2023年8月18日にデビューし、翌年にはグループ初の単独公演を成功させたTOBEの7人組グループ「IMP.(アイエムピー)」。今年は初のライブツアーや主演舞台『IMPACT』の上演など、目覚ましい飛躍を遂げている。
その中心に立つ佐藤新が、映画『青春ゲシュタルト崩壊』で初の映画主演を飾る。渡邉美穂とダブル主演を務める本作は、自分の顔が認識できなくなる「青年期失顔症」という架空の症状を軸に、10代の揺れ動く感情を繊細に描いた青春群像劇だ。佐藤が演じるのは、他人の“痛み”に敏感で、誰よりもやさしく寄り添おうとする高校2年生の朝比奈聖。インタビューでは、演じた役への思いや初主演への意気込み、そしてグループに懸ける思いを語ってくれた。その語り口からは、センターとしての責任感と、まっすぐな芯の強さが伝わってきた。
【写真】佐藤新、透き通るように美しい 撮り下ろしフォト(12点)
■金髪に縁! 原作は「ものすごく刺さりました」 役への深い共感を明かす
佐藤演じる聖は、金髪でぶっきらぼう、自分の意見をズバッと言う性格から教師に目をつけられるような存在だが、その内面には、友達思いで繊細なやさしさが宿っている。周囲から距離を置かれがちな彼が、ある日「青年期失顔症」に悩まされる間宮朝葉(渡邉美穂)と出会い、少しずつ心を通わせていく。やがて、聖自身もまた、中学時代のある出来事をきっかけに抱え続けてきた“痛み”があることがわかり――。
もともと佐藤の名が広く知られるきっかけとなった、デビュー前に出演したドラマで演じた役も金髪だったが、今回の主演オファーもまた、金髪姿の佐藤を見たプロデューサーのひらめきからだったという。
「うれしかったですね。自分の俳優としての活動が知られたのも金髪の役だったので、なんだか縁を感じました。今回もまた金髪で、不思議な懐かしさがありました」とにっこり。
原作の丸井とまとによる小説は、「ものすごく刺さった」と語る。「久しぶりにこんなにリアルな物語を読んだなと。原作の聖はもう少し悪ガキっぽい印象もあるんですが、台本では語尾の言い回しなどにやさしさがにじみ出ていて。映画用にナチュラルな世界観にうまく落とし込まれていると感じました。一方で、原作らしい不器用なやさしさややんちゃっぽさも出したいなと思って演じました。原作を読んだ方には、納得してもらえるお芝居ができているといいなと思っているんですが、公開してみないとわからないですね。このインタビュー時点ではめっちゃそわそわしています(笑)」と話す。
聖というキャラクターには、自身の学生時代と重なる部分も多かったという。「『中身、俺じゃん』って思う瞬間が何度もありました。変に芯が強いのに、友達関係で悩んで沈んじゃう。私生活にも支障が出るくらい思い悩んで、そこから金髪にするあたりとか、過去の自分となんか似ているなって」と役にすんなりと入り込めたとしつつ、自身の10代に思いを馳せる。
「中学時代は剣道部で、自分では一生懸命やっているのに、なぜか別の捉え方をされて、誤解されたりして、金髪にはしなかったけど、『もう辞めてやる!』みたいな気持ちになったことはありました。
そんな風に人間関係がねじれてしまい、本当に苦しくなった時もありましたが、今はそれも含めて、すごい青春だったなって思います」。小学1年生から続けた剣道は、中学でも3年間やり切った。「周りも本気で高いところを目指してやっていたからこそ、ぶつかるところもいっぱいありました。だから、本当に朝葉と同じような悩みを抱えたりしていて」とキャラクターへの深い共感を示す。
また、高校時代は「一匹狼」タイプだったという佐藤。「孤立していたわけではないんですけど、一人の方が居心地がよかったんですよね。それを面白がって寄ってきてくれる友達もいて、その子とは仲良くしていたので、それはそれでグループだったのかもしれませんが、わりと一人でいることが多くて。聖も浮いていて、クラスメイトとしゃべってる描写が一切ない。そういう似た部分もあって、余計に朝比奈聖は自分の中にすっと入ってきたと思います」。
■役作りではメンバーからアドバイスも
元水泳部の高校生という設定から、劇中では水着姿も披露。役に向けて、身体作りにも取り組んだ。「鍛えました!」とパッと表情を明るくすると、「痩せていたので、アスリートに見える体を作るために筋トレをがんばりました。
メンバーの椿(泰我)くんが筋トレに詳しいので、どういうメニューで腕立て伏せをやっているとかいろいろ聞きながら、参考にして、リハーサルの合間もやっていましたね。自分的には、まあまあ間に合ったかな(笑)」とはにかむ。
