1985年から1996年に放送された『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』ほか、多数バラエティ番組に出演し、不動の人気者となった「ゆき姐」こと兵藤ゆき。その後、子どもを連れて渡米し、その経験をエッセイなどでも綴っている。
今はNYと日本を行き来しながら活動を続ける兵藤に、『元気が出るテレビ』から現在までの心境を語ってもらった。

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 「高校生制服対抗ダンス甲子園」や「お嬢さまを探せ!」など、視聴者参加型のコーナーが人気で、的場浩司、X JAPAN、山本太郎、LL Brothers、岡田准一らもスターになるきっかけとなった『元気が出るテレビ』。若者を中心に高い視聴率を誇り、今や伝説の番組ともなっているが、その中心メンバーの一人が兵藤だ。

 「『元気が出るテレビ』はいわゆる見る側の人たちを主役にするってコンセプトだったんです。テリー伊藤さんが最初のディレクターだったんですが、彼が私を誘ってくださった。私は、深夜放送をずっとやっていたので、ハガキをくれたリスナーさんたちからの話を元に番組が展開していく、そんな深夜放送のようなテレビ番組を作りたいって」と、兵藤は振り返る。

 中でも、多くの人が印象に残っているのが「勇気を出して初めての告白」。兵藤が、人生初めての告白に緊張し、勇気を振り絞る純情な高校生たちを応援する姿は今でも覚えている読者も多かろう。今では、「この『初めての告白』も実は深夜放送のラジオからきているという。「私が『少しだけ片思い』っていうコーナーを名古屋でやってたんですよ。それで、ハガキを読んで告白したりするんだよって話をテリーさんにしたら、それをおお!って(笑)」取り上げられたと裏話を語ってくれた。

 現在、多くのバラエティ番組が連日放送されているが、それについて兵藤はどう感じているのか。
「ああこれ、『元気が出る』でもやらせてもらったなと懐かしい感じがするものもある」と笑顔で語る。当時と現在の番組の大きな違いは「(今の番組は)映像が加工されてたり、文字(テロップ)がバーッと出て来たり、プリクラを見ているような感じがします」と、“映像演出の違い”を挙げている。

 また、兵藤は「社会の根本的な部分はなかなか変わりにくく、変化していくテンポも遅いのでは…」と話す。それは、「例えば、体罰問題にしても、1947年に法律で体罰は禁止されたはずなのに、なかなかそれがなくならない」ことからも実感するという。

 さらに、「メディアがいっぱいあるんだけど、ネガティブな方向に流れやすい傾向が心配」とも。「インターネットを見ていると、すごく影響されますよね。ネガティブなものばかりに触れていると、ネガティブな発想に傾きやすい子になっちゃう。 ポジティブなことに影響された人は、やる気に溢れているという理論はできているのに…。だから、ネットにはポジティブな記事や意見をたーくさん載せてください(笑)」。

 兵藤といえば、当時から〝ポジティブ〟なイメージが強いが、今もなお健在。「ママも明るく楽しく過ごして、子どもに明るく楽しく接したら、双方幸せよね」と、ポジティブ推奨派なのだ。

 そもそも、兵藤がより一層ポジティブ思考になっていったのは、渡米しての子育てが強く影響している。
『元気が出るテレビ』終了後の1996年に結婚をすると、同年に長男を出産。翌年に7カ月になる息子を連れて、夫の留学に合わせて渡米したが、そこで人生は大きく変わる…。
 「昔の海外ドラマで『奥様は魔女』って知ってます? 大きな冷蔵庫のある家庭で、靴を履いたまま家に入るみたいな、そんな生活を実際に見てみたら、こんなに日本と違うのね、って」ことを実感したという。そして「私たちが民主主義って思ってたことや、自由って何だったの…」という強い疑問を感じることに。

 特に育児真っ最中だった兵藤にとっては、「親は上から目線ではなく、子どもを大人と同じ、1人の人格として育てていくっていうのを目の当たりにして…。そして、それでプラスの結果が出てることも知ったんです」と感銘を受けたことを明かす。

 アメリカで感じたこと、そして学んだことを「“アメリカにかぶれちゃって!”なんてことにならないように、なるべく正気の沙汰になりつつ、気を確かに持ちつつ、伝えていけたらなって、向こうで本当に思った」と、執筆や講演会などの活動も精力的に行っている。

 近著『これで英語がちょっとできるようになりました。』では、英語習得のためのノウハウも伝える。ズバリ、英語を覚えるための秘訣を聞くと、「あの本にも書いたんですよ。だから読んでください」と笑う。

「私の場合、『現地でやってるんだからいいよね』って言われそうだから、本の中では日本にいても、“こうすれば多分いけると思うよ!”ってことを3つにまとめてみました!」と話す。
英語習得を目指す人たちにとってはもちろんのこと、育児に悩む親たちにも参考になる本となっている。(取材・文・写真:嶋田真己)

 兵藤ゆきのコミックエッセイ『これで英語がちょっとできるようになりました。』はアスコム発刊で絶賛発売中。
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