4月2日、朝のバラエティー番組『ラヴィット!』(TBS系/毎週月~金曜8時)の生放送中に、同番組内の企画から生まれたHIPHOPグループ《赤坂サイファー》と、映画『サンダーボルツ*』(ディズニープラスにて見放題独占配信中)のスペシャルタッグ企画がサプライズ発表された。2023年6月の赤坂サイファー結成以来最もビッグなコラボレーションに、生放送中ながらもスタジオは騒然。

さらに日本を代表するラッパーで、大のマーベルファンとしても名高いZeebraがスタジオに生出演し、自身がプロデューサーを務めたインスパイアソングとミュージックビデオの制作に加え、番組内での楽曲生披露を予告した。今回の企画に参加する、見取り図、アルコ&ピース、ロングコートダディ、令和ロマン・松井ケムリの7人は総立ちで稲妻級の電撃発表に驚がく。お披露目まで1ヵ月もない中、急ピッチで楽曲制作が進められ、ついに4月30日に「NOT GIVING UP.」が生披露された。本楽曲のトラックを手掛けたのはDJ WATARAI。リリックは、ZeebraはじめKEN THE 390、DOTAMA、TKda黒ぶちと豪華ラッパー陣が担当している。そして、話題となった同楽曲のMVがTBS公式YouTubeチャンネルにて公開。今回クランクイン!は、Zeebraと見取り図を直撃。生パフォーマンスの際は、まさかのハプニングに見舞われ、「なんとかなったね(笑)」とZeebraから総括されたが、そんな生放送の裏側や楽曲制作、三人に共通するマーベル愛を聞いた。

【写真】バチバチにカッコいい Zeebra&見取り図の撮り下ろしショット

■歌詞が出るはずの画面に“鳥”

――以前披露された生放送でのパフォーマンスは、プロンプターに歌詞ではなく鳥の写真が出続けるという、まさかのハプニングに見舞われました。

Zeebra:すごくヒヤヒヤしながら見ていました(笑)。

盛山晋太郎(以下、盛山):絶対そうですよね…。

Zeebra:僕はプロンプターが出ていないことを知らずに見ていたので、後から知って「そういうことだったのか!」と。
僕も普段プロンプターを貸してもらうことがあるんですけど、歌詞の流れるスピードが遅くて「もうちょっと早く出して!」って慌てることがありますが、そういう時は同じ風にピロピロになってしまいます(笑)。

盛山:いやいや、絶対僕らと同じわけない(笑)。でも僕が1番仕上がってましたよね、Zeebraさん。ほか全員、歌詞飛びまくっていたので、なんならフォローする方に回っていました。

Zeebra:うん、でもサビだからね。分量が少なくて分かりやすいってのがサビだから。サビ失敗しちゃったら、もう話になんないから(笑)。

盛山:Zeebraさん!?

一同:(爆笑)。

Zeebra:でも、まぁちゃんとやってくれてよかったですね。

盛山:ありがとうございます。楽しくやらせてもらいました。

リリー:僕は、唯一ですけど全部間違えずにできました。


Zeebra:お、そうかも!

リリー:ちゃんと覚えてきましたから、8行全部。ノーミスでできました!

盛山:ハードルが低すぎひん!?

――(笑)。スペシャルタッグ発表からパフォーマンスまで1ヵ月もなかったわけですが、練習はどのように?

■本番まで1回しか集まれなかった

盛山:基本的には個人練習ですね。

リリー:本番まで1回しか集まっていなくて。

盛山:どうなるんだろうって自分たちも思っていましたけど、聞かせてもらった曲がカッコよすぎて、これをダサく披露するわけにはいかないと思ったんですけど、ああなりました(苦笑)。

Zeebra:あはははは(笑)。

盛山:『ラヴィット!』の制作さんからも「歌詞はカメラ目線で出るんで」って言われてたから安心してたとこもあります。歌詞が出なかったら、みんなもうちょっと…っていうか何言っても僕らが悪いな…。

――そんな中で完璧に覚えてこられたリリーさんはさすがですね。

リリー:いい意味でスッと入ってくる楽曲だったんですよね。僕たち世代が聞いていたキングギドラの「平成維新 feat.童子-T & UZI」がサビに引用されていたのもすごく興奮しましたし、僕たち世代のビートだったんで、めっちゃうれしかったです。

