人気ヤンキー映画シリーズ『ガチバン』から生まれた新たなダークヒーロー、安藤忠臣。闇金の世界に身を投じていく武骨な元ヤクザを注目俳優・山田裕貴が見事に演じ切っている。
金、暴力、欲望を鋭くえぐる最新主演作『闇金ドッグス』。憧れの高岡奏輔と火花を散らしながら、安藤役に全てを注ぎ込んだ山田に、本作に懸けた意気込みを聞いてみた。

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 映画『闇金ドッグス』は、喰うか、喰われるかの闇金業界で荒稼ぎする者たちと、人生を転落していく債務者たちの壮絶な日々を描く衝撃作。闇金で起死回生を図ろうとする安藤(山田)に、債券回収のテクニックを伝授する闇金業者・小中高志役を『ROUTE42』以来3年ぶりの映画出演となる高岡が扮している。
 
 映画『ライヴ』『ホットロード』『ストロボ・エッジ』、さらには現在放送中のTVドラマ『ホテルコンシェルジェ』(TBS系)と、今最も勢いのある山田だが、とくに安藤役は俳優としての幅を大きく広げてくれたという。「監督から『悪が似合うね』と言われたときはうれしかったですね。明るい役が多かったので、もっと悪の部分を出していきたい」と意気込む。
 
 思い入れも人一倍だ。「安藤はヤクザだけれど、どんな逆境にも負けない強さ、まっすぐな男らしさを持っている。ところが劇中、自分の手を汚さず、人を操り、人を殺す、冷酷非情な一面を見せる。『これでいいのか?』と正直、悩みましたが、もし、この映画が続くとしたら、安藤はどこまで悪として振り切るのか、人としての道を残すのか、今後の展開が楽しみ。僕としては人間性を残して生きてほしいと願いますが」と思いを馳せる。
 憧れの高岡との共演も“肌”で感じるものがあったという。「初日の撮影は武者震いするくらい緊張しましたね。高岡さんは“ぜんぜんそんな風には見えなかったよ”と気遣ってくださいましたが」と恐縮気味。「でも、そのあとは伸び伸びできました。役柄そのままというか、高岡さんの胸を借りて、僕が自由に演じて発したことを、自由に返してくれる。頼れる兄貴って感じでしたね。でも、セリフを噛んだ時に“ごめーん”って抱きついてくる柔らかさもあって、“やばい、今、高岡さんに抱きしめられている”と思ってドキドキしたことも」と意外な裏話を語ってくれた。

 甘いマスクと一本気な男らしさの、なんとも不思議な魅力のハーモニー。山田を見ていると、いろんな役を観てみたいという衝動に駆られるが、本人の志向もそこにあるようだ。「僕の目標はカメレオン俳優なんです。“役を生きる”というか、僕じゃなくて“役が良かったね”といわれるよう演技を極めたい。 “あれ?出てたっけ?”は、僕にとって褒め言葉。
5年後に気付いてくれれば本望」と目を輝かせる。

 俳優として演じてみたい役が山ほどあるという山田。正確には、演じたくない役など存在しないとも言えるのだが?「『シャーロック・ホームズ』や『レオン』のブチ切れ麻薬捜査官、三浦大輔監督の『ボーイズ・オン・ザ・ラン』などなど、もう切りがないくらい。でも、ホラーはちょっと苦手かな。ただ、役がきたら精一杯やりますよ!」と、最後にちょっぴり可愛い一面をのぞかせていた。(取材・文・写真:坂田正樹)

 映画『闇金ドッグス』は8月1日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
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