空港の入国ロビーで目をつけた来日外国人に頼み込み、日本滞在の日々を同行取材するという型破りな内容で人気の深夜番組『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京系)が、4月15日からゴールデン枠の90分番組に昇格した。

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 昨年6月と10月のパイロット版放送、今年1月からの深夜枠レギュラーに続く最速のゴールデン枠レギュラー化。
同番組の仕掛け人、テレビ東京の村上徹夫プロデューサーは、「テレビ番組を作っていく中で、ガチガチに作り込んだ番組よりライブ感がある方が面白いとずっと思っていました。ちょうど中国人観光客の爆買いが話題になった頃、制作会社の方と特番に出来ないかという話になったのですが、都合良く買い物をしてくれる人は仕込めない。それなら、ガチンコで捕まえたらどうか? というのが発端です。その段階の企画書の表紙には、既に『YOUは何しに日本へ?』と書いてありましたが、タイトルも面白くて。あまりにもリスクが高い企画なので社内で通るか不安でしたが、とりあえず低予算だけど土曜日の昼の枠で実験的にやってみないかということになりました。この特番が結構好評で、異常なトントン拍子でここまで来たというわけです」と、誕生の裏話を語る。

 「僕の学生時代やテレビの世界に入ったころには、『元気が出るテレビ』『浅草橋ヤング洋品店』『進め!電波少年』などが面白いなと思っていました。こういう番組からは現場のライブ感や疾走感がたくさん感じられたので、自分も同じような空気の番組をぜひやりたいなと。最近のテレビ東京にも『田舎に泊まろう!』のような番組はあるのですが、そういう思いがあったから“空港と外国人”というキーワードが上手くハマったと思います。ですから、計算づくでスタートしたわけではないですね(笑)」。プロデューサーの意気込みにピッタリの企画は、順調に始動した。

 司会は人気のバナナマン。
パイロット版から担当しているのは日村のみ、レギュラー化のタイミングで設楽も加わった。「変なコンセプトの番組だから、ちょっと違和感があるMCが良いなということで日村さん(笑)。ツッコミを入れてほしいと思ったのですが、そのあんばいが日村さんなら上手いのではないかという理由です。普通ならまず設楽さんを考えるでしょうが、今回は逆。どうせやるなら、トンガリまくろうという感じでした」。2人の起用にも、こだわりがあったようだ。 「密着取材はたくさんやっているのですが、オンエアに耐えるレベルまで到達しているのはごく僅か。もちろん、取材の前にオンエアできるかどうか判らないということは、先方にお伝えしています。僕もボツになった取材まで全部見ていませんが、どうしたら番組が面白くなるかということはスタッフの間でいつも真剣に議論しています。だから、皆さんが想像しているよりもお金はかかっていると思いますよ」。 数多くインタビューした中で、同行取材の了解を得て、最終的にオンエアにたどり着くまでの確率は1/100とも言われているだけに、予想外の苦労にも頷ける。

 そんな苦しみを忘れさせてくれるのが、想定外の行動を見せてくれる来日外国人たちとの出会いだ。
「皆さん、愛すべき人たちだなと思います(笑)。日本を好きになってくれた外国の方がこんなにたくさんいらっしゃるのですが、日本の若者が持っていないような元気と無茶苦茶ぶりには、かなわないな、素敵だなと思いますね。やはり、若さと自由って素敵じゃないですか(笑)?」と、嬉しそう。

 「この番組は日本人が自信を持ち直すきっかけにもなると思います。僕らが思っているほど日本は悪くないし、日本文化も悪くないし、僕らも捨てたものじゃないぜと思うことができる。外側はお馬鹿な感じですが、愛があふれる番組です(笑)。それは日本に対する愛でもあるし、来日した外国人に対する愛でもあるし。臭いけれど、キーワードは愛だと思いますね(笑)」。文字通り“日本を取り戻す”ような内容も、多くの人たちから支持されている理由かもしれない。

 「ものすごいスピードでここまで出世できたことは、僕も想像していませんでした。ツイッターやネットにすごく熱狂的な方々がいらっしゃることもありますし、社内にも視聴率以上に面白いと確信してくれる上の人たちがいたり。いろいろな人たちが待ち望んでいたパッケージなのかもしれませんが、数字だけの勢いではないと思います。
強く愛してもらえる番組だという実感は持っていますが、ゴールデンではどれだけの皆さんから愛してもらえるのだろうかと凄くドキドキしています。乱暴な面もあるので、もしかしたら嫌われるかもしれないですが(笑)、とにかく誠実に作っていこうと思っています。数字をとるためにこうしようとか、小手先のことはあまり考えずにやってきた番組なので、この質感や空気感をいかに損なわないか、それが受け入れられるのか。そういう意味では、気持ちの中はスッキリしていますね」と、激戦区でも十分に勝算ありといった表情。 最近のテレビ東京の深夜ドラマやバラエティには面白い番組が多いが、「確かに、局内に斬新な企画を積極的に実現させようといった勢いや空気はあると思いますね。全てのテレビ局が似通ってきている中、自分たちは違う場所で勝負しないといけないことは皆が考えているでしょうし。他局と違う雰囲気の中で、会社全体が新しい尖ったパッケージを出していきたいのだろうなという空気は、ひしひしと感じています。良い意味での生き残り方というか勝ち方というか、この数年で何となくはっきりしてきたのではないでしょうか?」と、かつての覇者たちが苦戦する中、確かな手応えも感じているようだ。

 先日の記者会見では、「テレビ史に名前を残る番組になるだろう」と設楽が発言しているが、「現在のテレビの世界では新しいスタイルの番組ですが、お子様からお年寄りまで楽しめると思います。現場のディレクターたちは相当苦しんでいますが、一切手を抜かずにガチンコでやっていくので、そこを楽しんでいただければなと思います」と、笑顔でPRした。(取材・文・写真:平井景)
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