スピッツの名曲を原案にしたラブストーリー『楓』で、ダブル主演を果たした福士蒼汰と福原遥。福士は、双子の弟である恵を失い、弟のふりをする兄・涼という1人2役に挑み、福原は恵の恋人である亜子を演じ、切なくも美しい恋をスクリーンに映し出した。

物語の鍵を握る星空をはじめ、雄大な自然を体感したニュージーランドでの撮影は、「最高の経験になった」という2人。名曲への解釈や、お互いに安心感を覚えたという共演の感想など、温かな笑顔いっぱいに語り合った。

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■聴けば聴くほど味わいが増す、楽曲「楓」の魅力

――発表から27年が経った今も、幅広い世代から愛され続けているスピッツの名曲を原案とした映画が完成しました。お二人にとって「楓」は、どのような楽曲でしたか?

福士蒼汰(以下、福士):「楓」はもともと大好きで、カラオケでも歌わせていただいていた曲です。スピッツさんの曲は、「人によって捉え方が違うだろうな」と感じるような歌詞や世界観が込められているものが多いように感じます。本作においても脚本を読んだり、お芝居をさせていただきながら、「この歌詞は、台本に描かれているこの部分に当てはまるかもしれない」と読み解いていくのがとても楽しかったです。

 例えば「かわるがわるのぞいた穴から」という歌詞も、双子の涼と恵がカメラのレンズを覗いた時に見えている景色が違うということなのか、亜子のことを言っているのか…といろいろと考えてみたりして。「楓」という曲の受け取り方が、自分の中でもまたひとつ増えたような気がしています。

福原遥(以下、福原):「楓」は私が生まれた年にリリースされた曲で、深いご縁を感じています。これまでもたくさん聴いていましたし、みんなで歌ったりもしていました。福士さんがおっしゃるように、スピッツさんの曲は、歳を重ねて聴くとまた受け取るものが違ったり、その時その時で違った感じ方ができるという魅力がありますが、亜子として脚本を読んでから「楓」を聴き直してみると、「亜子の心情と重なるな」と感じるところもたくさんあって。「さよなら」という歌詞を含め、亜子として「わかるな」という感情がたくさん散りばめられていました。


■ニュージーランドでは驚きの“ノーメイク”撮影も

――本作は、事故で双子の弟・恵を失った兄・涼が、ショックで混乱する弟の恋人・亜子を悲しませまいと、恵のふりをしてしまうところから始まる物語です。福士さん演じる涼からは優しさや思いやりが、福原さん演じる亜子からは一途さがにじみでていました。お互いの目からご覧になっても、この役を演じるのにぴったりだなと感じることはありましたか。

福士:福原さんは、亜子役にぴったりだと思います。まっすぐで健気で、相手を思いやるからこそ、一歩引いてしまうようなところがあったり。そういった優しさは、福原さんにも通じる部分があるなと感じています。福原さんはもし傷ついたとしても、それを自分の中で受け止めて、みんなの前では笑顔でいようと心がけたりするんじゃないかなと思います。あと朗らかな感じも、亜子と重なります。福原さんは、現場では待ち時間に編み物をずっとしていたんです。おばあちゃんのような、温かな包容力を感じました(笑)。

福原:おばあちゃん(笑)! そうなんです。ニュージーランドでは現地で毛糸を買って、編み物をしていました。
福士さんは、恵のようなエネルギーがある方だなと感じます。いつも誰よりも明るくそこにいてくださって、現場を引っ張ってくれて。みんながついていきたいと思えるような存在でした。そして、涼のような柔らかさも持っていらっしゃる。私が役作りなどで悩んでいると、あまりガチガチに決めすぎないで、いろいろなやり方を試してみようとアドバイスをくださったりと、すごく助けていただきました。涼と恵、どちらの要素も持っている方だなと思います。

福士:お互いに、気楽に話せたかもしれないね。

――圧巻の星空をはじめニュージーランドの雄大な自然を映し出している点も、本作の大きな見どころです。ニュージーランドでの撮影はいかがでしたか?

