【関連】『宇宙兄弟』平田広明&KENN インタビューフォトギャラリー
2008年に週刊漫画雑誌「モーニング」(講談社)で連載開始された『宇宙兄弟』。2012年には、テレビアニメ化および実写映画化も実現。そして今夏、原作者・小山宙哉のオリジナル脚本によって、シリーズ初のアニメーション映画が完成した。
兄・六太の声を演じる平田は「プロデューサをはじめみんなが、ずっと映画化したいと言っていたんです。でも原作が素晴らしすぎるので、映画化に耐えうる脚本を作るのがとても難しかったそうです」と振り返る。それだけに完成した脚本については、「満を持して出来上がった脚本といった感じでしたね」とニッコリ。「劇場版だからと言って、特別な仕掛けがある訳でなく派手な展開もない。家族、兄弟、仲間について、奇をてらうことなく真っ直ぐに向き合っていた。『なるほど』と思うような脚本を書き上げて下さいました」。
弟・日々人の声を演じるKENNも「確かに、大スペクタクルではないですね。『宇宙兄弟』の登場人物たちが、あたかも実際にいるかのように感じられるように描かれていて」とうなずく。今回描かれるのは、いわば“第0話”の物語。知られざるエピソードにも、六太らしさ・日々人らしさが詰まり、胸を熱くすること必至だが、KENNは「僕より先に月面を踏むはずだった人が、今この場にいないのは残念です」というセリフに、感慨深いものがあったそう。
「映画では終盤に出てくるセリフですが、テレビアニメの日々人は、このシーンから始まったと思います。もう2年くらい前に言ったものですが、僕自身『宇宙兄弟』と一緒に成長させていただき、そのセリフをまた言えたというのは、感慨深かったですね。一見、ぶっきらぼうで楽天的に見える日々人ですが、実はその裏にはいろいろなことがあったんだということが、今回明らかになります」。 テレビシリーズのスタートから2年以上、兄弟役を演じることとなった彼ら。お互いの姿に、「六太、日々人を感じることはあるか?」と聞いてみると、「現場によっては、演じる役に近づけて振る舞うこともありますよね」とKENN。すると、「あまり意識はしていないけれど、その役柄に寄っていくというのはあるかもしれないね」と平田。
続けて、KENNは「平田さんは、舞台でもそうだし、マイク前に立っても、瞬時にスイッチを切り替えることができる。ストイックなところは、六太と似ていると思いますね。
平田も「KENNはいい加減なストイックなんだ!」と笑い、「でも努力家だし、考え出すと悩むタイプだしね。そういう部分は、誰もが持っている一面だと思う。六太や日々人もそうだし」と作品の普遍性に言及。KENNも「そうそう。やっぱり、『宇宙兄弟』の登場人物というのは、みんなリアリティがあって、それがすごく自然に描かれているんですよね。だからこそ、没入できるんだと思う」と話す。
本作が観客を魅了してやまないのは、そのリアルさと、いつだって“勇気を持つこと”の大切さを教えてくれるからこそ。最後に2人にとって、「勇気を振り絞った瞬間」について聞いてみた。平田は「高さ230mのバンジーを飛んだことがあるよ!」と告白。
平田は、バンジーの思い出をこう語る。「一番、勇気を振り絞ったのは、『何かあっても自己責任です』という書面にサインをする時(笑)。できるかどうかわからなかったけれど、『もう、飛ぶだけだ!』と思い切って。飛んでみるとやっぱりすごく気持ちよくて。その扉を開けてみないとわからない、味わえないことってあると思うんです」。
KENNは「潜ってみた時、最初は息を吐くことを忘れてしまって、吸うばかりになってしまって! 怖くて一度、海から上がってしまったんです」と述懐。「『僕、向いてないのかな』とも思ったんですが、もう1回トライしてみようと潜ってみたら、まあ、気持ち良くて! 勇気を出して良かったなと思いました」。宇宙の広がりと、未来への可能性を無限に感じさせてくれる本作同様、平田広明とKENNのチャレンジ精神も無限大のようだ。(取材・文・写真:成田おり枝)