現在公開中の映画『バレリーナ:The World of John Wick』。壮絶アクションが魅力の『ジョン・ウィック』シリーズのスピンオフで、ジョン顔負けの暗殺者として敵を次々倒していくヒロイン、イヴ・マカロをアナ・デ・アルマスが演じ、新たな「強いヒロイン」として称賛を浴びている。

今回は、イヴのような海外映画の代表的な「強いヒロイン」を、1970年代から2020年代にかけて年代ごとにピックアップ!

【写真】ハリウッド「強いヒロイン」図鑑【1970s~2020s】(15枚)

【1970年代】リプリー(シガニー・ウィーバー)

 SF映画のクラシック『エイリアン』シリーズ。リドリー・スコット監督がのちに撮る『ブレードランナー』(1982)とともに、それまでの「明るく楽しい未来像」のオルタナティブ「暗くて救いのない未来像」を描いた本作は、H・R・ギーガーの革新的なクリーチャーデザインでも映画史に足跡を残している。そんな歴史的な作品で記念すべき「戦うヒロイン」が生まれた。そう、リプリー(シガニー・ウィーバー)だ。

 ただ、「強いヒロイン」を期待して『エイリアン』を鑑賞した観客は、少々拍子抜けするかもしれない。第1作のリプリーは、正義感こそ強いものの、自己主張はそこまでせず、エイリアンの強襲を受けてからも、その存在感は薄い。初見では途中まで主人公とすら感じられないかもしれない。第1作での彼女は、どちらかと言えばサバイバー(生存者)という側面が強く、エイリアンと本格的に戦うシーンはほとんどない。彼女の「強いヒロイン」像を決定づけたのは、パワードスーツでクイーンエイリアンと取っ組み合いを繰り広げる『エイリアン2』以降と言える。ただ、そんなリプリーの萌芽を感じさせる、記念すべき1作目である。

【1980年代】サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)

 そんなリドリー・スコットからバトンを受けとり『エイリアン2』(1986)を撮ったジェームズ・キャメロン。彼が同じ80年代に生み出したのが、アーノルド・シュワルツェネッガーの代名詞『ターミネーター』だ。
『エイリアン』シリーズに並び称されるこのSFシリーズでも、映画史に残る「強いヒロイン」、リンダ・ハミルトン演じるサラ・コナーが誕生した。

 近未来に人類と発達したAIの戦争がぼっ発。劣勢に立たされた人類軍の指導者ジョン・コナーの母親となるサラを、ジョンが生まれる前に殺害するため、現代にアンドロイドT-800(シュワちゃん)が送り込まれる。そんな無敵のT-800からサラを守るため、人類軍からも軍曹カイルが現代に送り込まれる。興味深いのは、『エイリアン』と同じくこちらも第1作目は、サラ・コナーが一介のウエイトレスでしかなく、当初はカイルに守られるか弱きヒロインに過ぎないことだ。ところが、カイルの死を乗り越えてジョンを出産した続編『ターミネーター2』(1991)では、息子を守り抜くたくましい女性に覚せい。さらに、28年ぶりにリンダがサラを演じた『ターミネーター: ニュー・フェイト』(2019)では、鬼軍曹のような貫禄を見せていた。

【1990年代】トリニティー(キャリー=アン・モス)

 リプリー、サラ・コナーと映画史を飾る存在が10年ごとに出てきた「強いヒロイン」シーンだが、一旦ややトーンダウンしてしまうのが90年代だ。めぼしいところでいくと、のちに『レオン』を撮るリュック・ベッソンが女性暗殺者を描いた『ニキータ』(1990)でのニキータ(アンヌ・パリロー)や、デミ・ムーアが男性隊員だらけの米海軍特殊部隊に飛び込むヒロインを演じた『G.I.ジェーン』(1997)などがあるが、どちらも興行的に大成功したとは言えず、また「強いヒロイン」像を決定づけたと言えない。

 そんな中で、1人気を吐いたと言えるのが、『マトリックス』(1999)に登場するトリニティー(キャリー=アン・モス)だ。トリニティーは主人公でないため「強い”ヒロイン”」とは言い難いが、冒頭で描かれるワイヤーアクションによる超人的な動きで男性警官の集団を圧倒するシーンは、作品の超現実的な世界観に観客をぐっと引き込み、鮮烈なイメージを残した。

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