おそ松さんブームもあいまって、ここのところ“腐女子”界隈のネタをよく見かけるようになった。誤解を恐れずにいえば、それまでにも腐女子たちはいたし、いわゆる“男性同士の同性愛”ないし、その組み合わせである“カップリング”をひっそりと楽しんでいた方々はいたわけである。
しかし、各所のまとめなどで目立つ部分が取り上げられるものの、その実態は想像以上に奥深い。

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 筆者がそう主張する理由は、自分の嫁さん(ここでいう“嫁”というのは、実際に婚姻関係にあるという意味だ)がかれこれ20年来の腐女子だからである。じつは、腐女子にも年齢ごとのクラス分けがあり、実年齢はさておきその基準からすれば“貴腐人”にあたる。付き合い始めたのはかれこれ3年ほど前。ちょうどその頃、初めて嫁さんの家に足を運んだときを振り返る彼女は当初「腐女子であることを隠していた」とあとになって明かしてくれた。

 それから約1年半後、結婚と共に一緒に暮らすようになった。生活の場も同じ、家計も同じになった今、嫁さんのまわりにはいまだ“BL(ボーイズラブ)”が溢れている。定期的に鳴るインターホンはその一例で、筆者の自宅には中1日、中2日の感覚でAmazonから荷物が届く。嫁さん宛の箱を受け渡し、開けてみると毎回4~5冊ほどのBLマンガが贈られてくる。

 結婚前には6畳のワンルームで暮らしていた嫁さんだが、記憶の限り、収納スペースのおおかた3分の1程度はBLマンガで埋め尽くされていた。正確な数も把握していなかったが、おそらく300冊ほどは蔵書があったのではないだろうか。今でもそれは変わらずというか、むしろ、先のエピソードのとおり日が経つにつれて最新のBLマンガが“積ん読”状態で増えていくばかりだ。
おかげで、筆者の仕事場が日に日に圧縮されていくという現実もある。 しかし、なぜ嫁さんはBLに恋焦がれるのだろう。尋ねてみると抽象的ながら「生きがいでありロマンだから」と答えが返ってきた。身近にいると分かるのだが、腐女子の持つ想像力というのはこちらの想像をはるかに超えてくる。例えば、居酒屋で一緒に飲んでいると、目の前に置かれた割り箸と取り皿で「なぜカップリングが成り立つのか」という話を肴に、その日のテーブルに設けられた“2時間”という制限時間が終わりを迎える。

 2次元ばかりが話題にされがちだが、実際、腐女子はBLの世界を常に生きているというのが筆者の感じていることだ。それは、職場であっても街中であっても変わらず、男性同士、もしくは何かのモノとモノの間に“ときめき”が働けば、瞬時にカップリングが成り立つという現実がある。ただそれは単純に“妄想”とひとことで片づけられるものではなく、内にひそむのはあくなき“探究心”以外の何ものでもない。

 最後に余談ながら、この時期、筆者の家庭で議論になるのは「家計からいくらコミケに出費できるか」という問題である。正直、頭を悩ませる部分ではあるが、できる限り善処したいところだ。(文:カネコシュウヘイ)
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