デビュー作『バッテリー』で見事な投球フォームを披露して以降、『ラブファイト』でボクシング、『ダイブ!!』で水泳飛び込み、スポーツが題材の映画に数多く出演する林遣都。なかでも印象的なのが、駅伝をテーマにした『風が強く吹いている』のトレーニング中に大学陸上部からスカウトされたという逸話を持つほど堂に入った“走る”ではないだろうか。
そして、そして、10月3日からテレビ東京系列で放送される、ドラマ24『玉川区役所 OF THE DEAD』でも素晴らしい走りを披露しているのだ。なぜ林遣都に“走る”役が集まるのだろうか。

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 最新作『玉川区役所~』で林が演じるのは、ゾンビが日常化した20××年、ゾンビウィルスを保有している住民または発症してゾンビと化した住民の管理と捕獲行う“玉川区役所特別福祉課”の活動係、赤羽晋助だ。人並み外れて足が速いという理由だけで同課に配属された赤羽は、とにかく走る。猛烈に走る。

 「主人公の赤羽晋助は“ダメな奴”に片足を突っ込んでいるくらいの冴えない男ですが、彼にとって“走る”ことは心のバランスを保つ精神安定剤的な役割だったりして、意外と奥の深い人間臭いキャラクターです。頼りなく見えるが思慮深い。逃げているだけに見えるが心は闘っている。そんなふり幅と奥行きのあるキャラクターを、紛れもない芝居力で絶えず視聴者の共感を得てきた林君に託したいと思いました」と、林遣都の起用理由を明かしてくれたのが、同作のプロデューサー、浅野太氏だ。

 なんと、起用に“走れる”は関係なかったのである。とはいえ、走らなくていいわけではない。

 「林君はもともと運動神経が良いと思うのですが、撮影の1ヵ月前から走り込みを始め、走るフォームを作り上げてくれたそうです。
クランクインのファーストカットが全力疾走でしたから(笑)。撮影初日は、早朝から昼過ぎまで走りっぱなしでした。この日はセリフを言いながら全力でトータル3kmくらい走ったんじゃないでしょうか。お疲れ様でした」。 これほどまでに走れる俳優、ほかにはなかなかいない。浅野氏もこう話す。

 「林君が持っている真っ直ぐでひたむきなイメージは、スポーツの世界観にはまりやすいと思います。どんな役を演じても必ず強い信念に満ちていて、飾ることはせず、その役を愚直に演じ切ることにすべてを捧げている。役を楽しみながらストイックに自分自身を追い込む姿が、作品を通して現れている。また、マラソン、駅伝、運動会など、人が走る姿は、見る人を引き付けます。走るという行為が感動を呼ぶとすれば、林君のように魅力的に走ることができる俳優は、その点でアドバンテージがあるのではないでしょうか」。

 そして、浅野氏はこうも付け加える。


 「林君の魅力は観客との距離感です。彼が演じる人物は、いつも身近に感じることができて、気持ちが乗りやすい。説得力があります。さらに、小手先で飾らないから、壁を作らずに見ている人にストレートに刺さるし、役にとことん向き合う姿勢が、確かな演技力にも裏打ちされて、作品の中に“生身の人間”を生み出す事ができる。素晴らしい俳優だと思います」。

 キャラクターに血肉の通った“生身の人間”を生み出せることに加え、“走り”という人を引き付ける武器も持つ、ある意味、最強の俳優・林遣都。そんな林の最新作『玉川区役所 OF THE DEAD』、演技と同様に、魅力のひとつである“走りっぷり”にも注目だ。
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