夏クールドラマの話題を独占している『半沢直樹』(TBS系・日曜21時)。初回19.4%、第2話は21.8%の好視聴率を記録し、28日放送分・第3話は15分拡大スペシャルで放送される。
堺雅人演じる銀行員の主人公・半沢直樹が銀行内外の組織と戦う姿を描いた作品だが、何といっても半沢のどんな相手にもひるまず、丁々発止のやりとりを繰り広げる場面にスカッとする人が多いはず。そこでこれまで印象的なセリフを取り上げ、その人気の秘密を探ってみた。

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●「やられたらやり返す。倍返しだ

 西大阪スチールへの融資契約で5億の損失が発生、その全責任が半沢になすり付けられてしまう。半沢はその債権を回収するため奔走。西大阪スチールの元取引先である竹下(赤井英和)の元を訪ね、5億を取り戻すべく誓いを新たにする。理不尽なことが起きても、けして諦めず己の信じる道を行く。半沢が「私の流儀」だというこのセリフは、見ているこちらの心も奮い立たせてくれる。

●「私は必ず5億を回収する。二度と邪魔しないでいただきたい」

 債権回収のめどが立たないまま、自身の進退がかかる行内の聞き取り調査に臨むことに半沢。担当者たちが高圧的に詰め寄る中、「ここでしおらしくして5億が戻るならそうしますが、あいにくそんなことをしても時間の無駄だ。こんなくだらない茶番はさっさと終わらせてもらえませんか」と一蹴。
さらに本部への批判を言い放ち、シメにこの啖呵とくれば、担当者たちはぐうの音も出ない。スマートに論破していく半沢に魅了される名シーンだ。

●「追い風は得てしてすぐに向かい風に変わる」

 半沢は聞き取り調査で不遜な行動に出た自分のことを、常務の大和田(香川照之)が面白がり一目置いたことを知る。同期の渡真利(及川光博)は半沢の名誉復活の願ってもないチャンスだと喜ぶが、半沢はその状況を客観的に見つめる。ピンチがチャンスに変わるように、ちょっとしたきっかけで物事は不利な状況にも動くことを理解しているのだ。

●「確かにたかが銀行員にできるのは、金の流れを追うことぐらいだ。だから俺は、あんたの汚い金の流れを徹底的に調べ上げる」

 西大阪スチールの元社長・東田(宇梶剛士)の息のかかった板橋(岡田浩暉)が、半沢に近づく。しかし板橋の様子から何か裏があることに気づいた半沢は、東田にまつわる資料を渡し、板橋の素性を暴く。半沢や竹下の弱みに付け込み、東田と同じく私腹を肥やそうとする板橋に鉄槌を下す場面だ。銀行の融資課で“金貸し”を生業にする半沢の、自分自身の果たすべき仕事へのプライドとも取れるセリフにしびれる。

 一見、普段は知性あふれる立ち振る舞いを見せるも、時に思いもよらない決断でピンチを切り抜けていく半沢のヒーロー性とセリフの爽快感が人気の秘訣と言えるだろう。日常生活や普段の仕事で、半沢のような思い切った発言や行動ができない視聴者たちにとっては、『半沢直樹』はある種のストレス発散になっているかもしれない。


 重くなりがちな社会派ドラマなのに、悪者がとことん嫌な役というキャラクター設定の分かりやすさもエンターテイメント作品として秀逸だ。日曜の夜の憂鬱を吹き飛ばすにはうってつけのドラマ、視聴率もさらに上まわる可能性は十分にある。(文:林田真季)
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