える。「目撃証言」「科学鑑定」の反証を試み、「保険金詐欺事件との関係」を読み解いていく。さらに眞須美死刑囚の夫・林健治元受刑者が自ら働いた保険金詐欺の実態をあけすけに語り、確定死刑囚の息子として生きてきた林浩次(仮名)が、なぜ母の無実を信じるようになったのか、その胸のうちを明かす。林眞須美が犯人でないのなら、誰が彼女を殺すのか? 二村真弘監督は、捜査や裁判、報道に関わった者たちを訪ね歩き、なんとか突破口を探ろうとするのだが、焦りと慢心から取材中に一線を越え…。

 映画は、この社会のでたらめさを暴露しながら、合わせ鏡のようにして、私たち自身の業や欲望を映し出す。


 二村監督は「私は何かとんでもない思い違いをしているのではないか。取材中、何度も自問した。林眞須美は手練れの詐欺師で、ふてぶてしい毒婦で、夫をも殺そうとした冷酷な人間であったはずなのに、取材によって得た事実はそれとは全く違う姿を映し出していた。これで死刑判決が下されたのか…。空恐ろしさを感じた」とコメント。

 石川朋子プロデューサーは「この企画は、いくつかのテレビ局に持ち込んだが『死刑判決が確定している事件を扱うのは難しい』と言われ実らなかった。
それなら映画にしようと監督が撮影に入ると、取材先で度々新聞やテレビの記者に出くわした。しかし、彼らは冤罪の可能性について取材していても、大々的に報じることはなかった。死刑判決にこれだけ疑義があることがわかっていて、なぜ。監督の疑問と憤りが、今回の映画の原動力になっている」としている。

 ドキュメンタリー監督の大島新は「この映画はスクープだ。そして誤解を恐れず言えば、痛切なるエンタメ作品だ。
『執行されてしまったら取り返しのつかないことになる』と思い、調べ始めた二村真弘監督の取材の深さはもちろん、撮影・構成・編集などの表現力も一級品。同業者として脱帽、と同時に嫉妬した」との推薦コメントを寄せている。

 映画『マミー』は、8月3日より全国順次公開。