「実験刑事トトリ」完成試写会に登場した三上博史 フォトギャラリー
というのも、かつてはテレビドラマで大活躍していた彼。気づいたら、あまり観なくなっていた。なぜなのだろうか。もともとホイチョイ・プロダクションズ製作の映画「私をスキーに連れてって」(1987年)で人気となり、その後、フジテレビの「君の瞳をタイホする!」「君が嘘をついた」(ともに1988年)、「世界で一番君が好き!」(1990年)などに立て続けに出演。すっかりトレンディ俳優の筆頭になった。
だが、一つの転機となったのは「あなただけ見えない」(1992年)での三重人格役。なかでも、唐突に変な女装をして現れ、エキセントリックにキレる「あたし? 明美よ」というキャラは、パロディとしても使われるほど、強烈な印象だった。
2000年代に入ってからは、少しの映画と少しの舞台、少しの大河ドラマとスペシャルドラマのほか、WOWOWのドラマなどでしか観なくなっていたが、驚いたのは山下智久主演のドラマ「プロポーズ大作戦」(2007年)に妖精として登場したこと。もしかしてあまり見かけなくなった理由に、奇行などの報道があったんだっけ?と思って調べたが、そうではないらしい…。
トレンディ俳優→奇妙な役→見かけなくなったというのが、なんとなく世間のおぼろげな記憶なんじゃないかと思う。
だが、時を経て、2012年の三上博史は…第一印象として、ビックリするくらい若い! 変わっていない! シワのない薄い肌も、額に浮かび上がる血管も、トレンディの頃のまま。いや、「明美」の頃のままだ。
結局、あれだけトレンディ色をつけられていたにもかかわらず、時代からズレたわけでも、需要がなくなっていたわけでもなく、おそらく作り手側の事情か、もしくは本人の意向であまり出ていなかっただけのようだ。
そう思うと、トレンディとしてもてはやされた後、「明美」をやったのは、ある意味、ジョニー・デップ的ではあるかもしれないし、時代からズレなかったのも明美があったからこそだと思う。
トトリを観ながら改めて思ったのは、久しぶりに彼の転機となった明美を観たいということ。どこかで再放送してくれませんかね。(文:田幸和歌子)