
川崎市川崎区の岡崎彩咲陽(あさひ)さん(20)失踪に絡み、同区在住のストーカー男Aの自宅から性別不明の白骨遺体が見つかった事件では、後手に回った神奈川県警の対応が注目を集めている。♯3で報じた、彩咲陽さんと同居していた祖母の姉が語るストーカー男や県警との「暗闘」の一部始終をお届けする。
Aのお母さんに警察に通報された
彩咲陽さんは昨年12月9日から失踪当日の同20日までの短期間に、川崎臨港署に9回にわたって警察に電話をかけている。これは後に彩咲陽さんの父親が携帯電話の通話記録を調べて判明したことだ。
さらに同22日に自宅1階の窓ガラスが破られているのに家族が気づく。だが、彩咲陽さんがAに拉致された可能性が高いと訴えるも、神奈川県警川崎臨港署の刑事は冷淡だったという。
「写真を見てわかる通り、ガラスはきれいにバーナーで焼き切られて破片が室内に散らばっていた。それなのに現場に来た女性の刑事さんは『これは部屋の中からガラス割ってますね』とか言って写真も撮らないし、もちろん指紋の採取もしなかった。
普通は外から衝撃を加えて割れたガラスは部屋の中に飛散すると思うんだけど、違いますかね。窓ガラスの下にはブロックが2つ重ねてあって、足跡も確認できたから『ここに登ってガラス割ったに違いないから調べてくれ』とお願いしたのに、『事件性ありませんね』と何もせず帰っていったんです。壁には手形までついていたのにですよ」
はたして、シロウトにはわからないプロの刑事の見方があるのだろうか。その判断に口を挟むつもりはないが、業を煮やして独自の捜索に乗り出した家族の前に立ちはだかったのは、またしても捜査のプロだった。
「1月6日になって、あの子の弟とお友達がAのウチに乗り込んでピンポンをしつこく鳴らしたんですよ。弟がピンポン鳴らしてる間に、アサヒのお友達がAの部屋を凝視していたら、電気が点いたり消えたりパチパチしてたんです。
もしかしてアサヒがSOS出してるんじゃないかと思ったらしいんだけど、逆にAのお母さんに警察に通報されて。
「アサヒの携帯から『疲れただけだから』ってLINEが入ってきた」
彩咲陽さんの失踪とともに、しつこいほど周辺をうろついていたAも姿を見せなくなったが、母親と暮らす自宅を根城に偽装工作に腐心していた形跡があるという。
「そもそもアサヒがいなくなってからすぐにAの携帯にもじゃんじゃん電話したけど全く反応しなかったんで、アサヒの携帯に『このまま連絡取れないと警察に捜索願出すよ』ってわざとLINEしたんですよ。
ぜったいAはアサヒの携帯を取り上げていて、それを見ると思ったから。案の定、12月22日にAからこっちに電話がかかってきて『アサヒから僕に電話がかかってきて、ウチに居場所がないって言ってました』とか言うんですよ。
そしてすぐに、アサヒの携帯から『疲れただけだから』ってLINEが入ってきた。この経緯は、翌日に来た女性刑事にもちゃんと伝えましたが、これもまったく相手にされなかった」
〈慎重な姿勢〉を貫く県警に対し、家族は執念で「独自捜査」を続け、ついにAと母親の「逃亡計画」の証拠をつかんだ。それが写真にあるメッセージのやり取りだ。
「アサヒのお父さんは探偵に頼んだり、自分でAの自宅周辺を張り込んだりしていて、3月ごろにAを見つけてスマホを取り上げたんですよ。そこにAと(彼の)母親とのメッセージのやり取りがあったんで、それを保存したのがこれです。
アメリカに逃亡するとかなんとか書いてあるでしょう。アサヒの父親はこれも警察に持っていって『アメリカに逃げると言っている。逃さないでください』と必死に食い下がったんですよ」
しかし、またしても県警は〈慎重に〉これをスルー。
「Aに持って来させたものの、また盗まれてなくなったアサヒの自転車の盗難届をアサヒの祖母が出してたんですよ。その後、4月10日ぐらいにAの家の近くで見つかって、お父さんが呼ばれて。自転車のカゴの中にアサヒが失踪した直前に使ってた財布とその中に自転車の鍵が入ってた。
お父さんがさすがにこれはおかしいから、Aの指紋があるかどうか採取してくれと(警察に)頼んだんです。それで『指紋は出た』ときいています。この日を境にAとは連絡が取れなくなりました。すでに出国しているという情報もあります」
4月30日、ようやく県警はストーカー規制法違反の疑いで家宅捜索に入り、ボストンバッグに入った遺体を床下収納から発見した。
はたして「A」は本当にアメリカに逃亡したのか、そしてAの自宅から見つかった遺体は誰なのか…。〈慎重な捜査〉で定評のある神奈川県警は遺体の身元もなかなか発表しない。捜査の底力が、問われている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班