「オレたちもう、終わっちゃったのかな」「バカやろう、まだ始まっちゃいねえよ」。名セリフを生んだ北野武監督による青春映画の金字塔『キッズ・リターン』。
本作で鮮烈な印象を残した俳優、金子賢と安藤政信が、今それぞれの道で注目を集めている。彼らの辿った道のりを振り返ってみたい。

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 青春期のもどかしさや切なさを映し出し、今もなおファンを増やし続けている『キッズ・リターン』。本作を傑作たらしめた大きな要因は、金子と安藤のみずみずしい存在感に他ならないだろう。

 ヤクザの世界に足を踏み入れるマサルを演じたのが金子で、弟分のシンジに嫉妬しつつ、不器用な愛情を傾けるマサルを豪快に演じた。その後も『ごくせん』など数々のドラマで役者業にいそしむ中、2004年には格闘家へと転向。総合格闘技イベントに参戦した。2年ほどで格闘家生活にピリオドを打ち、俳優業を再開させた彼。

 今、世間を大いに驚かせているのが、彼のストイックな体づくりだ。2014年には筋肉美を競う「ベストボディ・ジャパン」コンテスト東京大会で見事に優勝。今年は自らボディコンテストを主宰するなど、体づくりの素晴らしさを提唱している。インスタグラムやブログでもその肉体を拝むことができるが、「どえらいかっこいい」「アニキ、まじ憧れっす」と女性だけでなく男性からも支持を集めている様子。
ムキムキの肉体美を披露しつつ、バラエティなどで見せる笑顔はなんだかかわいらしく、そのギャップも彼の大きな魅力となっているようだ。 一方、ボクサーとしての才能を発揮するシンジに扮したのが安藤だ。約5000人のオーディションを勝ち抜き、本作で役者デビュー。ナイーブな佇まいで観客を魅了した。ドラマ『聖者の行進』での演技も印象深く、映画『バトル・ロワイアル』では狂気に満ちた生徒役をゾクゾクするような迫力で演じきった。

 2000年頃から、映画中心の作品選びにシフト。李相日監督『69 sixty nine』、三池祟史監督『46億年の恋』など個性派監督のもとでキャリアを重ね、チェン・カイコー監督『花の生涯~梅蘭芳~』ウェイ・ダーション監督の『セデック・バレ』に出演するなどアジアにもフィールドを広げた。最近では、『GONIN サーガ』の会見で久々に公の場に登場。近年は出演作品自体も少ないためか、「久しぶりに見た安藤政信がかっこよすぎた!」と変わらぬイケメンぶりがネット上でも話題となった。

 俳優引退を表明し、今は車椅子生活を送っている根津甚八が本作限りの復活を果たしている『GONIN サーガ』。会見当日、安藤は「俺は仕事があまり好きじゃなかったり、働かなかったりするけど、そういうこと言っているとひっぱたかれると思った」と会場を笑わせながら、「皆さんと芝居ができて、ただただ幸せです」とコメント。根津の渾身の演技から改めて俳優業への意欲を燃やしたようで、安藤のますますの活躍が楽しみでならない。


 うれしいのが、二人ともやんちゃな雰囲気をどこか持ち続けていることだ。続編『キッズ・リターン 再会の時』では残念ながら金子と安藤の続投は叶わず、彼らの共演を見ることはできなかった。またいつか彼らの道が交差し、やんちゃな笑顔を見せ合う日を心待ちにしたい。(文:成田おり枝)
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