Zeebra:これぐらいのテンポ感だと、パッと聞いた時にカッコよく聞こえるようにできるんです。
音楽キャリアがない人でも、まずはあれくらいの速さでラップするのがいいよねということから考えました。それから『サンダーボルツ*』のタイトル通り、雷感を少し出しまして、サビは7人で連呼してワイワイとした雰囲気が作れれば、みたいな感じで曲が出来上がっていきましたね。

盛山:僕、高校の時にコーンロウにしたくらいZeebraさんに憧れていたんですけど、そんなZeebraさんがデモ音源で担当されていたパートを振り分けてもらったのは、興奮しましたね。個人的にもZeebraさんの曲を歌いたくなって、さっきオフレコで「THE FIRST TAKE」風にカバー動画を撮っていいか許可取りしました(笑)。

Zeebra:今回、KEN THE 390とDOTAMAとTKda黒ぶちがバースを書いてくれて、僕がサビを書きましょうってなったんだけど、僕ってちょいちょい「声がチート」とかってよく言われるんですよ。確かにギフトだと思っているし、自信がある声なんだけど、僕の声で出来上がっても、盛山くんが歌ってどんな風になるんだろうっていうのは、ちょっとだけ心配だった。でも全然バッチリだったね。

盛山:すごい…うれしい…。『ラヴィット!』の過去回でもZeebraさんのパートを歌ったことがあるんですよ。似てたよな?

リリー:確かに、声の系統が近いものはありますよね。

盛山:高校の時からずっとモノマネしてたんで、似てる似てない関係なく、やっとZeebraさんの前で歌えたことが純粋にうれしかったですね。

――運命的なコラボレーションだったんですね。


盛山:赤いブリンブリンで結ばれてたんかもしれない。

リリー:糸や、糸(笑)。

――憧れの人の前でのレコーディングはどうでしたか?

リリー:スムーズに行ったんですけど、やっぱり緊張感は半端なかったですね。Zeebraさんにお会いしてから30秒後にやってみようかって言われて、震えながらレコーディングしました。でもZeebraさんがくださったアドバイス通りにやったらスムーズに行きました。

Zeebra:僕も本当にいろんなレコーディングをやったし、ディレクションもプロデュースもたくさんしてきたんだけど、あんまり細かいことを言い過ぎると、わけ分かんなくなっちゃうでしょ。だからできるだけ、ドツボにはまらないようなアドバイスの仕方をちょっと意識しました。あと、時間をかけすぎるとどんどん正解が分かんなくなってきたりもするので、集中力が切れないように、一人1時間取っていたレコーディング時間を2~30分でぎゅっと短くしました。

――chelmicoさんが手掛けたセカンドシングル『Say What?』の際はレクチャーがあったと聞いたのですが、今回のレコーディングはこれまでの経験が生きましたか?

リリー:またちょっと別物って感じがしましたね。

Zeebra:曲調も違うし、ラップを書く人が違うと乗せ方も全然違うんですよ。

盛山:Zeebraさんってレコーディングの時に、すごく褒めてくださるんです。正直、気持ちよくなるじゃないですか。
今回みんなバラバラで撮っていたので、違う日に集まった時に「ジブさんに褒めてもらった」って報告したんですけど、よく聞いたら、みんな褒められてました(笑)。Zeebraさん、モチベーション上げてくださってたんや~と思って、2~3日恥ずかしかったです(笑)。

リリー:褒め上手やったなぁ。

――楽曲生披露に向けた練習はいつ頃行われたんですか?

■平子さんを入れた「フルメンバーでやりたい」

盛山:本番の前日です。しかもロングコートダディとアルコ&ピースの平子さんがいないっていうスカスカな状態で(笑)。おのおの家で聞き込み&歌い込みをしてきたんですけど、6人での集合はあの日が初めてでしたね。ロングコートダディの兎の後に僕のパートのサビが来るんですけど、兎とやるのが初めてなんで「どけや、前行くから」って思いました。

ただ悲しいのは僕ら、これで最後なんですかねぇ。もう「NOT GIVING UP.」を人前で歌うことはないんでしょうか。いやですよ、あれで終わるの。平子さん、いなかったですし。フルメンバーでやりたいです…。


リリー:逆にこれからも歌っていいんですかね?

