1960年に刊行され、同年に映画版も公開された松本清張によるミステリーの名作『黒い樹海』が、北川景子主演で6度目の映像化を迎える。現代版へと脚色された今作で、ヒロイン・祥子が出会う怪しい人物のひとりとして登場する沢村一樹を直撃。
作品についてのみならず、40代後半となった自らの変化についても沢村節で語った。

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 松本清張作品で初ヒロインを務める北川。たったひとりの身内である姉(小池栄子)を事故で亡くしながら、その死に疑問を覚え、姉の同僚(向井理)と真相を探るなかで、沢村演じる小児科医の西脇と出会う。

 「景子ちゃんとは初共演でしたが、今回はみなさんのイメージの中にある景子ちゃんとは雰囲気が違うと思いますよ。松本清張作品への主演ということで、何か覚悟みたいなものを感じましたね」と振り返る。撮影については、「長野でのロケをはじめとして、とにかく寒い撮影が多かったこともありますが、和気あいあいというより緊張感のある現場だったと思います。しかし長野でのロケはよかった。雄大でした」と過酷な状況ながらも白銀の世界を楽しんだようだ。

 沢村が医者を演じるというと、人気シリーズ『DOCTORS~最強の名医~』が浮かぶが、今回はまったく違う役どころだ。「夢や野望を抱えながら一生懸命勉強して、仕事をしてきた人物だと思うんです。周りからは順風満帆に階段を上がっているように見える。でも、西脇本人にしてみたら、実際にたどり着いた場所は理想とは違っていたんじゃないかな。
葛藤を抱えた人物だと思いますね」。その上で、サスペンス暦が長い沢村ならではの取り組み方も明かした。

 「もちろんキャラクターの気持ちに嘘がないように演じていますが、ミステリーだということも意識しています。たとえば、誰かを待つシーンで、期待よりも不安を覚えていたほうが、はたから見れば何かを企んでいるような顔に映ったりする。そうした可能性を持たせる芝居を選択するようにはしていますよ。今回の作品でもぜひいろいろ推理しながら見てもらいたいですね。松本清張作品は人間が持っている本質的な部分を描いているので、最後には心に沁みるものも感じてもらえると思います」。 現在、魅力的な50代の役者は多いが、沢村も40代後半となり、50代が見えてきた。キャリアを重ね人生経験も積んだいま、どのような変化を感じているのだろう。「自分の中でのリアリティが増えましたね。たとえば、このキャラクターはこんな行動しないだろうとか、以前は思っていたかもしれないことも、いや、するかもなと思えるようになった。だって、実際にいろんな人がいてビックリするような行動をすることはあるからね」。
さらに身体の変化も。

 「目はいいんですけど、近くが見えなくなってきたんですよ(笑)。でも、これも便利だなと思って。たとえば、女性と近くで話していて、以前は肌感までバッチリ見えていたのが、今はその人全体の雰囲気と話すことができる。視力以外の部分が研ぎ澄まされたりもしてね。見えなくなってきたと同時に、そういう利点も感じますね(笑)」と、らしい解釈をして笑みを見せた。

 「まだまだ何かを捨てるような歳ではないけれど、アンチエイジングするくらいなら、ゆっくり上手に枯れていきたい。いろんなことを諦めるんじゃなくて受け入れていけば、いい歳のとり方ができるのかなと思っています」。(取材・文・写真:望月ふみ)

 松本清張二夜連続ドラマスペシャル第二夜『黒い樹海』は、テレビ朝日系にて3月13日(日)21時より放送。

スタイリスト:西ゆり子・市原みちよ(C.コーポレーション)
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