“パンチラ”描写を惜しげもなく繰り出し、ある意味、伝説となった深夜ドラマが、園子温監督の手により『映画 みんな!エスパーだよ!』としてお目見えする。童貞エスパーの高校生・鴨川嘉郎を主人公にしたエッチでおバカな同作に、映画版から嘉郎の幼なじみ美由紀役でモデルの池田エライザが登場。
本格的映画初参戦で、とんでもない世界に飛び込んだ彼女の心境とは?

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 オーディションで美由紀に選ばれたときは、嬉しさはもちろんのこと、「マジか!!」と驚いたと笑うが、おそらく決まるなら美由紀役だろうと思っていたという。キャラクター的にヤンキー高校生とされている美由紀。だが、本編を観れば伝わるが、彼女はとてつもなくまっすぐな少女だ。「そうなんです」とエライザも頷く。「わたし自身、どうしようもなく正直なので、美由紀と近い部分はありますね」と分析し、とにかく「わたしは(役者としての)場数を踏んでいないので、美由紀であること、そこから生まれる自然な気持ちに専念することに努めました」と語る。

 その中で本作にとって非常に重要なシーンが加わることになる。もともと差し込み(基の台本にはなかった新たなシーン)が多い園監督だが、本作ではそれが特に多かった。嘉郎が“運命の人”を追い求める、本編に繰り返し登場する、テーマといってもいいある一連のシーンも、実は新たに加わったシーンだった。

 「『本当はよっちゃんのことが好きなんでしょ』とからかわれて、『そんなことないわ!』って言い返すシーンがあるんですが、そこで、わたしの芝居に若干の間があったんです。そしたら監督が『なぜいま、ちょっと寂しそうな顔をしたの?』と。美由紀の気持ちを説明したら、恋の話が膨らんでいって、次の日には、そこから繋がるようなあのシーンが出来ていたんです」。なんともビックリな話だが、この恋の物語が、本作を繋ぐ重要なファクターになった。
 ちなみに嘉郎役の染谷の印象を訊ねると、「バケモノですね」との答えが。「よっこいしょ~って声が後ろから聞こえてきて、3秒後くらいに振り返ると、本気で寝ているようなところもあるんです。でもそうかと思うと、作り手の人たちと一番話していたり、誰よりも現場に早く来ている。本当に映画が好きなんだなというのが伝わってきましたし、ヨーイスタートの声がかかると、一気に人が変わるんです。わたしはポンと切り替えるということができないので、バケモノだと感じたのと同時に、染谷さんが嘉郎になることで、空気ができるので、とてもやりやすかったです。感謝しています。本人には恥ずかしくて言えないですけど(笑)」。

 休みの日は読書をして過ごすことが多いという彼女。好きな本を聞くと、ニコライ・ゴーゴリの『外套』、芥川龍之介の『芋粥』、ジョルジュ・サンドの『愛の妖精』、アゴタ・クリストフの『悪童日記』、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』と次々にタイトルが口をついて出た。浅はかなまま「女優をやりたい!」と宣言はしたくないというエライザだが、本作の現場で映画作りに「恋しちゃった」とも。休日の読書も、彼女の感性をますます磨いてくれそうだ。(取材・文・写真:望月ふみ)

 『映画 みんな!エスパーだよ!』は9月4日より全国公開。
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