――ぜひ偉い方、機会を…。ミュージックビデオも先日公開されたばかりです。

盛山:マジでミュージックビデオも含めて音楽が最高なんですよ、トラックもリリックも。全員の人生がギュッと詰まったような、ちょっと恥ずかしかったり、負い目を感じるようなことも、全部さらしてリリックにしてもらっているんで、うそなしです。『見取り図ディスカバリーチャンネル』の「ディスカバー」とか、アルピーさんのラジオの『アルコ&ピース D.C.GARAGE』の「ガレージ」とかもリリックに入っていて、めっちゃ細かいんですよ。

リリー:ラッパーたちは素人ですけど、プロデューサーもビートメーカーもリリッカーもヒップホップのプロなんで、出来は間違いないです。

盛山:演者がキモいだけ。

リリー:(笑)。それ以外は本当にレジェンド級です。

――Zeebraさんは以前、ヒップホップ・カルチャーとマーベルに共通点があるとおっしゃっていました。

Zeebra:番組内でも言ったんですけど、マーベル・シネマティック・ユニバースってアベンジャーズを中心に世界がつながっているじゃないですか。例えばラッパーたちもコラボをする文化があって、フィーチャリングとかバリバリ多いし。そういう誰が出てくるのかっていう楽しさは共通してるんじゃないかなと思います。あと最近はマーベル作品がアンチヒーローやダークヒーローを中心に置いてきてるじゃないですか。ちょっと前は正統派のキャプテン・アメリカみたいなのが真ん中にいたけれども、今は全然違うヒーローが出てきている。そういう意味では、われわれって完全に正統派ヒーローではないので、親近感を感じています。

――マーベル映画を振り返っても、初期作品はヒップホップの楽曲が多くは使われていませんでした。ケンドリック・ラマーがサウンドトラックを全面プロデュースした『ブラックパンサー』は大きなターニングポイントでしたね。

Zeebra:そうですね。われわれもそこから色々マーベル作品のお仕事をさせていただくようになりました。やっぱりマーベル作品ってヒップホップに限らず選曲が素晴らしいんですよ。「ここでこれかい」みたいな。僕もヒップホップだけを聞いているわけじゃないので、毎回楽しみにしています。とてもいい休符をくれるんですよ。映画の中で、80年代とかの超懐かしいロックがかかったりするんですけど、タイミングがすごくいいなっていつも思います。

――見取り図のお二人はマーベルのどこに魅力を感じますか? 『ソー:ラブ&サンダー』では一言声優、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』ではラップで作品を紹介するなど、お笑い界屈指のマーベル好きとして活躍されてきました。

リリー:Zeebraさんも言っていたんですけど、こことここが合わさったら、こんな技が出るのか! っていう少年心をくすぐるところですかね。ラッパー同士のフィーチャリングも、「この人とこの人なんだ」「どんな曲かな」ってワクワクすると思うんですけど、マーベル作品にもこの“ワクワク感”を感じるのが僕は好きです。

盛山:仮に全部見ていなくても単体でも楽しめる要素もあるかなと思います。

Zeebra:ほかの作品を見たくなる入口もいっぱいあるよね。

盛山:そうなんですよ。何周もしたくなる。

Zeebra:僕は『サンダーボルツ*』を見させてもらったんだけど、もうヤバいよ。「あ~“あれ”見たい~~!」ってなる。

盛山&リリー:え~!

Zeebra:一言で言ったら「始まりました」って感じです。『エンドゲーム』の指パッチンとかがあって、アベンジャーズってこれからどうなっていくのかな? って感じがみんなしていたと思うんですよ。もちろん毎作品楽しみにしているんですけど、ここから先のマーベル作品も本当に楽しみです。

――サンダーボルツのメンバーでは誰が好きでしたか?

Zeebra:やっぱり今回のメンバーの中ではウィンター・ソルジャー/バッキーが一番前面に出ていたので、感情移入はしやすかったですね。でももう壮大なフリの回収があって、他の戦いでもスゴかったヤツが前に出てくるわけだから、オペラ感がすごかったですね。

もうなんなら劇場予告から全部がセットです。『アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)』(2026年12月18日日米同時公開)のティザー映像が流れたのですが、これだけは皆さんにお願いしたい。出演者の名前が書かれたディレクターチェアが一つずつ映された後に、ロバート・ダウニー・Jrが出てきますが、お願いだから拍手してください。僕、一人で拍手しました(笑)。帰ってきた~! って。

リリー:え!? 分かんない。アイアンマン戻ってくるんですか!?

Zeebra:ロバート・ダウニー・Jrがドクター・ドゥームという最強ヴィランになって戻ってくるんです。

リリー:全く違う役なんですか!? とりあえず『サンダーボルツ*』見ます!

(取材・文:阿部桜子 写真:小川遼)

 映画『サンダーボルツ*』は、「ディズニープラス」にて見放題独占配信中。

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