Coffee & Cigarettes 14 | 加瀬亮
「タバコはよく吸っています。最近は吸わない人が増えましたけど、タバコは人とのコミュニケーションを円滑にしてくれるものだとも思うんです。例えば映画祭でもどこでも、大抵パーティー会場ではみんなかしこまってますけど、喫煙所へ行くと本音が出てくるというか。『あの映画、ひどかったね』とか(笑)。実際、タバコを一緒に吸ったことがきっかけで仲良くなった人は大勢います。撮影現場でも、タバコ組と仲良くなりやすいですね」
そういって目を細め、彼はタバコを燻らせた。加瀬亮。クリント・イーストウッドの『硫黄島からの手紙』や、マーティン・スコセッシの『沈黙-サイレンス-』、アッバス・キアロスタミの『ライク・サムワン・イン・ラブ』など、映画界の「巨匠」と呼ばれる監督作品にも積極的に出演している彼は、静かだが存在感たっぷりの演技が国内外で評価され続けている。作品以外での露出も少なく、プライベートや私生活はあまり明らかにされていない。そのため、今日の取材は一体どんな雰囲気になるのだろう……?と、少々緊張気味に現場に向かったのだが、果たしてそこに現れた加瀬は、周囲のスタッフに気を使いながらも終始リラックスした表情でこちらの質問に答えてくれる、物静かで穏やかな人物だった。