2020年のスペシャルドラマ放送以来、警察学校を舞台に「どんな些細な嘘も見抜く」鬼教官・風間公親と生徒たちの真剣勝負を描いてきた「教場」シリーズ。2026年、ついにその集大成となる2部作が公開される。
【写真】目線をそらした姿もかっこいい! 木村拓哉、撮り下ろしフォト(3枚)
■過去シリーズと「比べる」のは「甘え」――初めて芽生えた感覚
――人気シリーズとなった「教場」ですが、改めてその魅力、面白さはどこにあると感じますか。
木村拓哉(以下、木村:):作る面白さはやっぱり「異質」であることですね。今のご時世とは逆行しているような内容でもありますし。チープな例えかもしれないですけど、激辛好きの人たちが楽しむエンターテイメントというか、“味”は激辛に近いのかなって。「本当によくみんなそれ、最後まで食べきるね」っていう思いに近い気がします(笑)。
――その“味”は現場でどのように作られていくのでしょうか。
木村:実際に味を作るのは現場ですね。「これぐらいかな」という分量で、現場で実際にやってみて、共演者の方があっての辛さなので、最終的には現場でセッションして味が決まっていく形です。
――今回は、綱啓永さん、齊藤京子さん、倉悠貴さん、佐藤勝利さん、猪狩蒼弥さん、中村蒼さんなどが「205期生」の教え子たちとして登場します。俳優さんたちとのお芝居で新鮮に感じられたことはありますか。
木村:第1作からやらせていただいているという事実がある中で、自分含め現場のスタッフ、もちろん監督も、つい「比べる」という甘えに走りたくなる瞬間があるんです。「前の奴らはもっと練習してたよ」などと言いたくなる。でも今回、それが「甘え」だと気づいたんです。
――過去と比べるのは、制作・キャスト含めた常連メンバーの「甘え」だと?
木村:そうですね。だって、今この場で一緒に向き合ってくれている、一緒にセッションしている、一緒に構築している人たちが全ての答えであって。今一緒にやってくれている人が何をどうするか、それがもし監督の求めるものと違うならば、その場で「もっとこうして」などと具体的に伝えるべきなんだろうと思いました。その感覚になったのは今回が初めてかな。
――今回の撮影で特に印象に残っているのはどんなことですか。
木村:毎シーズン、同じ制服を着て同じ空間にいるんだけど、それぞれの向き合い方があるんだな、と。これもおじさん・おばさんの甘えだと思うけど、「○○世代」と一言で形容しがちじゃないですか。
――ナビゲートの仕方はどんな風に変わったのでしょう。
木村:たとえば「止まれ」という標識があると、みんな規則として止まってくれる。でも、表現としては「『止まれ』でいいの? 『止まって』の方がいいの? 『止まってください』の方がいいの?」と、今の時代では一瞬、立ち止まって考えなきゃいけない。
――「今のご時世と逆行している」とおっしゃっていたのは、そうした「教場」という特殊な世界の中での人間関係や指導法などですね。
木村:全部アウトだよねって、よくスタッフと話しますよ(笑)。この世界観になじむまでは日常生活との大きな開きが気になる人もいるだろうけど、そこをゆっくりねじ伏せて違和感をなくしていくのが僕らの仕事ですよね。
■木村拓哉にとっての“教官”の存在――今も答えを探し続ける、山田洋次監督の言葉
――今の時代との違いがある一方で、視聴者にはすでに「教場」という世界観も、風間教官の人柄も浸透しています。最初は風間教官に何を考えているかわからない怖さ・不気味さも感じましたが、今は「実は優しく温かい人」と視聴者は知っています。そうした中で演じる難しさはありますか。
木村:演じる側としては、やりやすい・やりにくいは別にないですよ。毎回脚本の中ではいろんなタイミングでいろんなトラップが仕掛けられているので、そこにワクワクしてほしいし、風間教官の見え方というのも、そこまでセルフプロデュース的なことはしていないです。むしろ、セリフを「これ、どうする? 言わない? 言った方がいい?」という判断は、監督に委ねています。
――「教場」では、毎回さまざまな試練を乗り越えた教え子たちが卒業していきます。卒業式のシーンというのは、見送る側として感情の昂りがあるものですか。
木村:卒業式のシーンは、メインキャストの他に大勢の方が参加して撮影するので、まずはそれが大変で。「今からこの端から端まで、みなさん全員で一つの瞬間を作ります」というシーンでは、監督の求める画があって。でも、そこに集まっているのは、AIが生成したものでも何でもなく、本当に今その場にいる生身の人たちなんですよね。一人が一声を発した瞬間に、全員が全く同じタイミングで同じ姿勢を作るんですけど、「やってみよう」から始まり、テスト、本番の「よーい、スタート!」。そこで監督が「違うよ」と声がかかると、「これ、どう伝えればいいだろう」という緊張感が走ります。そんな中、「教場」で向き合ってきた約30名は他のみんなのお手本になってくれている。卒業式は、そんな彼らがいてくれることが誇らしいと感じる瞬間ですね。