泳ぎに関しても、「小学生の時にスイミングでバタフライまで習っていたので泳ぐのは得意」と言いつつ、今回はプロからフォームの指導を受け、選手としてのよりリアルな泳ぎを目指した。「水泳、筋トレ、金髪…ここまで役にいろいろ取り組んだのは初めて。本当にやりがいのある役でした」。
役への献身を怠らない佐藤だが、現場ではいっぱいいっぱいになったとも明かす。「ここまで長尺で、あんなに大きなカメラを向けていただいて、しかも自分がメインでお芝居するというのは初めてだったので、経験が足りない分、少しでも役に食らいつくしかないと思って。役のバックボーンを自分なりに考えて臨むようにしていました」。そんな中、ダブル主演の渡邉は頼りになる存在だった。「渡邉さんはお芝居もすばらしいですし、2回目の主演で落ち着いていて、広い視野で周りを見られていて。現場の雰囲気をいつも明るくしてくださり、本当に助かりました」。
「主演としてお芝居をしたこと以外は、座長らしいことは何もできていません」と謙遜する佐藤だが、真剣に芝居と向き合う姿こそが、現場を引っ張ったことは間違いないだろう。
佐藤自身、「その時の自分の精一杯は間違いなく出せたと思うし、悔いはないです」と胸を張った。
■不動のセンターとしての覚悟 IMP.を知ってもらうために俳優業は「必要不可欠」
アーティストとしても活動する佐藤。今回の撮り下ろしカットでは、キラキラしたまぶしい姿を見せてくれたが、「明るい照明での撮影は久しぶりだったので、うれしかったです」と笑顔を見せ、「最近はスタイリッシュでダークなトーンが多かったので、新鮮でした」と語る。デビューから2年足らずで、グループとしてはシングルとアルバムの発売、ライブや主演舞台の上演、さらにブランドアンバサダーに決まるなど、目まぐるしいペースでの活動展開はファンを驚かせている。
こうしたグループ活動も並行する中での主演抜てきに、メンバーからは「おめでとう」「頼んだぞ」と言葉をかけられたという。「いつかやりたいと思ってはいましたが、まさかデビュー1年で主演を務めるとは…。うれしいけど、心臓はバクバクでした」と振り返る。
グループで行っているYouTubeでは、佐藤が見せる天然な一面も人気を博している。忘れ物を気にかけられたり、身の回りのことをメンバーに助けられたりと、仲の良さが垣間見えるエピソードがほほえましいが、こと仕事に関しては、メンバーから心配されることはないというから、頼もしいかぎりだ。
グループを離れての演技の現場では、緊張や戸惑いもあったと語る佐藤だが、「主演として不安な気持ちは見せないように心がけていました」ときっぱり。「僕、もともとアイドルが大好きで、ステージで視線を一身に浴びながらキラキラ歌って踊ることにすごく憧れていたんです。だから正直、お芝居のことは全然考えたことがありませんでした。
なので、自分の中では『アーティストが本業』という意識は今も変わっていません。でも、IMP.というグループ名をもっとたくさんの方に知っていただくためには、俳優としてのお仕事も必要不可欠だなと感じています。パフォーマンスにも通じる部分がありますし、何よりプロとして作品に呼んでいただいている以上、俳優の方々の中に混ざっても恥ずかしくないように、しっかりスキルも熱量も持って取り組まなきゃいけないと思っています」。
だからこそ、今回の作品にも強い思い入れを持って挑んだ。「やるからには誠意を持って、本気で向き合っていきたい。音楽もお芝居も、どちらも僕にとっては大切なものです。今回『もっとお芝居がうまくなりたい』と強く思いました。いろんな意味で思い出深い作品になりましたし、公開前も公開後も、ずっとたくさんの愛情を注いでいきたいですね」と、熱いまなざしで語る。
最後に、改めて本作に込めたメッセージを聞いた。「“今ここにいるのが朝葉なんだから”と聖が語るシーンがあるんですが、どんな自分もそれが自分で、ちゃんと素敵なんだよというメッセージは届けたいです。周りに合わせすぎて苦しくなることもあるけど、周りに合わせられるってすばらしいことで、“自分らしくいられない”“弱い人間だ”と自分を卑下する必要は全くない。自分の考えを持って人に寄り添える聖のように、それぞれにしかない魅力がある。
だから、どんな選択でも逃げじゃなく、もっと楽観的に自分のことを見て愛してもらえるヒントになる作品になってたらいいなと思っています」。
グループのセンターとして、主演俳優として。自分の置かれた立場を自覚し、努力を惜しまず、芯の強さで目の前の仕事と向き合う――その真っすぐな姿勢は、表現者・佐藤新の未来を、さらに大きく切り拓いていくだろう。
(取材・文:川辺想子 写真:山田健史)
映画『青春ゲシュタルト崩壊』は、6月13日より全国公開。
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