この夏の新ドラマで、“強い女”が復活した。江角マキコ主演『ショムニ2013』(フジテレビ系・水曜22時)は、初回平均視聴率18.3%、観月ありさ主演『斉藤さん2』(日本テレビ系・土曜21時)は、初回平均視聴率15.5%(ともにビデオリサーチ調べ・関東地区)と、好スタートを切った。
続編でも、他人を気にして言葉にできないようなことを声を大にして電波に乗せるこの2人の初回の名セリフをあげてみた。

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 江角の“強い女”の印象を決定づけた『ショムニ』は10年ぶりの復活。2003年放送の『ショムニ FOREVER』以来、消息不明だった坪井千夏が満帆商事に舞い戻った。棒高跳びで将来を嘱望され満帆商事に入社した詩織(本田翼)は、ケガで選手生命が断たれる。社内の陸上部も廃部となり絶望する詩織の前に、傍若無人な千夏が現れる。

 経営難にあえぐ社内では“庶務二課”が復活することに。詩織をはじめショムニに配属されたメンバーを、千夏は早速「女の価値はオトコの数」と自身の決まり文句でぶった切る。千夏が連れてきた後輩で経営企画室のみき(片瀬那奈)が放った、制服への難癖も「こいつは女の究極のファッション。ブランドに頼る凡人には着こなせないだろうけど」と、華麗に交わす。自分だったらどう返すだろうと思うと、千夏の態度には胸がすく思いを覚える人も多いはず。

 この人、敵に回したくないな…と思わず本音もこぼれてしまいそうだが、味方なら百人力だ。所属していた部署では棒高跳びの選手としては優遇されながらも、社内の仕事は回してもらえなかった詩織。
その上司に対して、共感にも戒めにもなるセリフがグサリ。

「上司の給料にはね、部下を育てる分も入ってんだ。あんたみたいな使えない上司、本当の給料泥棒っていうんだよ!」

 一方、千夏は詩織が競技で成績を残してきたことを評価する。

「大事なのはスタートラインに立つことだよ。あとは走るだけ。人のことなんて気にしない。前だけをみて走る。そうやって跳んだんだろ、4m21cm!」

 千夏と元ショムニメンバーのキャラクターを踏襲した新メンバーとの関係、さらにショムニと敵対する経営企画室や人事部と今後どんなバトルが繰り広げられるかが見どころとなりそう。 『斉藤さん2』は前シリーズから舞台を移してのスタート。舞台が変わっても斉藤さんは変わらず、子供たちの未来のために間違ったことを注意し、正していく。引っ越し先では早くも喧嘩っ早いと噂が立つ中、ショッピングモールで騒ぐ高校生の集団に早くも一喝入れるシーンも。毅然と立ち向かう斉藤さんには、その実直さに快感を覚えながら自らを省みるきっかけともなる一本だ。


 息子・潤一(谷端奏人)の転入したクラスでは“カーニバル”とあだ名を付けられたことが原因で学校に来ないブラジル人の子供がいると、緊急保護者会が開かれる。斉藤さんは、「あだ名は子供にとっての文化。表面的に何でも禁止にするっていうのはどうかと思う」と意見をぶつけるが、保護者たちには受け入れられない。あだ名をつけた生徒の母・摩耶(桐谷美玲)は息子を「よく叱りました」とはいうものの、斉藤さんは腑に落ちないでいる。

 摩耶の振る舞いにどことなく違和感を覚えた斉藤さんは、「周りのお母さんに好かれるのも大事かもしれないけど、それで自分の子供の姿が見えなくなったら意味ないと思わない?」と尋ねる。皆さんと仲良くするのは息子のため、と主張する摩耶にこう続ける。

 「私だって人に嫌われるのは怖いよ。好かれたいとも思ってる。でも間違ってると思ったら頑張って首を振りたい。分からなくなっちゃうから。分からなくなると肝心なものを見失いそうだから」

 斉藤さんはさらに、いつも不自然な笑顔を見せる摩耶にその理由を聞く。すると、彼女は「笑って何とかうまくやってきた」と、泣きながら本音を吐露。
周りの人たちをよく観察し、彼らが話すことにきちんと耳を傾けて、何が正義がを真剣に見つめる斉藤さんだからこそ、摩耶は自分の本心を明かすのだ。

 そして終盤では、クラスのいじめは勘違いだったことが明らかに。街のお祭りで“カーニバル”とあだ名をつけられた子供を中心にサンバカーニバルダンスを披露した子供たち。あだ名はいじめどころか、斉藤さんの言葉通り子供たちの文化を生んでいたのだ。

 至極まっとうな斉藤さんの言葉は、まっすぐに私たちの心に届き、私たちは素直に共感する。だが、そのまっすぐさを素直に出すことができない状況も多い。ドラマの中で彼女が発言するたびに、心の声を代弁してもらっているようでスッキリした気分になれる…というと斉藤さんには怒られそうな気もするが、読者の皆さんには分かっていただけるのではないだろうか。

 それぞれ第1話のラストでは、千夏は元ショムニのメンバーと現ショムニの詩織に対し「さ、飲みに行くよ!」といつも通りに声をかけ、斉藤さんは再会を果たした友人の真野と近況報告をしながら「お互い、それぞれの場所で踏ん張っていこう」と健闘を誓う。

 今後、2人にはどんな展開が待ち受けるのか。自分の言葉と信念を武器に社会を渡り歩いていく彼女たちから、この夏は心にたくさんのパワーをもらえそうだ。(文:林田真季)
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