――実際の学校の卒業式でよくある光景のように、「教場」でも卒業式の後、撮影現場で「お世話になりました」と教え子が言いに来るような交流はあるんですか。
木村:そうですね。今回も、自分自身がクランクアップする瞬間に、役衣装でもなく私服の状態の何人かが急に現れて、花束を渡してくれて。それは本当にありがたかったですね。
――木村さん自身にとって、「教官」のような指導者の存在はいらっしゃいましたか。
木村: もちろん。例えば僕が『若者のすべて』(フジテレビ/1994年)で、まだ俳優としてなんとなく演じていたとき、「いや、そんなんじゃOK出さねえよ」と言ったのが、この「教場」シリーズの中江功監督でしたし。彼が30歳で監督デビューした頃じゃないかな。他局では、(『華麗なる一族』の)福澤(克雄)さんや、今は亡き生野(慈朗)さん。映画の現場においても、『武士の一分』(2006年)に続いて今回また『TOKYOタクシー』でご一緒させていただいた山田洋次監督や、(『無限の住人』の)三池(崇史)さんももちろんそうですし。
――そうした方々から言われた言葉で、今も大切にしているものはありますか。
木村:言葉をいただいたときに「その答えって何だろう」と考えて、そこから自分なりの答えを出したけど、たぶん今後も考えていくだろうと思ったのは、山田監督からいただいた「心を脱いでください」ですね。
――「心を脱ぐ」とは?
木村:その時は前に進まなきゃいけないから、理解していないのに「はい」と言った自分がいたんですね。「心を脱ぐ」ということはどういうことなんだろう、多分こういうことなのかなとその時は思って本番をやらせていただいて、カットがかかって「いいでしょ」となったけど、正解だったのかどうかは分からない。でも、この視点は忘れちゃいけないかもなと思って、その後の自分のテーマの一つになっていますし、今回の「教場」でも探り続けています。
■「現場は“養殖場”じゃない」――「育成」ではない真剣勝負が楽しい
――これまで数々の作品の真ん中で輝きを放ってきた木村さんが、「教場」シリーズでは若手を引き立てる「引き算の演技」で「新境地」とも評価されています。ご自身のキャリアにおいて何らかの心境の変化などあったのでしょうか。
木村:全然ないです。本人的には引き算というより、掛け算なんですけどね(笑)。というのは冗談にしても、それぞれの作品がどうか、「誰」を演じるかということであって、お話とキャラクターによってお芝居は当然変わるものですから。それに、「僕は中心じゃなきゃ嫌だ」なんて言うこともないし、そういうのが一番嫌いなタイプ(笑)。「真ん中で輝く」と言ってくださいましたが、それはある種不正解なのかもしれないですよ?(笑)。
――「教場」卒業生の若手俳優さんを取材したとき、木村さんはご自身の撮影がない時も現場にできるだけ足を運んでいらっしゃった、その「座長」としてのあり方に学んだというお話を聞きました。座長として、若手を育てようという思いもあるのでしょうか。
木村:それも不正解です(笑)。そういうふうに思ってくれるのはうれしいし、ありがたいし、良いほうに作用してくれれば良いなとは思いますけど、現場は“養殖場”じゃないから。現場では生産性を高めるためにいろんなものが意図的に作られ、使用される中で、いかに“天然”を感じていただけるかが、結局はOKテイクになっていると思うんですよ。特に中江監督はそうだと思います。
――若手に対しても「育成」という向き合い方ではない、と。
木村:一対一のシーンであれ、ステージであれ、それが若手だろうとベテランだろうと、向き合う相手に対して、自分の持ちうる100かそれ以上で常にぶつかるしかないので。それが相手を呑み込むような向き合い方なのか、逆に相手が距離を詰めてくるのを一切意に介さず、目も合わせずかわすだけなのかは、作品や役柄、シーンによって変わりますし、そういうやり取りがとても楽しいんですね。
――共演者の方々もそうした木村さんの向き合い方に対し、「挑む」というモチベーションで来るのでしょうか。
木村:そうした真剣な思いはひしひしと伝わってきますね。それを感じられた時は、こちらも、より「いざ!」と気合が入りますし、感じられないときには、こちらから「今から行くよ」と合図を出さないといけないかもしれない。それは自分からなのか、演出部の役目なのか、監督の役目なのか、TPOによって変わってくるかもしれないですけど。でも結局、今一緒に作品を作っている人たちが全ての答えです。ドラマの現場は、養殖場じゃなく、そこで生きている人・感情という“天然のもの”を捕まえにいく場所だから。
(取材・文:田幸和歌子 写真:松林満美)
映画『教場 Reunion』は、Netflixにて配信中。映画『教場 Requiem』は、2月20日より公開。
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