福士:山も空もどこまでも続いているようで、日本では見られないような景色をたくさん目にすることができました。ニュージーランドに着いた初日は、天気がよくてものすごくきれいに景色が見えたよね。

福原:そうなんですよね。その後は「天気が崩れがち」という予報で…。


福士:本来、着いた初日は撮影をする予定ではなかったんですが、天気がこれから悪くなるということで、ニュージーランドに着くなり「今日、これから撮ろう!」という話になって(笑)。

福原:着くなり、「着替えてください」とロケバスに乗って移動することになって(笑)! 驚きましたね。

福士:二人ともノーメイクのまま、撮りました(笑)。引きのカットなので、そのまま行きましょう!となったんだよね。

福原:「よーい、スタート!」って(笑)。でもすごくきれいな景色で、その日に撮れてよかったなと思いました。

福士:そうだよね! そうやって移動するのも楽しく、その日しか撮れないような景色を捉えることができてすごくうれしかったです。

■充実の2025年を回顧 「一歩一歩、夢に向かって前進」(福士)、「もっと成長したい」(福原)

――行定勲監督のもと、福士さんが久しぶりに恋愛映画に挑んだ本作。これまでも数々のラブストーリーの名作を送り出してきたお二人にとって、人々の心を掴むラブストーリーに欠かせないものとはどのようなものだと感じていますか。

福士:“希望”と“共感性”かなと思います。「こんなことを経験してみたい」と思うような希望と、「この気持ちわかる!」「こういう瞬間って、私もドキドキする」という共感は、きっとラブストーリーに欠かせないものなのだろうと思います。本作には、それぞれの運命を辿る登場人物たちに「こうなってほしい」という希望が込められていると思います。
それと同時に、相手のことを想うあまり隠し事をしてしまったり、嘘をついてしまったりという行動も描かれていて、そういった優しさには「自分もやってしまうかもしれない」と感じる人も多いんじゃないかなと思います。

福原:大切な人のために一生懸命にがむしゃらになって進んでいる姿や、相手を一途に思っている純粋さが見えることは、「愛って本当にすばらしい」と感じるポイントになるのかもしれません。本作では、亜子、涼、恵の誰もが相手を想い、愛しているからこそ、苦しくなったり、切なくなったりもする。また石井杏奈ちゃんが演じた日和も、涼に一途な想いを寄せていて、そういったピュアな姿を目にすると「頑張れ!」と応援したくなります。

――早くも年末となりました。2025年は、どのような1年になりましたか?

福士:大好きなラブストーリーに携わり、映画『楓』で今年を締めくくることができてとてもうれしいです。僕は昨年に続き、ほとんど日本にいなかった1年になりました。そういった意味では、一歩一歩、自分の夢に向かって進んでいるなという実感があります。

――海外へと視野を広げることで、変化したことはありますか。

福士:いろいろな変化がありました。あらゆる国の俳優さんと出会うことで、自分の未熟さと同時に、日本人俳優の強みを感じることもあります。僕は、穴埋めが好きなタイプで。
自分にとって「ここは足りないな」と感じると、なんとかクリアしようともがき、そうすることがステップアップの糧となっています。すべてを完璧にすることはできないので、オール4を目指すようにしながら、どんなことでも任せてもらえるような俳優になりたいです。

福原:私は、プライベートも充実した1年を過ごせたと思っています。お仕事でアウトプットを続けていると、なかなか自分の中身が埋まらないという悩みが出てきますが、今年はプライベートで海外に行ったり、いろいろな経験をすることができました。これから自分はどんなことをやりたいのかと、改めて見つめ直す時間にもなったように思います。またお仕事では、やったことのないような役柄にも挑戦することができました。その分、力不足を感じることもあり、もっと成長したいなと感じた1年にもなりました。

(取材・文:成田おり枝/写真:上野留加)

 映画『楓』は、12月19日より全国公開。

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